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静けさの中から (1) この時間にはこの音楽を

2017 AUG 1 21:21:42 pm by 西村 淳

スーザン・トムズの「静けさの中から」-ピアニストの四季(小川典子訳 春秋社)を読む。
主な活動だったフロレスタン・トリオでの演奏活動も終えたようで、実際にその演奏を聴くチャンスは日本にいるとさらに難しくなってしまった。
救いは彼女が文筆の腕も立ち、この本を読むことで、彼女の聲にじかに接することが出来ること。CDで、ということもあるが、どこか取り澄ました感じのするフロレスタン・トリオよりもより著作のほうが生身の演奏家、音楽家に会うことが出来て共感できる点も多いし、これは?ということもある。この本は同業者の小川典子の翻訳がとても良くすらすらと読めるし、ちょっと気になる表現とか「いいね」を感じたページとか、附箋だらけになってしまった。備忘録として気になったところを、一つ一つを紐解き、何回かに分けて反応してみたいと思う。

☘この時間にはこの音楽を

『演奏活動を始めて間もない頃、インドに旅行した時の出来事は、今もって忘れることが出来ない。・・ツァーが始まった数日後、関係者が突然、インドの伝統音楽のミュージシャンたちが出演するコンサートに出てほしいといってきた。開演時間は未定らしい。そこでそのミュージシャンたちと会って相談してみることにした。
最初に彼らが質問してきたことは、午前中の演奏会と想定した時のプログラムについて。「ハイドンとブラームス」。「じゃあ演奏会が夜だったら?」彼らの問いかけに、再び私たちは「ハイドンとブラームス」と答えた。すると、インドの音楽家たちは驚いた眼をして私たちを見つめ、「それじゃ、さっきと同じじゃないか!」と叫び声をあげた。・・・
それなら逆に、彼らはどんな心づもりがあるのか訊いてみた。すると、「午前中の演奏会なら《朝のラーガ》を使って即興演奏をするし、夜の演奏会なら《夜のラーガ》。その時間帯によってラーガを変える。」と答えるではないか。
インドの伝統音楽にはラーガと呼ばれる音階が何種類もあって、時間帯によってそれにふさわしいラーガ音階があるのだと彼らは教えてくれた。』

🍀ハイドンとブラームスは確かにいつでも演奏できるが、朝の演奏会だとブラームスはちょっと胃が重い。じゃあ朝は何と言われても朝向きの音楽というのは思い浮かばないし、そもそもクラシックの相場では演奏会は夜と決まっていたのではないか?「ライヴ・イマジン」は午後にやるのが恒例だがこれは伝統に棹さす行為なのかもしれない。実際に昼公演はわざわざマチネと断わるくらいだし、朝公演などお祭り以外あり得ないことではないだろうか。昼公演という時間帯を意識したプログラミングをやったことはない。インドという非常識が常識な国でのことが西洋音楽のフロント・ランナーを自任している人の心を揺さぶるところが何とも面白い。

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