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私が選ぶ9人の指揮者による「ベートーヴェン交響曲全集」(1)第1番ハ長調作品21

 

指揮者クーベリックは何と9つの異なるオーケストラを指揮して、ベートーヴェンの交響曲全曲を録音しましたが(東さん、おそらく、その全集をお持ちと思いますので、何かの機会に論評をお願いいたします。)、今回の企画は、9人の異なる指揮者でベスト盤全集を作ってみようという試みです。

つまり一度、ベスト1に選んだ指揮者は、以降の曲ではベスト1に選ぶことが出来ないという「制約」を敢えて付けて見ました。(次点には何回でも選出可)

今回は第1回、交響曲第1番ハ長調作品21です。

◎曲目についての若干のコメント

割と最近になって知ったことですが、作曲家として自分自身で作品番号を付けたのは、ベートーヴェンが最初だったそうです。つまり彼は初めから自分の曲を後世に残すことを意識していた、あるいは、自分の作品が、必ずや後世の人々から愛聴されることを確信していたのでしょう。

その作品番号から分かることですが、この最初の交響曲を世に問う前にピアノソナタは全32曲中の10曲(あの有名な第8番悲愴ソナタを含む)、弦楽四重奏も全16曲中の6曲を既に発表し、世間の好評を得ています。つまり、ブラームスほどではないにしても(彼は交響曲第1番で、着想から完成・公表まで20年以上を費やした)、ベートーヴェンも交響曲というジャンルに関しては、かなり慎重に準備し、満を持して公表したと言えると思います。

その第1交響曲、とてもわかりやすく、かつ、ムダの無い筋骨型の音楽構成、ハ長調という明るい調性、演奏時間も20数分と彼の交響曲の中では第8番と並んで短いものですので、正にクラシック入門者向けの曲ですが、長年クラシック音楽に慣れ親しんで来た人が聴き直しても、新鮮味が存分に感じられるのは、さすがにベートーヴェンならではと思います。また第3楽章、楽譜には「メヌエット」と表示されていますが、実体はテンポの速い「スケルツオ」で、音楽界の革命児であるベートーヴェンの面目躍如というべきでしょう。

◎私が選ぶ第1交響曲のベスト1

「トスカニーニ指揮 NBC交響楽団」

第1番で早くも超エース級を推薦して、正にもったいないのですが・・

このCD、晩年の彼の録音の中でも、特に録音が優秀で倍音も良く捉えられていて、感覚的にも充分に楽しめます。演奏は勿論、曲との相性が抜群に良く(花崎分類の1)、ベートーヴェンの意図したことを、最も自然な流れで余す所なく表現していることに素直に感動してしまいます。

特に第1楽章の冒頭、序奏の管楽器の和音を聴いただけで、いかに、トスカニーニが、この第1交響曲を気に入っていたか、ストレートに伝わって来ます。

トスカニーニは、この一番を1939年に同じNBC交響楽団で、また、もっと若かりし頃、確か1930年頃に英国BBC交響楽団を振った録音も聴いたことがあり、演奏そのものは、個人的にはBBC盤が、テンポの変化も激しく、曲のドラマティックな面が強調されていて面白いと思うのですが、録音等も総合的に鑑み、晩年のNBC盤を選んでみました。

◎次点の名盤を1点、選出してみました。

ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

この演奏をベスト1にしても良いと確信しており、正直、随分悩みました。この演奏も典型的な相性分類の1番で、晩年のワルターとは到底思えないほど、若々しく、また、みずみずしい感性に満ちあふれ、テンポの細かい動きも大変多いのですが、そのテンポの変化も不自然さは一切無く、自然な躍動感に一役買っている点が、特に驚異的でもあります。

また、演奏の本質からは離れ、枝葉的な観点かもしれませんが、あれほどソナタ形式の呈示部の反復が嫌いで(当のワルター自身、呈示部を反復して曲の冒頭に戻るのは、死ぬほど嫌で耐えられないと複数回、言明していたそうです。)、あの運命交響曲の第1楽章ですら反復しないワルターが、何とこの演奏の第4楽章では反復しています。(旧盤であるニューヨークフィルとの演奏でも同様)

トスカニーニ同様、ワルターもこの曲がとても好きだったのだろうと思います。

今回は、個人的にもとても仲が良かったと言われる両巨匠の演奏を挙げさせていただきました。 花崎 洋。

 

 

 

 

 

 

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  1. 東 賢太郎

    7/11/2013 | 2:15 AM Permalink

    クーベリックはベルリンPOでやりたかったかもしれません。3番だけですが立派なものです。カラヤンの牙城だったのでこうなったんでしょうか(ドヴォルザーク全集はBPOでやっています)。オケによって出来不出来があります(6番のパリ管はミスキャスト、8番のクリーブランドは当たり)。ところで、作品番号ではないですがモーツァルトも1784年のK.449からほぼ作曲順に自作目録に書き込んでいますね。作品が消費でなく鑑賞の対象になっていった歴史の一端ですが、彼は交響曲に番号は振っていません。38番プラハまでは私設演奏会など特別のオケージョン用に急ごしらえで書いており、ベートーベンに似たシチュエーションでじっくり書いたのは(理由は不明ですが)3大交響曲だけです。この3曲があってベートーベンの作曲スタンスが固まったとすら思います。1番の初演は1800年4月2日にブルグ劇場にてベートーベンの自費演奏会で彼自身の指揮で行われましたが、1番はこの演奏会のトリ(最後)でして、オープニングは「大交響曲、故・楽長モーツアルト氏作曲」とあります。この大交響曲が何だったかはわかっていませんが、同じハ長調の41番ジュピターだったのではないかと想像しています。理由はドタ勘です(すみません。でもハフナーや40番じゃドラマがなくてつまんないじゃないですか!)。チャンピオンベルト争奪戦だったとすれば1番の曲想も納得です。花崎さん1位のトスカニーニ、そんなベートーベンの気概にぴったりの演奏でもありますね。

  2. クーベリックの全集へのご論評、有り難うございました。6番はミスキャストですか。楽曲との相性もあれば、楽団との相性もありそうですね。モーツアルトの大交響曲とは、私もジュピターハ長調と思います。4楽章など、宇宙的な規模のスケールが感じられますし。花崎洋

  3. 東 賢太郎

    7/15/2013 | 8:52 AM Permalink

    パリ管は木管やホルンはそれなりにきれいですが弦にさっぱり魅力がありません。こんな音で田園を聴きたいとは思いませんが、さらにいえば、クーベリックのコンセプトでパリ管をどうしても起用するなら田園しか無理だったでしょう。LPも聴いてみましたが同じです。フランスのオケというのは難しいですね。実演も含めてドイツ物でいいのにあたったことがなく(ミュンシュのブラ―ムス1番のLPぐらい)、ちょっと偏見になっているかもしれませんが・・・。フランス物でさえ、日本では天下の名盤で有名なクリュイタンス/パリ音楽院o.のラヴェルでも、ダフニスなどよく聴くと内声部はいい加減で混濁している部分があります。そういうのは許さない僕の趣味の問題もありますが。