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サンフランシスコ・ベイ・ブルースが聞こえる(197X年 共学編 Ⅱ)

2014 APR 20 13:13:19 pm by 西室 建

 都内の一軒家で恐ろしくヒマそうな高校生が二人で、ガシャガシャとギターをかき鳴らして歌を歌っている。マイナー・ヒット曲サンフランシスコ・ベイブルースだ。かつてブラザーズ・フォアがアメリカでヒットさせたフォーク・ソングだが、このころ武蔵野タンポポ団なるバンドが日本語でカヴァーしてコンサートでよく歌っていた。

          『オイラを残してあの子は行っちゃったー・富士山の麓までー・とってもイカしたー・娘だーあったがー・さよならと一言言ったきり・あの娘は二度とは帰って来ないだろー・オイラにゃお金も車も無いからー・でも戻っておくれー・機嫌を直してー・そして一緒に歩こうよ吉祥寺の街を』

 武蔵野タンポポ団は吉祥寺の伝説のライヴ、ぐゎらん堂という店でよく歌っていた。この二人、原辺(ばらべ)と英(はなぶさ)はバンドを組んで練習していた。もう一人の椎野は夏休みが始まった途端にナンパのメッカと言われた新島に行ったきり、全然連絡もない。

「二人でやってもサイモンとガーファンクルみたいにはいかねーもんだな。」
「そりゃそうだ。本物はギター一本でやってるからな。お前もうちょっと練習しろよ。」
「だからこうしてやってんじゃねーか。椎野は何にも言ってこないのか。」
「まだ島にいるんだろ。金がなくなるまで居るって言ってたな。だけど本当に毎日ナンパして暮らしてるのかな。」
「そんなに成立するとも思えないけど、手当たりしだいに声を掛けて同じ女の子に当たることになったらどうすんだ。」
「何れにせよ華やかなもんだよ。こないだお前と行ったブルース・フェスティバルって気が付いたら客は男ばっかりだったぜ。それも右から左までベル・ボトムのジーンズでガサガサ髪伸ばしてさ。」
「だから女はみんな新島に行ったんだろ。」
「もう夏休み終わっちゃうけどなァ。3人で音あわせしないと秋にステージに上がれないじゃない。」
「だからもう少しレパートリー増やそうぜ。何やる。」
「ビートルズは解散しちゃったから新曲は出ないんだよな。」
「ありゃ映画の時点で終わってんだよ。だってあの心優しきジョージが大天才ポールに苛められてるところ映ってんだぜ。」
「それで時代はフォーク・ソングですかね。」
「お前が試しに造ってくる曲はコード進行がみんな同じだぞ。このけったいな詩が歌に合ってないんだよ。」
「エッそうだったのか。リズム変えるか。」

「シラけた、かったるい、でズーッと行かなきゃなんないのか。大学の方は落ち着いてくれてんのかね。全共闘のオニーさん達もすっかり挫折モードって奴だな。」
「あれはなー、セクトが出てくるとおかしくなるんだよ。一緒にやれなくなって仲間割れしちゃうんだよ。」
「その内セクトに入るのに面接とかが始まったりしてな。」
「試験されたりして。科目は何になる。」
「英(はなぶさ)の得意の英語はないだろう。」
「かえって中国語とかロシア語になったりして。原辺知ってる。あのセクトのフロントってロシア語なんだって。」
「ホントか。知らんかった。」
「毛沢東語録でも覚えるのかな。ML派ってのはマルクス・レーニン派と言われてたけど今は毛・林派って言うそうだ。」
「黒ヘル青ヘル白ヘルとくると野球のチームみたいだな。」
「そんなの言ってるのは広島だけだろ。」
「ゲバ棒振るのにバッティングの練習したりして。」
「オラオラオラオラ腰がはいってないドー。」
「バリの強化のための工学知識。」
「聞かれたら本気で怒られるぞ。ケガ人ガンガン出してるんだから。ハイジャックに総括だもん。」
「それ発音が違う。連合赤軍は関西が主流だからそ’うかつと発音するんだ。」
「安田でやられてから秘密結社みたいになっちゃった。」
「むしろ偉いよな、遊び呆けてるのも一杯いるんだから。」
「うーん、分からん。」
「全共闘のオニーさん達は『網走番外地』が好きなんだって。負けると分かっていても義理を返しに行くってところに痺れるんだそうだ。」
「お前その映画見たことあんのか。」
「いや、ない。」
「三島がハラ切って左右革命決戦でも始まるかと思ったけどな。」
「お前そしたらどっちに付くんだ。」
「・・・・。」

「そう言や新宿のフーテンもいつの間にかいなくなったけど、ありゃどこに行ったんだ。」
「新島じゃない。」
「お前相変わらず中也読んでんのか。」
「それがさ、何しろ早死にして作品数が少ないだろ。暗記しちゃうんだよ。」
「そうか、それで擬態語だらけのけったいな詩になってんだ。こんなモン、特に女の子は読まんぞ。」
「そんなことはない。所詮天才は死んでからしか評価されん。」
「じゃ死にさらせ。」
「ワリャ一人だけ生き残るつもりか。そうはさせんドー。」

「それにしても暑いな。」
「しょうがないだろ。夏なんだから。」
「エーリッヒ・フロム読んだ?」
「お前があんまり煩いから読んだけどつまんなかった。」
「そうだろうな。お前向きじゃないな。」
「オイ、一日中ヒッピってていーんかねワシ等。」
「で何する。」
「映画でも見ようか。」
「あっ駅前の名画座でイージー・ライダーやってたぞ。画面ボロボロらしいけど。」
「あれさ、ピーター・フォンダはラスト・シーンにディランの曲を使いたかったんだってさ。でもディランは発展的なエンドじゃない、という理由で断ったんだって。それじゃ発展的なエンドって何だ、と聞くと二人が一緒に激突して死ぬことだ、と言ったんだそうだ。お前意味分かる?」
「それはだな。一人ずつ撃ち殺されてしまうより、男気を持って敢然と理不尽にブチ当たった段階で・・全ての時間と次元を超越するー・・・・空間的なー、えーと・・・自由が・・・・もたらされてー・・・・。」
「何だ分かんないのか。」

 映画館にはヒマな野郎共があたりかまわずタバコを吸っていた。この頃は禁煙も何も関係なく吸っていた。

サンフランシスコ・ベイ・ブルースが聞こえる(197X年 共学編 麻雀白虎隊)

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サンフランシスコ・ベイ・ブルースが聞こえる(197X年共学編 エピローグ)


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