人類小型化計画
2016 DEC 10 2:02:47 am by 西 牟呂雄
2020年で低炭素社会を実現し水素社会への移行を実現した人類は、残る人口問題に本格的に取り組み始めた。しかも極秘に、である。
音頭を取ったのは二期目に入ったトランプ大統領が、ローマ法王、日本国天皇陛下に呼びかけて話し合った『地球延命プロジェクト』だった。人口問題は優れて食糧問題でもあり、地球規模で喫緊の課題となっていたのだ。
既にロボット技術と人工知能の急速な発展で、一部を除いて戦争の危機はない。未だにテロだ紛争だとやっているのは中東の一部だが、もはやアメリカもロシアも匙を投げ勝手にしろ状態、調停も仲裁もしなくなってしまった。
コトが事だけに国連などで討議してはそれぞれのエゴ丸出しで大事になってしまう。そこで各国の秘密機関から選ばれた者が検討することになったらしい。まさか中絶を奨励するわけにもいかない。倫理的にも難しい問題を内包しており極秘のプロジェクトが発足したようだ。
誰が、どこで、何を検討しているのかは誰も分からないが、プロジェクトが発足したことは一部マスコミに漏れ、ネットで騒がれた。しかしいつの間にか忘れ去られ2025年になった。
世界の人々はおかしなキャンペーンを目にするようになる。
『恐竜は大きくなり過ぎて滅んだ』『放っておくと人類は恐竜化する』『小さいことはビューティフル』
同時にペットの世界で不思議な事が報告される。大型ペットが育たなくなったのだ、というより大きくならない。大型犬の子犬が親のサイズになる前に成長が止まってしまうのだ。
2030年、衝撃的な統計数字が明らかになった。思春期の子供の身長が5cm縮んだ。それも直近のデータほど急激で、このペースで行くと5年後の人類の平均身長は50cm以上縮みそうだった。
2035年、ある一人のバイオ科学者と称する者がSNSを通じたある告発がネットに流出して大変な騒ぎになった。女性の筆致だった。
『私にはもう耐えられません。何年も悩み苦しみ悩み、自ら命を絶とうとさえしました。このままでは人類は間違った方向に進んでしまいます。そしてもう引き返せない所まで来てしまいました。
ある日、私の研究内容に興味を示したある人がスポンサーに名乗りをあげました。ペットの小型化を模索している、遺伝子レベルでできるようになれば例えば絶滅が危惧される像のような動物も小型化させて救うことができる、という触れ込みでした。
その人はSMCのニシムロ社長と名乗ったのです。ローマ法王庁やアメリカ大統領、果ては皇室とも繋がっているという、今から考えれば胡散臭い人だったのです。
その頃私の研究は動物が内分泌するホルモンを遺伝子レヴェルでコントロールできるのではないか、というところまで来ていました。そこで成長促進ホルモンをある程度抑える遺伝子の配列を試してみたところ、マウスでは良好な実験結果が得られたのです。
ニシムロ社長はその結果を持って突然別の事を口走りました。
現在の食糧危機を乗り越えるには個体×重量がもっとも大きい人類を小型化しなければならない。その生存適正サイズは現在の1/3だ、と。
私の研究がそれとどういう関係があるのか、その時は分からずに研究結果を彼に伝えてしまったのです。彼は直ぐに姿を消し、以後音信不通となりました。
すると2025年頃から大型ペットが大きく育たなくなったのです。私は直ぐにピンときました。おそらくどこかの製薬会社に持ち込んだ彼が暗躍していたに違いありません。その後結果が出たので今度は人類に・・・。
初めて気が付きました。SMCとは『スモール・マン・コミットメント』の事だったのです。
彼が今どこで何をしているのか全くわかりません。彼は嘯くでしょう。「人類を存続させる為にはこれしかない」と。
神の節理に反する事を恐ろしいことに平気でやる人間なのです。
そのようなことで人類の存続を図るとするようなことは許されません。そんなことをするなら滅びた方がマシだとさえ考えます。
どうかあの悪魔を見つけ出し、彼の陰謀を阻止して下さい。』
とんでもない者がいたもんである
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