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私が選ぶ「9人の指揮者によるベートーヴェン交響曲全集」第6番ヘ長調作品68「田園」

2013 AUG 11 7:07:23 am by

今回、このシリーズの投稿をさせていただくに際し、改めて9つの交響曲を聴き直してみました。

その結果、それぞれの交響曲に対して以前に抱いていた印象と比較し、良い意味で最も異なる感銘を受けたのが、この田園交響曲でした。

私個人は、高校生の頃から、第4交響曲と並んで、この第6番を最も気に入っておりましたが、今回改めて聴き直し、「こんなにも凄い曲だったのか!」という驚きにも似た感情に何回も包まれた次第であります。

特に若い頃、最も苦手で退屈に思えてならなかった第5楽章の認識が、今回の聴き直しにより、大きく変わりました。第2交響曲の投稿の際に書かせていただきました、ピアノソナタ11番から18番の聴き込みの効果もあったのかもしれません。

 

◎私が推薦する交響曲第6番「田園」のベスト1

フルトヴェングラー指揮ウィーンフィル演奏(1952年スタジオ録音盤)

勿論、私の個人的な感じ方に過ぎませんが、ベートーヴェンが第6交響曲で意図したであろう、自然への崇拝、感謝、祈り、帰依願望などが最も深く反映された演奏であろうという点で、ベスト1に挙げさせていただきました。

第1楽章は、恐らくは全ての演奏の中で最も遅いテンポで重々しく進行していきますが、聴けば聴くほどに、「ああ、このテンポが最も適切だ」と思えて来る(この珍現象は、私だけかもしれませんが)から不思議です。フルトヴェングラーのこの曲に対する深い愛情が感じられ、ウィーンフィルの楽員達も、フルトヴェングラーの解釈に心から共鳴していることが感じられます。

第2楽章もウィーンフィルの音色をフルに活かした、実に味のある演奏です。テンポの微妙な変化も実に計算され尽くしています。

第3楽章も第4楽章も、けっして力まず、それが却ってスケールの大きさや深い呼吸につながっています。

そして、私が最も気に入っているのは、第5楽章です。唯一の欠点は第2主題のテンポのあまりの急加速ですが、その他の点では正に非の打ち所はありません。特に中間部の「自然への感謝の念」、コーダの「祈りの厳粛さ」は最高であります。

なお、フルトヴェングラーには、手兵ベルリンフィルを振った「ライブ録音」も何点か残されていますが、総合的には今回推薦させていただきましたウィーンフィルとのスタジオ録音の完成度が最も高いと、私個人は考えております。

さて、今回の企画、一度ベスト1に選んだ指揮者は、以降の作品では選べないという制約があります。

あーあ、フルトヴェングラーのカードを、ここで切ってしまった。第9交響曲は、どうしよう?

 

◎第6交響曲「田園」の次点の名盤として

エーリッヒ・クライバー指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏

東さんが「イチオシ」された演奏です。実は私も、この盤をベスト1に挙げようかと、随分と悩んだものです。たいへん中身の濃い、ズッシリとした感動の残る素晴らしい演奏で、大学生の頃、繰り返し愛聴した懐かしい記憶が蘇ります。

 

クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団演奏

第3楽章のテンポが遅く、緊張感にやや欠けるのが難点ですが、それ以外ではクレンペラーの長所が十二分に発揮された名演奏と思います。

つまり、「新世界交響曲」や「幻想交響曲」と同じく、クレンペラーは曲を純音楽的に捉え、純音楽的に演奏して成功を納めているという点で、たいへん魅力的な演奏です。上記、新世界交響曲には「土臭さ」は一切無く、幻想交響曲には「おどろおどろしさや妖しさ」も一切ありません。それでいて、いえ、だからこそ音楽の魅力を充分に楽しめます。

この田園交響曲にも同じことが言えると思います。第1楽章と第5楽章が特に感動的で(やや枝葉的な観点ですが、第2ヴァイオリンに実力のある奏者を多数配していることも、この2つの楽章を魅力的にしている大きな要因であると感じます。)、第3楽章のテンポに問題が無ければ、ベスト1に推薦しても良いとすら、感じております。

 

ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団演奏

ワルターがこの曲をいかに愛していたか、如実に伝わって来る名演奏です。コロンビア交響楽団の実体は、最晩年のワルターのレコード録音用に編成された楽団で、奏者達の多くは、普段はハリウッドの映画音楽の演奏者であったとも聞いたことがあります。

その寄せ集めのメンバーで、ここまでの演奏を成し遂げてしまう、ワルターの指導力にも驚きます。

ただ、第1楽章の展開部の盛り上がりでの低弦(特のコントラバス)の無神経な音の刻み、また第5楽章のコーダの盛り上がりに象徴される音の厚みの無さ(奏者の数が通常のオーケストラ編成よりも、かなり少なかったとも聞いております)は、確かに気になります。

しかし、そのような欠点があるにもかかわらず、この田園交響曲の魅力を大いに伝えてくれる名演奏であると強く思います。

花崎 洋

 

 

 

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