名古屋だぎゃ (ゼロ戦と秋水)
2015 JUN 23 12:12:37 pm by 西 牟呂雄

映画『風立ちぬ』でゼロ戦を牛に引かせたシーンがあった。あれは実話で、その場所は名古屋なのだ。そのつもりで何か見るものはないか、と探すとあるわあるわ。そう、ここはゼロ戦発祥の地。正式名称『A6M 零式艦上戦闘機』米軍からは『ZEKE(ジーク)』『ゼロ・ファイター』とも呼ばれた。
単発単座戦闘機で常識外れの航続距離と空力特性・旋回能力を持つ、日本海軍の技術の粋。将に荒鷲の称号にふさわしい戦闘機だった。
以下は某社の史料館と現地を訪ねて見た写真である。
例の映画で若き堀越二郎が心血を注いで設計していた場所がこの時計台だ。当時の日本のエンジンはどうしても千馬力程度にしかならず、そのために軽量化のため肉抜き、空気抵抗を減らす沈頭鋲など恐ろしく手の込んだ造りになったのがゼロ戦である。言い尽くされたことであるが、防御の面での問題等は全てここから来ているのだ。更にこの凝ったつくりが工程を増やし能率を上げられない。
ある意味では奇跡的にゼロ戦が出来てしまったからあの悲劇につながったとも言えなくもない。
それはともかく、映画にも出てきたこの建物を見て思わず一枚撮った。無論観光客も誰もいない。現役の工場でもあるわけだ。
ここから牛に引かせて滑走路に運んだ。
そして、この場所からは10km程北上したところにこの会社の史料室があり、予約をすれば入ることができる。ワクワクしながら手続きをし体育館のようなところに行くと、あった。ゼロ戦52型だ。靖国神社で邂逅し、鹿児島鹿屋海自基地の展示以来、久しぶりのご対面となった。
悲しい話であるが前線撤退の際には機密保持のために爆破せざるを得ず、また敗戦時は武装解除で全てスクラップとなったのだが、わずかに復元されたものもある。ここの展示は南方ヤップ島で破壊されていたものを引き取り、技術者が苦労して復元したものだ。以前はコクピットも覗けたそうだが、心無い大バカが部品を盗ってしまうのでダメになった、残念。
丁寧に説明して頂いて色々と航空技術の先進性が分かる。
にもかかわらず、僕の感想は『何といじらしい!』だった。何とか工夫をして弱点を補う技術者魂が、だ。機体の丸い優美な姿に見とれてしまった。
右のムクドリのような機体をご存知か。ロケット推進局地迎撃機『秋水』なのだ。ドイツで先に実機化されたが、それは結局日本には持ち込まれず手探り状態で苦労に苦労を重ねて製作されたらしい。
高度1万メートルから焼夷弾をバラ撒くB-29に止めを刺すべく、まるでロケットのような高角度で上昇、到達まで約3~4分。燃料の制約でわずか数分の戦闘だが必殺の30mm砲でこれを撃破、そこで燃料を使い果たす。驚くなかれ片道燃料なのだ。そしてその後は急降下してスピードを確保すると滑空して着陸。何と帰りはグライダーである。
その時解説してくれた方はパイロット経験者なのだろうか、まるで神業だと驚く僕に『いや、技術的にはそんなに難しい操縦ではありませんよ。』等と言う。
更に、翼下に車輪がつけられないため離陸の際には両翼を支えた整備兵が浮力がつくまで全力疾走で押したのだとか、鳥人間コンテストじゃあるまいし。
しかもこの機の翼は軽量化と省資源のために木製である。説明者が叩くとポクポクと音がした。
この美しいボディを見ていて、兵器というものは悲しい使命を持って生み出された代物だが、やはり文明の一つの結晶ではあると思う。先の『いじらしい』という感想にも通じるが技術の最先端であり、いい悪いは別として必死の気迫が伝わってくる。結局実戦には間に合わなかったのだ。
頭が下がるとともに不戦の誓いを噛み締めた。
もうやらないんだからツベコベ突っかかってくるなよ!
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Categories:旅に出る

西室 建
1/24/2016 | Permalink
1月27日にゼロ戦が日本の空を飛びます。
オーストラリア在住の日本人オーナーさんが私財を投じて購入し、整備・保存したものです。この機は二二型でパプアニューギニアで発見されました。
海上自衛隊鹿屋基地だけですが、各地のエア・ショーで飛行展示するプロジェクトもあるそうで、もしかしたら見ることが出来るかもしれません。
機体は米国籍でパイロットもアメリカ人とか。
スポンサーも募集しているらしいので、募金をしてオーナーになろうかな。
西室 建
1/28/2016 | Permalink
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=H3EAJX4s7FI
昨日ゼロ戦が無事飛んだので貼ってみました。
おかえりなさい。
オーナーさんはアメカジで大当たりした人ですね。
名前の入ったプレートを入れてます。
エア・ショウで関東にも来るかもしれません。
アッ私は戦争反対ですから。
西室 建
5/17/2016 | Permalink
その後ある人から聞いたが、実際のゼロ戦乗りだった人がこの展示を見ると『リベットが綺麗すぎる』と言うそうだ。
戦争後半に製造された機体のリベットは、その多くが勤労動員された学生等の手で打たれたため、プロの打ったものに比べると潰れ方がキタナいのだそうだ。
そういえば私の叔母も女学生だったがリベットを打たされたと言っていた。