イザイの「子供の夢」
2018 NOV 17 19:19:53 pm by 西村 淳
ライヴ・イマジン41でプログラムした、ショーソンの「詩曲」、「コンセール」はユージン・イザイに献呈されたものである。美の極致ともいうべき曲をショーソンから2つも献呈されるほどのイザイってどんなヴァイオリニストだったんだろう。フランコ=ベルギー学派のヴァイオリンの伝統を・・・その流派の特徴は、云々。そんなことを知りたいのではなくもしイザイの録音が残っているなら是非聴いてみたいものだ、と願っていたところ某音盤組合の積み重なった段ボール箱の中から顔を出しているではないか!?しばし目を疑ってしまうほどのタイミング。因みにあらゆるヴァイオリンソナタの頂点をなすフランクの作品はやはりイザイに献呈され、結婚式当日に届けられ早速その場で演奏された。
嬉々として早速CDプレーヤーに載せる。おお、1912年の録音とある。この時代はまだアク―スティック録音のはずだし大きなラッパに向かって弾いたんだろうな、などと思いながらブラームスのハンガリー舞曲を聴く。早いところはやたら早いし拍子はいったいどこに行ったみたいな音楽。100%の賛同はしかねるけれど、デル・ジェスの美音は耳に残る。シャブリエ、ドヴォルザークに続いて、フォーレの子守歌を聴くころになってその音楽にどんどん引き込まれていき、最後のイザイ自身の「子供の夢」が始まるころにはもう至福感に満たされた。ヴァイオリニストとしてはティボーの高貴な表現に確実な技巧が安定感をもたらすノーブルという単語がふさわしい。G線の鳴り方も同じデル・ジェスを使っているハイフェッツのそれとは違い柔らかく、温かい。アイザック・スターンの献辞には偉大なヴァイオリニストは二人だけ、パガニーニとイザイだ、と。久しぶりにいい音楽を聴いた。
ティボー、クライスラー、イザイ、そしてカザルスが参加した弦楽四重奏が本当にあったそうな。そしてイザイはアントン・ルービンシュタインと演奏旅行をしたことも。そんな夢のような時代とワクワクするような感動を想いながら。
やれAIがどうのとデジタル・ワールドが拡がれば拡がるほどその反証として人が人としての証を求めたくなる。ここにイザイの演奏する「子供の夢」こそそれにあたる作品かとも思う。ちいさき者への優しい眼差し、愛情、慈しみ・デジタル世界では切り捨てるだろうものがたくさん詰まっている。一つ一つを確認し、大切にしてきたものが巨大な力の前に容赦なく切り捨てられるとき、人が生きる価値そのものが崩壊する。
私はこんなものは要らない。今すぐに止めるべき、そして止めさせなければならない。
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maeda
11/20/2018 | 8:24 PM Permalink
私もメンコンの3楽章のCDは持っていましたが、幽けき音で全貌はよく分からなかったです。コンセールを聴きたかったですねぇ。あの楽譜から想像するに、太い音だったような感じがします。私が苦手意識があって、しかも、どうしても欲しい音なので、どこまで出来るか頑張ってみようと思っています。
西村 淳
11/29/2018 | 9:14 PM Permalink
このCDもメンコンの3楽章が入っています。たぶん同じものですが、大変速いテンポにピアノが合わせるのふうふう言っています。電気録音以前ですから録音時間の制約は本当にあったのかもしれません。そうだからという訳ではないのですが、ヴィルティオーゾの音楽です。
「コンセール」はイザイがあちこちで演奏したことで有名になったともありますね。フランク、ショーソン、ルクー、そしてイザイ、近代ベルギー楽派はヴァイオリン奏者にとって宝の山!