Sonar Members Club No.31

since February 2013

日本の歴史に翻弄された音楽作品

2018 MAY 3 22:22:36 pm by 西村 淳

大日本帝国は皇紀2600年の記念行事の一つにその当時の大作曲家に作曲を依頼している。1940年、日米開戦の1年前のことである。リヒャルト・シュトラウスという大立者に依頼している事実を知った時、びっくりしてしまったが、その作品がこの人の管弦楽曲であるにも関わらず、録音はおろかほとんど演奏の機会すらなかったのには、二度びっくりだった。フジタ等の戦争画と同様、やはりその成立ちが大きな影を投げかけているのであろうか。ところがシュトラウス以外にも委嘱を受けた作曲家が何人かいたし、以下がそのその全容である。
・ ブリテン(イギリス) シンフォニア・ダ・レクイエム
・ ピツェッティ(イタリア) 交響曲 イ長調
・ リヒャルト・シュトラウス(ドイツ) 日本建国2600年祝典曲 Op.86
・ イベール(フランス) 祝典序曲
・ ヴェルシュ(ハンガリー) 交響曲
この中であまり馴染みのないのはピツェッティとヴェルシュ。一方、訳あり(どう言い訳しようと、レクイエムはないでしょう)で却下されてしまったブリテンとイベールはその後も演奏される機会に恵まれている。こうして見ると枢軸国側にあったシュトラウスやヴェルシュ、ピツェッティはろくな評価をもらっていない。うがった見方をすれば戦後処理がそのまま反映されているのではないだろうか。
「いや、つまらん作品なんだ所詮」、という意見もあるかもしれないが前述した通り演奏機会に恵まれず、判断のしようがないというのが実情だ。皇紀2600年オーケストラの録音で
イベールの作品は「あかとんぼ」の山田耕作が行っている。写真では10人のコントラバス奏者が写っており(公式には12人)160人ものマンモス・オーケストラはまるでシモン・ボリバル管弦楽団を思い起こし苦笑してしまった。
そんな折、ピツェッティとイベールの楽譜が手に入った。おそらく印刷製本されて作曲者のもとに届けられたものと同じものであろう。1940年発刊とある。
曲の内容と言うより日本人として歴史の中にあった西洋音楽との接点をこれらの楽譜感じることが出来る。見る、触れる・・それはモーツァルトの自筆譜ファクシミリを手にしたときの感覚と似ている。300万人の犠牲者を出した大きな戦争に突入する直前、平和を信じ、世界の仲間入りをしようと背伸びをしていた痛々しい時代を映す、滑稽にすら見える哀しい感覚。人によってはゴミ、ただ私にとっては心の拠り所の一つとして大切なものである。


(写真提供:ディスク・ユニオン ストアブログ)

Categories:未分類

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

Luise Ono
三遊亭歌太郎
島口哲朗