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静けさの中から (14) 脳細胞

2021 MAY 19 20:20:09 pm by 西村 淳

☘(スーザン):頭の中で音楽を想像している時と、実際に音楽家が音を出しているのを聴いている時。どちらの場合もまったく同じ脳細胞が働いているのだという。
おもしろい。必ずしもピアノの前に座っていなくても、有効な練習ができる、ということにつながるではないか。躍起になって楽器を弾くばかりでなく、頭の中で想像をすることで学ぶという方法は、現代の音楽教育にもっと取り入れられるべきではないかと思う。最近、音楽学生や、音楽家たちは、RSI(反復運動過多損傷)と呼ばれる身体の痛みに悩まされている人が多い。頭で考えている時にも実際の音を聴くのと同じ作用があるのなら、黙って楽譜を見ているだけで、たくさんの勉強ができるはずだ。
私の知り合いにも、黙って楽譜を見つめることで、大いなる喜びを得る人たちが実際にいる。彼らは楽譜やスコアをじっと見ているだけで、音を想像することが出来、まるで音楽会で生の音楽を聴いているかのように感じるらしい。ケンブリッジ大学時代の先生、フィリップ・ラドクリフ教授もそのひとりだった。彼は生演奏の音楽会を聴きに行かない。業を煮やした学生が、やっとの思いで教授を引っ張り出しても彼が感じるのは頭の中でなっていた音楽との比較と再確認だけだった。
実際の音楽を聴いている時と頭の中で音を相応している時。どちらも確かに同じ脳細胞が働いているのかもしれないが生演奏は脳細胞以外に、体全体を刺激する。そして体全体がそれに応える。決定的な違いがある。

?(私):ギーゼキングの伝説的な話を思い浮かべたが、天才と比べることは無意味。私の場合は、室内楽のスコアがあっても入るタイミング、ほかの人がやっていることの確認、和音の確認などの作業であって、スコアがそのまま頭の中で音楽として鳴る、というような才能は埋もれたままだ。確かに慣れると響きとして頭の中では鳴っているようだが、全曲を適切なテンポで読み‥聴き続ける・・ことはできないし、ましては初見であればお手上げだ。ヴィオラ記号は変換する訓練が必要だけど、他のことも訓練で行けるなら勉強法の一つとしては認めなければならない。ピアニストやヴァイオリニストは過度な練習で「局所的ジストニア」を発症する人も多い。レオン・フライシャーやゲイリー・グラフマンもその活動を中断された。その悲劇的な状況が少しでも救われるなら。
スコアをカバンに入れて持ち歩き、出張の新幹線の中で見ていた時、名古屋から隣に座った紳士が音楽関係の人だったことがあり、もしやその黄色い本はオイレンブルクのスコアではありませんか?と来たことがあった。ブラームスのピアノ四重奏曲だったが、話の内容はあまりよくは覚えていない。でも音楽談義で東京までがあっという間だったことを想い出す。

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