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ジークフリート牧歌

2018 MAR 23 21:21:30 pm by 西村 淳

この幸せに満ちた曲が大好きである。
クリスマスの朝、最愛の妻コージマへのバースデー・プレゼントのために、そして息子ジークフリートを生んでくれたことへの感謝を込めて作曲したとある。幾多の困難を乗り越え1870年、8月25日にルツェルンのプロテスタント教会で結婚式を挙げたワーグナーとコージマ。感慨ひとしおの中、同年12月25日にトリープシェンに鳴り響いた音楽は幸福と歓喜の絶頂に違いない。
そりゃあこんなことがあれば、どんな女性だって相手を惚れ直すに決まっている。まどろみの中、コージマは美しい冒頭のメロディーに目を覚ます。それはチューリッヒから招かれた楽人たちが階段に配され奏でる愛のテーマ。なんて粋な演出だろう!
ワーグナーは人としては毀誉褒貶のあった人だし、とてもじゃないがついていけないし友人になりたいタイプじゃないけれどこの逸話だけは特別だ。
この曲が演奏された機会をショルティの自伝に見つけた。1992年、ショルティ80歳の誕生日、バッキンガム宮殿。ダイアナ妃にエスコートされそこに用意されたものは、シカゴ交響楽団のレジェンド、トランペットのアドルフ・ハーセス、(コージマの誕生日に演奏された時、ハンス・リヒター(「ニーベルンクの指輪」の初演指揮者)が引き受けたポジション:おそらくこの仕掛け人はハーセスか!?)日本ツアーから飛んだウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒル、ベルリン・フィルの首席コントラバスのルドルフ・ワッツェルなどなど綺羅星の如く豪華メンバーを揃えた「ジークフリート牧歌」だったそうだ。ところでショルティが指揮したウィーン・フィルの録音はヴァイオリンがキュッヒルかどうかは不明だが最高の出来栄えだ。
そんなこともありこの曲は他にも多くの幸せの瞬間を演出してきたに違いない。これをライヴ・イマジンの40回記念に演奏する。指揮は37回でモーツァルトのジュピター交響曲で驚異的な名演を導いた田崎瑞博先生。「ジークフリート牧歌」は大好きな曲と言っていただいた。
しっかり練習して、この音楽の持つ幸せをもぎとってみたいものだ。

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