オーディオ沼はタナトスである
2021 FEB 28 17:17:17 pm by 菊池 孝之助

先輩、オーディオはエロスである、というご意見ですが、僕はフロイト的にはむしろ、タナトスっていうか、トーデスリープだと思いますよ。いやいやちょっと待って、沼にハマった場合ですけどね。
こんなキザな発言は今の若い人はまずしないし、しても相手にされないか、ポカンとされるかのどちらかだ。私なら、虫の居所がわるければ、そいつをぶん殴るかもしれない。
しかし昭和の男子学生の間ではこういうのはごく当たり前というか、キザな発言ができるかがとっても肝心であり、もはや作法に近かった。
親が金持ちで女の子をドライブに誘うためのクルマを持ってるか、金がなくとも頭がよくて男らしいと評価されるか、楽器の演奏又は歌がうまいか、これらのどれかに当てはまらなければ女にモテないと信じた若者が多かった時代である。
これらのうち一番の近道は、インテリと思われることだ。インテリになることじゃない。
インテリの対義語は、バカである。バカと思われるくらいなら死んだほうがまし、これは今の私でも同感なのだが、そう思い詰めた学生たちは、ドイツ語やフランス語の単語やフレーズを日常会話の端々に使って人を煙に巻き、哲学書でかじった未消化の知識を披瀝して議論を混乱させ、音楽喫茶であともう一枚と粘ってクラシックやジャズの知識を盗む一方で店には金を落とさず、勉強が苦手ならば近所迷惑構わずに昼夜を問わずフォークギターを練習した。
ひと言でいえば、みんな女にモテるために必死だった。今から見れば、超うっとうしい学生ばかりだった時代だ。
こういう私は、大学卒業の年に平成に変わったから、硬派を本流とする昭和世代からしたら軟弱者の若造のレッテルを貼られよう。
確かに私の時代は上に書いたような雰囲気の片鱗は多少残ってたものの、もはや消え去りつつあった。しかし10年上くらいの先輩方ともお付き合いというかなんだか理不尽な主従関係があったから、よく覚えている。
前置きが長くなりましたが、先輩、オーディオはエロスに間違いないです。あれは本当にエロいですから。
でも、オーディオ沼なんて、もう、言葉に出すのも恐ろしい。
オーディオ沼とは何だろう。それは、また明日
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