Sonar Members Club No.36

日: 2016年12月13日

諜報機関SMC (今月のテーマ インテリジェンス)

2016 DEC 13 23:23:53 pm by 西 牟呂雄

 インテリジェンスを単に情報と訳してはだめだ。これは既に多くの識者が指摘しているので私ごときが今更解説する必要はない。
 優れて秘密戦・政治的プロパガンダになり得るのである。
  そこでこの度、長年隠していた我が戦略の一環の一部を開示することにした。憂国の思い矢も楯もたまらず読者の覚醒を促すためである。
 私の組織したSMC(シークレット・マックス・カンパニー)は、国内・海外問わず各種情報を集めてデータ・ベース化して保管している。それは他の諜報機関と同様だが、我々の真骨頂は後方攪乱なのだ。
 あまり手の内をバラすわけにはいかないが、進んでスパイになるふりをして敵にウソばかり流し続け判断を誤らせるカウンター・インテリジェンスが得意なのだ。
 確かにこのブログも虚飾に満ちているが、プロの仕事はこんなものじゃない。
 
 最近でもアメリカ大統領選挙で、ロシアからクリントン陣営へのサイバー攻撃がなされ、一部メールの内容が暴露されてトランプに有利に働いたことが報告されている。逆に直前までヒラリー有利のウソを垂れ流していたのはSMC北米駐在員を中心にした我々の手の者たちだった。
 同じような動きをしていたロシア系の工作員がいた。彼らと我々の諜報員は秘密ネットワークを創り上げ、具体的には民主党の運動員になりすまし『ヒラリー有利』のニセ情報を垂れ流した。
 ここで強調しておきたいが、我々と手を組んだロシア系機関のネットワークとの間に金銭的なやりとりはない。こちらの虎の子の情報を出し先方もそれに値する機密を知らせて目的が同じだったので協力するに至った。

 我々の編み出した手法の一端を紹介しておく。ネガティヴ・ネガティヴ・キャンペーンというものだ。
 実際の秘密戦において、膠着状態は実は悪いものではない。スポンサーはたまらんだろうが、互いの打つ手が効いているかどうかじっくりと確認できるいい機会なのだ。問題はその状態を耐えられる胆力と兵站が続くかどうかの見極めだ。
 安保関連法案が通るか通らないかの瀬戸際に某保守勢力からの要望で
➀反対陣営に人を送り込み国会前で大騒ぎを繰り返し ➁ネットに大量の書き込みをして、あたかも反対の世論が盛り上がっていると思い込ませ、返って健全な保守層をウンザリさせて野党の支持を下げたのはSMCの仕事だった。

 プロであるSMCはオファー金額によってはある種の工作に携わるが、基本は情報の等価交換である。特にSMCの場合、全員が愛国者の集団であるからむやみやたらと引き受けることはしない。金に転ばない傭兵部隊と言ったところだろうか。
 折角の機会であるので現在の工作を一部明らかにしよう。
 北方領土交渉について、目下のところ2島の引渡だけで後は金をむしり取られるだけ、という強烈なネガティヴ・キャンペーンが張られている。そしてそれに対して『もうそれで充分ではないか』と『以ての外の外交敗北だ』の両論が盛んに飛び交っている。これは実は某筋からの依頼と私の愛国的判断から我々が仕掛けている工作だ、とだけ言っておこう。

 ところで、日頃のつきあいでCIAに代表される同業者との情報の共有は常に危険と大変な苦労をしている。なぜなら機密情報は相互対等の原則なので、こちらの出す情報に比例して先方からも同等の内容を得る事ができる。CIAとMI6の関係を見れば一目瞭然。
 その点、残念ながら我々SMCの情報は甚だ見劣りすると言わざるを得ない。ヒューミントのリクルートについても芳しくない。もっと言えば尾行技術・盗聴技術も心許ないこと夥しい。

 念のためであるが当該ブログを掲載しているソナー・メンバーズ・クラブとここでいうSMC(シークレット・マックス・カンパニー)は何の関係も無く、会員メンバーの誰一人として係っている者はいない。

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突然変異的血脈

2016 DEC 13 4:04:05 am by 西 牟呂雄

夢野久作(大正十年)

夢野久作(大正十年)

 怪奇小説『ドグラ・マグラ』を読んだことはお有りだろうか。
 夢野久作が戦前に書いた、実に読後感の悪い小説である。九州帝国大学の精神病科に入院している記憶喪失の男が殺人事件のカギを握っている、という気味の悪いモノで、独白の文体も古く大変に読みづらい。是非、読まないことを勧める。
 ただ、こういう小説を書くような人間の頭脳は常人の及ぶ所ではないだろうと作家には興味があった。
 一方で僕は右翼の思想史を研究しているが、この作家が右翼の巨魁、あの杉山茂丸の息子だということをある本で知った。
 杉山は一代の怪人。帰農した福岡藩士の息子だが、上京して山岡鉄舟の門人となる。その後伊藤博文の暗殺を企てるが失敗して全国を逃げ回った後、頭山満と福岡に帰り例の玄洋社を作った。いわゆる自由民権運動から大アジア主義の理想に燃えて香港・台湾・満洲と縦横無尽に暴れ回り、陸軍・政界・財界に人脈を広げて黒幕となる。
 この人の事跡だけでブログどころか本何冊にもなってしまう。
面白いことに珍しい出会いをして喜ぶ風があったようだ。良書『行雲流水』石山喜八郎の生涯 にこういう記述がある。
『喜八郎は一瞬その場に立ちすくんだ。先方は刺客でも来たのかと思ったらしかった。だがすぐに丸腰なのに気づいてホッとしたようだった。すると奥のソファーに寝ころんでいた人物が「お前達座れ」と声をかけた。それが杉山茂丸だった。・・(中略)・・。こんなことまで初対面に近い若造にしゃべっていいのかと喜八郎は思った。噂のとおりおもしろい人物だった。』
この喜八郎という人も奇人だが、当時は一介の書生である。
 
 誠に不思議な親子というべきだが、この血脈には続きがある。その夢野久作の息子に杉山龍丸というのが出る。陸軍士官学校を卒業し先の大戦に従軍した軍人で兵科は航空。
 兵員輸送船『扶桑丸』でフィリピンに向かう途中で米潜水艦の攻撃を受け漂流。運よく救助されマニラには着いたものの、その後は内地勤務を経てボルネオに赴任した。そこで胸部貫通の重症を負い生死の境目を彷徨って終戦を迎える。とこれだけでも大変な人生なのだがそこで終わらない。
 戦後ふとしたきっかけでインド人と知り合い(それからも色々あって)インドを訪問した際に見たパンジャブ地方の貧困と荒廃に衝撃を受ける。
 その後3万坪とも4万坪ともいわれた祖父の残した農園を売り払い、私財を投げ打って基金を作りインドのユーカリ植樹事業に一生を捧げる。まるで祖父の大アジア主義が乗り移ったかのようだ。国際環境会議の出席の旅費が無く友人に借りたというエピソードも残っている。
 現在パンジャブ地方からパキスタンに至るまでの道路のユーカリ並木とその周辺の耕地は杉山の功績で、インドでは『グリーン・ファーザー』と敬われているそうだ。龍丸が家庭も何も顧みなかったので、息子さんは苦学され学校の先生をされている。

 しかしこのテの特殊なDNAがこの血脈に流れていて、それぞれの代で思想家になったり作家になったり篤志家になったりするのだろう。ウチじゃなくてよかった。

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