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平成亜空間戦争 Ⅱ

2015 APR 29 7:07:29 am by 西牟呂 憲

 前回のいきさつ 平成亜空間戦争

 ついにヤマト亜空間の関ヶ原が始まろうとしている。煉獄界の怨念パワーが全体的に落ちて来たのだ。これは地上の『ニッポン』と言われているエリアの平和が長く続き過ぎて、亜空間入りする怨霊が減ってきていることによるものらしい。ニホンジン全体が地球温暖化に合わせて『いい人』だらけになり、又長寿化によって昔であれば恨みつらみで悶死したような人が痴呆によって桃源郷に遊ぶような気持ちのまま亡くなるようになったからとも考えられる。
 亜空間の怨霊は憎しみのマイナス・パワーを発揮、敵を飲み込むことによってのみ成立しているところがあって、上述の理由により歯ごたえのあるニュー・カマーが来ないと亜空間自体が密度が薄くなってしまうのだ。怨念は怨念を、憎しみは憎しみを呼ばなければならない。
 ヤマト亜空間のカントウを支配していた平将門はついにキレた。

将門の首

将門の首

「おのれ不甲斐ないニホンジン共め。長い間地縛霊として君臨しているワシを何だと思っている!こうなったら亜空間革命を起こし一人でヤマトを治めて見せてやる。大塔宮!ここへ!」
 この怨霊は首と胴が離れているため、喋る首を、首のない胴体が脇に抱えたり両の手で高く差し上げながら怒鳴り散らした。
 大塔宮とは鎌倉で幽閉の後、皇族には珍しく斬首された護良親王のことで、将門と同じく首と胴は別々だ。将門との怨念比べに負けて以来副官となっていた。皇族なので敬語は使わない。
「あいや将門。退屈至極。して怨敵は。」
「知れたこと。キョウトで長年えばりちらしている宮の父君。帝の後醍醐天皇。あの異形の怨霊の霊気を吸い込んでくれる。」
「良き哉、良き哉。進んで戦おう。北の守り安んじ給え。」
「アテルイのことか。よし、エゾチのシャクシャインを使って釘づけにする。先ずは宮より怨霊ビーム送られよ。」
「ホホホホ。」
 宮は腰を上げ、宝刀を掴むやいなや裂迫の気迫と共にキョウトに向けて投げ放った。

 史上最強の怨霊後醍醐天皇もまた無聊を囲っていた。元々滅多に喋らない。声を出すと口から火炎を吐いてしまい、その度に回りのチンピラ怨霊が焼かれて天国に行ってしまうからだ。
 天皇はフッと気配を感じ東を向いて立ち上がり異様な気配を発揮し始めると、突然『シャアアアア』と炎を吹き出した。そのエネルギーに押されたのか、キョウトに向かってくる飛翔体が発火し勢いを弱めて落下し後醍醐天皇の足元にドスーンと突き刺さった。それを見た途端にみるみる怒気をはらむと、何と目から炎が上がっているではないか。側近の石田三成を下がらせて大音声を放った。

後醍醐天皇

後醍醐天皇

「かの宝剣は朕が皇子、大塔宮の愛刀。何をかいわんや。」
天皇の口からは大火炎が舞い上がった。
 たちまち中国皇帝のようないでたちに変身すると金剛杵(ヴァージラ、密教の武具)を掴み注意深く振り返り側近達がいるかどうか見た。少し離れて石川五右衛門と石田三成がいるのを確認するや、遥か虚空に向けて飛翔しはじめた。ゴーッと風を起こしながらである。余程の怒りなのか火炎を吹き続けているので軌跡が飛行機雲のようにたなびいていた。続いて石川五右衛門が姿を消した。

 地上界で関が原と言われる上空を飛翔していた後醍醐天皇は、突如強い霊力によりスピードが落ちるのを感じた。強力バリアーの結界が張られているのだ。亜空間には引力がないため地上に降り立つようにはならないが、移動を止めて霊力の発せられている東側を見据えた。
 すると、二つの怨霊が見据えているではないか。両方ともクビが無く、恐ろしいことに両手で自分の首を捧げ持っていた。後醍醐天皇ははばからずに向かって右側の怨霊に言い放った。
「朕が皇子なる大塔宮よ。なにゆえ朕に逆らう。朕改めてひんがしを治めんと欲す。」
宮の首は通る笑い声を上げた。

大塔宮 護良親王

大塔宮 護良親王

「ホーホッホッホ。仕えたるは帝(みかど)に非ず。桓武天皇五世の孫、平(へい)新皇なり。」
シャーアー!」
 後醍醐天皇が口から大火炎を吐いた。火はまるで龍が飛ぶように行き、大塔宮を包み込みそうになったが、その刹那。大きなモーションで手にしていた首を天高く投げ上げた。首は正面の後醍醐天皇を見据えつつ高空に上がった後急降下し、後醍醐天皇の吐いている火炎をらせん状に回転しながら迫る、大火炎が消えた。
 親子が対峙しているすぐ近くでは平将門がいかなる妖術を使ったのか、大釜を出現させると満々とたたえたお湯が沸騰している。
「五右衛門。前の時は油茹でだったが今度は熱湯にて煮しめてくれる。もっと苦しいぞ!フハハハハハ。」
 ひび割れたような声だが良く通る、五右衛門は怯んだ。

釜茹でにもビクともしない五右衛門

釜茹でにもビクともしない五右衛門


 

 しかしニヤリと笑うと自らザンブと飛び込んでみせ、前世にて一緒に茹で殺された子供を両の手で高く差し上げ言い放った。
「平新皇!今のワシには溶けた鋼鉄でも茹で殺すことはできまいぞ。」
 一方後醍醐天皇は宮の首が周りをブンブン飛び回る中、右手にヴァージラを握り締めると大きく飛翔し頭の無い宮の首の付け根に振り下ろした。ところがいつの間にか宝剣を手にしていた宮はこれをガッと受け止めて払った。
 すると後醍醐天皇は見る々々巨大化し、尚且つその姿は骸骨となっていくのだ。雷声がとどろいた。

髑髏本尊 降臨

「真言密教立川流の奥義! 朕がまことの姿髑髏本尊なるぞ。」
 真言密教立川流とは奇怪な教義のセックス礼賛教団で、後醍醐天皇は怪僧文観和尚よりその奥義を授けられた。
 将門は巨大骸骨化した後醍醐天皇を見上げて不適に笑うとドーンという音を立てて同じように巨大化し、まず足元の五右衛門を釜ごと蹴飛ばした。
「帝!もうそろそろ天界で安んじられよ。とは言え極楽往生はその異形では到底望めぬ。閻魔大王にでも頼まれるべし。」
 巨大骸骨と化した後もヴァージラを握り締め将門と対峙する。
 と、その時。一瞬轟音とも雷鳴ともつかない大音響とともに南から光線が指し込んだ。

凛とした道真公

凛とした道真公

 
凄まじい怨念ビームであった。髑髏本尊も巨大将門も元の姿に戻り、五右衛門を茹でていた大釜も消えた。
「帝も平新皇も各々収められよ。」
 九州大宰府にいるはずの菅原道真公の声が聞こえる。150年振りの怨念の大爆発であった。
 亜空間は最初から歪んでいるので、長距離になると怨霊ビームは曲線を描くことが可能だったため、大宰府から孤を描いて関ヶ原の南から攻撃できた。
 しかも後醍醐天皇陵は吉野にあって北を向いているため、南への防御は弱かったのだ。
 亜空間の戦いはマイナスエネルギーのぶつけ合いなので、地上界に猛烈な低気圧や地震を引き起こし、災害を起こす。菅原道真は見かねて終結に動いたのだ。
加えてキョウトで留守を守っていた石田三成が裏切ったという情報が入り、一方のカントウではオレオレ詐欺に引っかかって悶死した怨霊が大量に亜空間に参入していた。長くフランチャイズを空けると、勝手にトーナメントが始まり勝ち残った怨霊が強大化してしまう。仕方なく両方とも関ヶ原から陣を引ざるを得なかった。

 しかし、怨霊が人間界の心配するのだろうか。

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平成亜空間戦争

Categories:2021年の安寧, 伝奇ショートショート

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