Sonar Members Club No.36

月別: 2017年1月

もしも江戸時代が続いていたら

2017 JAN 31 20:20:03 pm by 西 牟呂雄

 僕のような保守派・守旧派は時代の変化に『本当かよ』と疑ってかかる癖がある。最先端を行っているつもりの革新派も30年も過ぎれば古くなってしまう。現在盛んにグローバリズムの終焉と右傾化・内政回帰が言われだすとそれで景気でも悪くなったらどうなるのか心配になる(個人的にはTPP反対でグローバリズムもそろそろと思ってたからどうでもいいが)。
 こういう気質は初めから自己矛盾を抱えていて、直ぐに昔は良かったと言い出すことになりかねない。ボブ・デイランは良かったローリング・ストーンズは良かった、昭和は良かった・・・。
 本当は、ヒッピーがいて学生運動が盛んで組合闘争は激しかった頃は世の中結構殺伐としていた。恐らく懐かしむ人々は自分が若かった日々を否定したくないからそんなことを言っていて、目下のところ人口比率が最も高い団塊組の声が最も大きく聞こえる。
 『三丁目の夕日』が描き出した時代は交通事故が多く、埃っぽく、不便な時代だったと記憶している。
 その前は東京は空襲を受けて焼けた。
 その又前の戦前は良かったかというと、それこそ大正期なんかは平和な時代で白樺派がロマンチックな恋愛小説を書いていたが、当然庶民は貧しく苦しい生活をしていたはず。それでもまァカタギなら余程の悲劇に出くわす以外は普通に暮らした(兵役に取られて戦死した英霊は除く)。

 さかのぼって明治維新はそんなに素晴らしいか。
 京都に行ってみると良く分かるが、江戸期に寺社が保有していた広大な敷地を下級武士上がりの新政府高官が私した。尊皇攘夷と言うが、攘夷なんか途中でどこかに行ってしまって、尊王の方は幕末期の社会常識でさえあった。何が言いたいかというと、社会変革はその都度に本のページをめくるように進むのが望ましく、ひっくり返した後に前時代の資産を分捕りあうようなことは好まない、というのが保守の精神だと言いたいのだ。維新後の凄まじい汚職や、掠め取りまがいの略奪で京都の広大な別荘を作ったのが気に入らない。
 お江戸の時代があのまま続いても近代税制と中央集権(この場合は国軍の創設を意識している)は進み、当たり前のように将軍も大名も溶け込んでしまったと考えている。現に華族制度ができた。
 砲艦外交によってアタフタ開国した印象があるが、丹念に調べていくとどうしてどうして幕府は圧倒的な軍事力を目の当たりにして粘り強く理屈を並べ焦らしに焦らして交渉している。いきなりぶっ放したり切りつけててコテンパンにやられた長州や薩摩に比べれば遥かに国際感覚は上だと思える。
 江戸期は封建制度と鎖国で暗黒時代のように語られるのもいかがなものか。身分制度に苦しんだ人も理不尽な年貢に苦しめられた農民もいただろう。
 だが当時の農業技術では飢饉は世界中でも起こったことであり、身分制度も今日なお形を変えて残っている。均衡社会だった幕藩体制時代を通じておよそ3千万人だった人口が明治期を経て6千万人に増えた事は生産性の上昇で国民が食える状況になったことは確かだ。
 実は江戸期を通じて信州の山間にある村落人口の推移を調査した研究によると、長期に渡って全く変わっていない。実際には間引きが行われていたことが報告されている。だがそれは鎖国のせいじゃない。
 江戸期は前半こそ戦国の名残があったが、社会が安定してくると平和で文化の華が咲く。上は上なりに、下は下なりにその文化に磨きをかけることができた。更にその後半(吉宗以後)には『民を大事にする』といった平和な社会ならではの考え方が広まる。
 一例を挙げる。『無礼打ち』なる行為は時代劇に出て来るようにやたらと武士が農民・町人を切り捨てる権利となっているが、実際は細かく本当にその正当性があるのか審査される。該当しないと見なされれば斬った方は斬首の上御家断絶だ。役所に届出る、証拠品の検分、無礼な行為を立証する証人、全部揃えなければそれも斬首。大体処罰されてしまうため、江戸後期には無礼打ちでお咎めなしは滅多になかった。まぁ大体両成敗で両方とも処罰されてしまうのだ(これが故に忠臣蔵で浅野だけ切腹させられたと評判が悪かった)。それが故に幕末期になるまで抜刀しての斬り合いなんか滅多に見られるものじゃなく、武士も実際に白刃での対峙などすることなく一生を終えた者が殆どだった。

 幕末期には身分制度がガッチリしていたら世に出ることもない連中が藩政・幕政に口が出せるイイ世の中になってきていた。しかし維新後、途端に資産のブン取り合いと汚職まみれになったのはどうしたことか。西郷はそれで頭に来た。
 又、鎖国といっても出島から入って来る海外情勢は瞬く間に江戸にも伝わり情報は良く咀嚼された。ジタバタ感は拭えないものの開国したのは井伊大老で、その後幕府は貿易で大儲け。その独占が気に食わないと強く思ったのが明治維新と言えなくも無い。
 世襲封建主義がよろしくないのはそうかも知れないが、できもしない連中に無理矢理勉強を強いてオチこぼれを作り心を歪ませるより、初めから職業が決まっていて早くからその道に精を出す方が健全な部分はあるのじゃないか(アッ、僕はチンピラでしたけど)。あれこれ勝手に妄想にかられて自分探しの旅などという金と時間の無駄を過ごさなくて済む。
 世襲の統治が気に入らないといっても、今だって大方の人はやりたくも無い政治家は世襲でもしてもらわなければなり手がないか、相当怪しいでしゃばりが当選してしまう。子供の頃から有権者にペコペコして選挙でヘトヘトになる親を見て志を立てる人間の方が、ポッと出のチルドレンやタレント候補よりいいに決まっていると思うのは僕だけかな。その点お江戸の昔は大名でさえアホだったり女狂いがバレるとお家取り潰しになるので回りが必死に庇っていたではないか。今の議員とさして違わない。

 極論すると公武合体くらいで妥協して、内戦なんかやらずに漸進的に改革されるのが望ましかった。逆に言えば明治以後の改革スピードが速すぎたのであの忌まわしい敗戦があったとも考えられる(但しその場合我が国が英米・ロシアの支配を受けなかったかどうかは研究の余地がある)。 

 以下はお江戸のまたその前の豊臣時代が続いていたらどうだったかを想像して、時代順に宝暦年間から平成まで五段階やって遊んだが、やはり結果は同じだった。

宝暦元年 難波(なにわ)の花

万延元年 浪花(なにわ)の華

明治末年 浪速(なにわ)のハナ

昭和元年 ナニワの花盛り

平成28年 大阪オリンピック ナニワの狂い咲き 


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そうせい侯  雑感

漫画ばかり読んでいた

2017 JAN 28 23:23:29 pm by 西 牟呂雄

 今から40年近く前、クソ忙しいペイペイの頃だった。コキ使われておまけに酒ばかり飲んでいたが、その泥酔と二日酔いの狭間で何をしていたかというと恥ずかしいことに漫画ばかり読んでいた。
 マンガ〇〇ー・漫画〇ラ〇・〇〇〇コミック・オリジナル・スペリオール・モーニ〇グ・リイド〇〇ッ〇、たまに少年〇〇〇〇以下3冊とキリがない。少なくとも毎朝何かを買って読みながら通勤した。
 ある日、業界新聞のコラムを読んでいた同僚の女性が顔を上げてジッと僕を見る。何かをコクられるんじゃないだろうかと身構えると、軽蔑に満ちた表情で言うのだ。
「ニシムロさんのことじゃないんですか、このコラム」
 渡された新聞を読むと大体以下のことが書いてあった。『毎朝通勤の始発の電車で良く見かける青年が座る(これは中野駅の東西線の折り返し始発と思われる)。物をわきまえたようにスーツを着こなす若いサラリーマンだが(当時は若かった)手に必ず漫画本を持っていて(ギョッ)読みふけっている。隣に座った時にその内容を目にすると、実にナンセンスでびっくりした(バイオレンス&ギャンブルが中心だったはずだけど)。子供が読むようなバカバカしい物をいい年をした青年が読みふけっているのは見るに耐えない』
 要するにオトナがこれでは将来の日本が心配だ、と言いたいのだ。そりゃそうでしょう。今でも印象に残っている作品はそれは凄いものだったから。
 だが今日では漫画どころか当時の僕よりもイイ年のオッサンがスマホ片手にゲームばかりやっている。これは進化したのか退化したと言うべきなのか。
 ところでその愛読していた漫画が記憶の彼方に飛んでしまう前にチョット思い出しておきたいと思う。
 大雑把に言ってバイオレンス系とギャンブル系を並べてみると。

バイオレンス系

『人間凶器』
 梶原一騎原作のカラテ物。例によって大山倍達がモデルの大元烈山なる名人が率いる空心会の若き空手家、美影義人が主人公。美影は空手の才能はあるのだが、どうしようもなく卑劣で女好き。自分のことしか考えていない最低の男だ。どうも若い頃に梶原一騎の姿が投影されているようで、時代背景も昭和の30~40年代に設定してあったと思う。
 ストーリーはメチャクチャで美影はアメリカに行った後メキシコにまで逃げ出す。挙句の果てにプロレスのリングに上がり、かのミル・マスカラスと対決までしてみせる。面白かったなぁ。

『野望の王国』
 後に「美味しんぼ」でメジャーになった雁谷哲の実にグロテスクな話。暴力団の妾の子である東大生が自分の野望のために次々と人を、兄までも裏切っていく。
 敵は警察官僚・敵対ヤクザ・政治家・フィクサー・宗教教団と強大な力を持っているバケモノばかりが手を代え品を代え出てくる。身長3mの大男や剣山の上で寝る怪物が、製鉄所を爆破したり自衛隊の一部を動員したり。絵もまた不気味で薄気味悪かった。
 主人公はこれでもかこれでもかと危機に陥り次々と人が死ぬ。脇役も怪しげなのばかりで名前がまた強烈。赤寺・銅魔(間だったかな)・大神楽とか。
 どうオチをつけるのかハラハラしながら読んでいたが、主人公がドンになって東大を卒業するところで終わり。多少肩すかしだった。

『まるごし刑事』
 現在も警察OBとして作家活動をしている北芝健の刑事物。まさか実体験ではないだろうが刑事(デカ)がステゴロで暴れまわる一話完結のバイオレンス・アクション。原作者自身も現在は道場主なので臨場感満載。特に相手がヤクザの場合の隠語の使い方がホンモノっぽかった。
 いくら何でもこうはいかないだろう的な話だったが、愛読していた時に作者が警察OBだとは知らなかった。
 出てくる女性の絵が太目だったところがミョーに色っぽい。
 ところで原作者の経歴には疑問が出ていることも申し添えておく。警察学校時代は正義感の強い人だったのは事実らしい。

ギャンブル系

『麻雀新撰組』
 一話完結の麻雀漫画で、かの阿佐田哲也が主催し麻雀雑誌にコラムを載せた麻雀新撰組をベースに劇画作家の小池一夫が書いた。オリジナルの小説からのネタもあるにはあるが実際は全く別の作品である。
 阿佐田哲也を思わせる局長と一見堅気風オヤジに学生っぽい若手のトリオで、大勝負をしたりイカサマを見破ったりする。
 タグのつけ方が秀逸だった。覚えているのは「賭博船血風録」とか「牌帰る」「麻雀未亡人クラブ」だったかな。
 こういうのを読むと自分が強くなったような錯覚を起こし、実際に卓を囲んでは負けていたものだった。

『パチンカー人別帳』
 「釘師サブやん」や「包丁人味平」の原作者でパチンコメーカー西陣に勤務経験のある牛次郎の原作。流れのパチプロが秘打を引っ提げて全国を巡る一話完結型の漫画。
 内容は大体女性がイザコザに巻き込まれているところに出くわしてその女性を助け、何故かパチンコで勝負になるという荒唐無稽なストーリー。
 その主人公の名前と繰り出す秘打が(もちろんあり得ない技だったが)何といったか記憶にない。たしか巻枝?だったか、技の方は「ナントカ走り」とか「カントカ落し」だったか。

 他に少年誌系があって、これは・・・・イヤ、やめておこう。

 こんなものばかり読んでいれば人間はこんなになってしまうのですぞ、お若い方々。

『職業としての小説家』 読後感

酷な出題


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大統領がスパイだったら・・(今月のテーマ インテリジェンス)

2017 JAN 25 21:21:29 pm by 西 牟呂雄

 いよいよトランプ大統領が誕生した。

 今後様々な歴史的転換点に立っていると思うと感慨深いが、悪い方に転がらないように目を光らせたいとも思う。
 巷間トランプ大統領と情報機関が対立している報道は、さもありなん。
 ロシアのサイバー攻撃はあったかも知れないが、その前のヒラリー私用メールのバレ方だってリークじゃないのか。要するにFBIでもCIAでも国民を管理するのと同じく大統領も管理しているはずだ。
 大統領と情報機関の対立は何も初めてではない。フーバー長官は歴代大統領のスキャンダルを握っていた。民主主義で選ばれた大統領は完全じゃない。
 隣の国でもそうだ。あの女性シャーマンが廃棄しろと言ったパソコンから機密文書がウジャウジャ出て来たって?誰がそれを捨てずにパスワードまで知って読んで公表に至ったと言うのかね、そこは相当に怪しい。その後の盛り上がりはキタの煽動じゃないかと疑われている。
 それどころか自殺した元大統領もアメリカまで行って『アメリカに日本を共通の仮想敵国に規定しよう』と本当に提案してアメリカにバカにされたが、工作されてたんじゃないだろうな。
 
 先頃注目を集めていたヴェノナ文書では、第二次世界大戦直前にアメリカ政府内にコミンテルンのスパイ網が構築されていた事が明らかになっている。ルーズベルト大統領への工作がなされたかも知れない。事実ハル・ノートの元となるモーゲンソー私案は後にソ連のスパイだったことが発覚したハリー・ホワイトが作成した(不審死、自殺説も)。この奇怪な文書によれば盧溝橋事件もそれなりにコミンテルンの関与が示唆してあるとか。国民党右派の秘密組織CC団幹部、陳立夫は帝国陸軍内部にソ蓮のスパイがいたはずだと主張している。
 トランプがロシアを訪問した際にハニー・トラップにかかったという話もプーチンまでがムキになって否定するところが返って・・・。
 ハニトラに関してはこっちだって人のことなんか言えない。橋本龍太郎が中国の罠にコロッと引っかかったのは広く知られる話だし、療養中の谷垣禎一元幹事長もそのテの噂があった。谷垣禎一なんて汪兆銘政府の樹立工作をしていた梅機関・影佐大佐の孫のくせに脇が甘すぎる。
 まだあるぞ、未だに懲りていないようなハト!これが自衛隊の最高司令官だったと思うと、提題の『スパイだったら』も冗談じゃなくなりそうで今更ながら恐い。

 その点プーチンはスパイを使う方だったから工作を受けてはいないだろう。が一方で、メルケルなんかはヤバいから盗聴までしたのでは、習近平の紅を塗ったような口元もアヤシい、ブリグジットはフリーメーソンの陰謀だ、トランプはユダヤに操られている、バチカンだって黙ってないぞ、イスラム教ワッハーブ派のサウジはISILを作った、瀬島龍三はソ連のエージェントだった、ロックフェラー一族がキッシンジャーを操って世界を支配・・・・、民主主義で選んだ政治家がもし操られていたらどーすればいいんだ。もう何が何だかわからないから天皇陛下バンザーイ!

 ところでトランプ大統領がTPP離脱だ何だと大統領令にサインをしまくっているが日本がオタオタすることはない。TPPなんかは元々やらなくてもいいと私は考えている(二国間協定にはもっと反対)。
 トランプ大統領は矛盾に満ちている。
 あれだけ国内世論が割れていてマスコミとも不毛な戦いを続けるだろう。『対日カード(おそらく自動車)』を切る前にかなりエネルギーを使うはずだから、安倍総理も急いで会わなくてもいい。もう少し疲れてから会って安保の話だけするので十分いいじゃないか。 

諜報機関SMC (今月のテーマ インテリジェンス)

新春架空座談会 (今月のテーマ インテリジェンス)


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伊豆の下田に 本年初航海

2017 JAN 23 22:22:50 pm by 西 牟呂雄

 知り合いのヨットに乗せて貰って下田まで。沼津から熱海まで来ていた船が帰路下田で一泊するから付き合わないか、というのでイソイソと行ってきた。
 ベテラン・クルーが7人もいたのでゲストの僕は何もやらなくていい。それで寒いから焼酎のお湯割りをガバガバ飲んだところ、朝から酔っ払って途中からキャビンで熟睡してしまった。クルージングも何もない。風は前日の雪まがいの荒天が嘘のように晴れ上がって風もない。
 通常この航路は伊豆半島と大島の間で複雑な海流の流れが入り組み、また打ち付けた波の反射でやっかいな三角波が起きるのだがこの日は楽だった(といっても寝ていたのだが)。
 伊豆半島は地図上もギザギザだが、海の中もあまり陸の近くをいくわけにはいかない。伊東でかつて海底噴火があったこともある。従ってあのデカい大島の外側を回ってから利島の先をかわして下田を目指す。
 河口のハーバーに入港した時はまだ日が高かった。その日は銭湯(温泉)にジャブジャブ浸かって更に飲んだ。
 
 で、翌日はというと物凄い風でズーッと沖の方まで白波が立っていて、さすがのクルーも出港するかどうか迷っていたが結局行ってしまった。神子元島は船の難所で有名なのだが、まァ大丈夫だろう。
 考えてみれば下田は入港しても飲みに行くのとお風呂に行く以外上陸したことなんかなかったのでブラッと観光してみようか。
 下田は日米和親条約で函館と共に開港されたが、幕府が黒船にビビって江戸から遠いという理由だけで選ばれたのではない。江戸時代になって廻船輸送が上方から江戸に向かうようになると重要な港として発展した歴史があるのだ。地図を見てもらうとわかるが、遠州灘を突っ切って相模灘に入る丁度境目に当たるのが下田だ。当時の航海技術では遠州灘と風向きが変わるために一気に江戸湾まで向かうのは危険で、下田で風待ちをするのが普通だった。
 回船(定期船)が年貢米や特産品を運ぶようになると必ず下田の御番所の調べを受ける海の関所となり、入り鉄砲・出女を取り締るようになる。出船入船三千艘という賑わいを見せていた。その後御番所が浦賀に移され街は寂れて行くが風待ちの港湾機能は残っており(大島の波浮港は幕末まで港湾機能はない)即ちインフラがあったのだ。了仙寺

 さて、色々大変なことが起こり日米和親条約が結ばれた。了仙寺は条約締結の場となる。この頃は今日のように会議場のようなものはないから、大勢の人を収容できる場所はお寺しかないのだった。
 ペリー二度目の来日で下田にやって来ると下田条約の下アメリカ人は下田の街中を自由に歩きまわれるようになる。つまり初めてアメリカ人が一般の日本人と接触することになったのだ。
 ペリー艦隊はバラバラにやって来て一時函館の測量に入ったりしたので、平均25日最長70日間滞在した。デモンストレーションで上陸した時は大砲四門を揚陸し、将兵とともに軍楽隊まで上陸した。了仙寺境内で演奏をしたというのだが、何を奏でたのだろう。
 米水兵は魚を捕ったり餅つきをしたり、それなりに交流めいたものがあったことが伺える。こういうことに妙味を示すのはまず子供だったろう。
 御番所が浦賀に移って寂れたとはいえ船宿は少し残っていたが、黒船がいて日本の船は寄り付かない。船宿のお茶引きは米兵を引っ張り込んではカモにもしたらしい。通貨は何だったのか、両替機能が完備していなければ、本当に身ぐるみ剥いだのかもしれない。
 その半年後にはすぐさまプチャーチン率いるロシアも開港された下田に来るのだが、実にタイミング悪く安政東海地震が起きて下田は津波をかぶりロシア艦「ディアナ」号が沈没してしまう。半年後にはハリスがやって来て、アメリカ領事館が玉泉寺にできたことを考えると、アメリカにツキがあったのかとも思えてくる。
 ところで船を失ったプチャーチンは地元の船大工を指導し帆船「ヘダ号」を建造して帰国した。ヘダとは西伊豆の戸田のことだろうが、日本の造船技術は大した物である。
 そしてこの時点での国境は千島列島では択捉島と得撫島の間、樺太では国境を設けず日本人とアイヌ人の居住地は日本領とする。これは今後の北方領土交渉の参考になりそうだ、歴史に学びたい。kaigann

 歩き回るのは趣味じゃない。タクシーで『近くの砂浜があるところに行って下さい』と言ったらエッという顔をされたが、10分程走って広い海岸に連れて行ってくれた。
 親切な人で『30分位だったらまた来てあげるよ』とありがたい。
 去年13時間航海して行った神津島が見えたので撮ってみたが、良く写らない。
 きょうは特急踊り子で3時間で家に帰る・・・。

 ところで出港して沼津を目指すはずの船は、あまりの強風に難所の神子元島をかわすことが危険だと判断し、サッサと下田に帰ってきたそうである。

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今はもう秋 港で思ったこと

日向ぼっことなったヨット

日本の仮面は楽し

2017 JAN 21 11:11:35 am by 西 牟呂雄

 「ゆけ!ゆけ!タイガー。タイガーマスク」言わずと知れたプロレス漫画の傑作、その後アニメにもなり遂に実際にリングに上がったタイガーマスクの主題歌をご記憶か。その影響は大きく孤児院にランドセルを寄付し続けた篤志家がタイガーの本名、伊達直人を名乗った事もあった。最近素顔を現し、初代タイガーの主催するリングでそのヴェールを脱いだが、僕よりも若い好青年だった。

 プロレスはともかく、仮面にはえもいわれぬ魅力がある。日本では能に代表される洗練された仮面文化があり、ひいては歌舞伎の隈取のように今で言うペインティングまで残されている。いうなればコスプレの走りのような気がして楽しい。
 おかめ・ひょっとこ等ポピュラーな物の他にも邪気を祓う意味で鬼の仮面を付けた者が退散させられる伝承芸も沢山あり、『鬼やらい』『追儺(ついな)』が知られている。これらは大陸から来た風習のようで論語にも記述がある。論語と言えば二千年前になってしまうが、日本に土着して長い年月を経ると日本的というか多少ユーモラスなものに変わって行った。

なまはげ

「お~~!ウォ~~!わり~こはいねが~」
「お~~!なぐごはいね~が~」
 秋田男鹿のなまはげである。
 独特の低い声で子供を追い立てる。

 これをやったことのある人に話を聞いたことがある。
 大体2人で組んで行くと、子供を追いまわすとすぐ家の主人が正装正座で『なまはげ様、この子等も去年は随分わりかったですが、最近はずいぶんよくなりまして、ササッこちらへ』と言って酒と肴を進めてくれる。そしてガッと一杯呑みながら『そ~が~、いいごになっだか~』と一口ご馳走になってまた
「お~~!ウォ~~!」
「お~~!」
 と言いながら次の家に向かう、一日やるとベロンベロンに酔っ払うそうだ。
 最近は少子化・高齢化でお年寄り夫婦だけの家が多いが、そういう家にも”なまはげ”は訊ねて行って『ジイサマはわりーごとしてねがー』とやっているそうだ。これは微笑ましい。第一ウジャウジャと長居しないのが年寄り向きだ。

 こういう無形異文化風習は東北の一部が有名だが、他にはないかと探すとたくさんあった。

トシドン

トシドン

 
 全部紹介できないので、なまはげのように『大晦日に来る』『子供にからむ』で絞り込むと鹿児島の島嶼部である下甑島(甑島列島)のトシドンというのがそうだ。鹿児島では人のことを”〇◎ドン”と呼ぶから”歳ドン”かなと思われる。
 やはり家々を訪ねては今年の悪さをあげつらって、こちらはご馳走になるのではなくお餅をこどもの背中に乗せてあげる。
 この仮面は紙、衣装はシュロの木の皮で毎年製作しては燃やしてしまうのだとか。伝承によればトシドンは神様で大晦日の夜に首切れ馬に乗ってやって来るという。ちょっと恐いが雰囲気は南方系の感じが漂っている。
 人口減により存続が危ぶまれているらしいが、神聖な行事のため観光化をためらっている。ナンならボランティアでやりに行きたいくらいだ。

ラダックのチャム

ラダックのチャム

 双方やっていることは似ているがルーツに関しては違うかもしれない。
 これはインド北部、中国との国境に近いラダックという所のお祭。
 宗教行事だが場所柄チベット仏教で、寺の僧侶が仮面を付けて踊るチャムである。
 印象的にはここから大陸を経て”なまはげ”系の仮面となって伝播したという想像が掻き立てられる。

ドゴン族の仮面

ドゴン族の仮面

 一方『トシドン』は南方系ではないかと当たりをつけて検索すると東南アジアにかけて至る所にあって、とうとうアフリカの西側に到達してしまった。
 マリ共和国の断崖に穴居するドゴン族の仮面舞踏である。
 いくら何でもここから伝播したとは考えられないが、トシドンとの類似が感じられてカワイイ。
 ただしこの舞踏は戦いのための踊りのようだ。

 これがヨーロッパになるとカーニバル用の仮面もあるにはあるが、一般的には『マスク』の趣で、ハッカー集団アノニマスのお面なんかは気持ち悪い。”鉄仮面”なんかも暗い印象であり、”仮面舞踏会”となると何やら淫靡な感じで好きになれない。
 どなたかもっと明るい仮面を御存知の方にご教示いただけないか。

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にっ似ている

ジミー・スヌーカの訃報

2017 JAN 18 21:21:00 pm by 西 牟呂雄

 「スーパーフライ」の愛称で大活躍したプロレスラーのジミー・スヌーカが亡くなった。日本にも80年代から度々来日し、あのブルーザー・ブロディと組んで全日本の世界最強タッグ決定リーグ戦で馬場・鶴田チームやファンクスを破って優勝した。又、躍動感溢れる立体的なレスリングでリッキー・スティンボード等と好ファイトを繰り広げ、僕は大ファンだった。yjimage[2]

 この人はフィジー出身、ハワイでボディ・ビルをやっていた後に業界入りした。
 当初はインディアン・ギミックのキャラクターをしたりしていたが、次第に頭角を現しジミー・スヌーカを名乗る。ちなみに本名はジェームス・ライアーである。
 
 フライは英語ではハエのことだからルチャのような飛んだり跳ねたりの軽量ファイターかと思ったら185cm・110kgの堂々たる体躯である。
 改めて知ったがスーパー・フライは今日では Superfly と綴り、アメリカでは「凄い」とか「素晴らしい」という意味に使われている。他にも日本では「飛獣」などというオドロオドロしい言い方がされたが馴染まなかった。
 それよりも日本テレビの倉持アナウンサー(多分ね)が発した「褐色のアポロ」の方がシビれましたね、いいでしょ。

 

タミーナ

タミーナ

 2015年には以前の交際相手の不審死に関して、第三級殺人で告発された。ところが本人は末期の胃がんでホスピスに入院しており裁判継続の能力が無いと判断された。
 同タイプのダイナマイト・キッドも施設に入っているし、つくづく昭和が遠のいた感がある。
 例によって娘のタミーナ・スヌーカもプロレスラー、ディーヴァとして活躍している。

 カーティス・メイフィールドの名曲「スーパーフライ」で弔意を示したい。

10.21横浜文化体育館

スポーツを科学の目で見る (プロレスその1)

スポーツを科学の目で見る (プロレスその2)

心に残るプロレスの名言 全日本編

リングネーム・中継の傑作

訃報 ダスティー・ローデス アメリカン・ドリーム

心優しい主夫 スタン・ハンセン

昭和プロレスの残像 (祝 馳浩文科大臣)

ドリー・ファンク・ジュニアが出たぁ


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還暦過ぎボーダーが行く

2017 JAN 16 21:21:33 pm by 西 牟呂雄

 今年もスノボーができるだろうか。去年の最後に滑った時に膝に違和感を感じてビビッてから、一体幾つまで出来るのか不安になったものだった。
 先週は大雪で普通は喜んで行くのだろうが、オジサンはカラッと晴れた日にしかやらない。第一ノーマル・タイヤだからゲレンデまで行けない。

 例によっての流行遅れウェアに身を固めスックと山頂に立つと、西側は開けているが東に見えるはずの富士山は分厚い雲に覆われて全然見えない。おまけに粉雪が舞っていて早くも帰りが心配になった。
 恐る恐る滑り出してみるとやはり体が硬い。寒いので降雪が溶けて固まるガリガリ感がなく雪質はまあまあ。ゲレンデには流行のナンチャッテモーグル・コースがしつらえてあったがオジサンはパス。
 緩斜面をしばらく滑ってそろそろいいかと上級者コースに行く、全然ダメだった。確実に筋力が落ちている。
 具体的に言えば踏み止まる力、踵や爪先でグッと抑え込むような力が落ちるのだ。これはボーダーにとって致命的だ、泣ける。そして何年振りかで転倒までした。小さな凹凸に反応する反射神経が鈍くなってもいる。
 この年で骨折でもしたら直りも遅いだろうし、肝臓やら心臓やらそこらじゅう悪い所が表ざたになって出てこられないかも知れない。

遠くに人がパラパラ

 すると、いい具合にスクールの一団がいる。この集団の後ろからついていくと、オォッちょうどいい具合。
 子供は軽いからそんなに加速度がつかないのでスルスルと滑っていく。重心が低いのでなかなか転ばない。学童前か小学校1年生くらいだろう。ペースもゆっくりだから疲れない。
 ということはオレ(還暦過ぎ)の体力は10歳以下か?
 断じてそんなことはない!せめて12才くらいはあるだろうに。しかしこちらはこれから落ちる一方なのに対しチビ共は上がってくるのか。せめてあと五年はどうか・・・。                                                                                                                              
 翌日全身が痛くて・・・。子供はこうではなかろう。

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最後の将軍と尾張藩主 Ⅱ

2017 JAN 15 3:03:36 am by 西 牟呂雄

徳川慶喜(よしのぶ)と徳川慶勝(よしかつ)没後対談

維新後の慶喜

維新後の慶喜 趣味の狩猟姿を撮らせた

徳川慶勝(以下 尾張)「上様。お久しゅう御座います」
徳川慶喜(以下 将軍)「尾張殿か。息災にしておるか」
尾張「こちらに来て130年でしょうか」
将軍「そちは余より30年ほど早かったのう」
尾張「色々と気苦労しましたので」
将軍「気苦労ならこちらも負けておらぬ。なにしろ徳川を終わらせたのだから」
尾張「大政奉還の頃の上様は全身に英気が満ちており溌剌とされておいででした」
将軍「余もあの頃が一番気力が充実していた」
尾張「最初の長州征伐の後、上様に上奏した折はひどく勘気を賜りました」
将軍「赦せ。余もヤル気満々であったから、話し合いで決着をつけたのが面白うなかった。あれ以来そちは余を避けるようになったな。鳥羽伏見の時も京都を動かなかった」
尾張「(いやな顔をして)まさか上様がすぐに江戸に帰られるとは思いもよらず、薩長の先遣隊を鎧袖一触で蹴散らされるとばかり朗報を待ち望んでおりました」
将軍「余は錦旗が揚がったのでもはや時代が変わったのだと考えたのだ」
尾張「それならばせめて弟達も賊軍と言われぬように扱っていただきたく、いや畏れ多い事を申しまして」
将軍「弟とは余の後に一橋を継いだ茂栄(もちはる)のことか」
尾張「お戯れを。その下の会津と桑名の弟でござる」
将軍「(涼しい顔で)容保と定敬には気の毒であった。あれは家臣共が悪かったのだ。それで江戸開城の後までも戦に追い込まれてしまった。余とて官軍が尾張を素通りはおろか、江戸まで無傷で来るとは思いもよらなんだ。そちの斡旋でもあったのか」
尾張「さて何の事でしょうや。各藩勤王の志ことのほど厚く」
将軍「もうよい。ところでそちも写真をやっていたであろう。余も生前いささか嗜んでおった」
尾張「おそれながら、上様のは毎日の記録でございましょう。わたくしは絵心をもって格別の思いを込めました」
将軍「余も晩年は腕を上げた」
尾張「何やら東京の写真専門本に採用されなかったとか、いや失礼つかまつります」
将軍「(ムッとして)そこへ直れ!・・・・いや二人ともこちらに来ておった。もはや時代が違う。それはそうと弟達は息災であったのか」
尾張「生前は四人で銀座で歓談したものです」
将軍「オォ!今度その席に余も呼んではくれぬか」
尾張「・・・・その儀はヒラに・・・・」
将軍「ムッ・・・・その方等、成仏いたせ」(もう全員鬼籍に入っている)

右から 尾張徳川慶勝 一橋茂栄 会津松平容保 桑名松平定敬

右から 尾張徳川慶勝 一橋茂栄 会津松平容保 桑名松平定敬

最後の将軍と尾張藩主 Ⅰ


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最後の将軍と尾張藩主 Ⅰ

2017 JAN 14 15:15:16 pm by 西 牟呂雄

 前者は将軍徳川慶喜(よしのぶ)、後者は尾張藩主徳川慶勝(よしかつ)。二人は母方の従兄弟同士でもあった。 

 尾張徳川家は御三家筆頭で藩祖は家康の九男徳川義直である。この人物は実に真面目なゴリゴリオヤジで、将軍職を継いだ三代家光にとっては何かとうるさい存在だった。尾張柳生の新陰流を継承するような武闘派で、家光三十歳の時に病に臥せった際には大軍を率いて上京するという事をしでかし家光を慌てさせる。
 以降尾張家は何かと将軍家と同格であるという家風になり、また義直の強烈な尊王の気質を継承していく。これは幕末の重要なファクターとなる。
 八代目将軍吉宗と七代藩主宗春は同時代だが、将軍が享保の改革で質素・倹約をしている時に名古屋では大っぴらに規制緩和を奨励する(後に少し改めはしたが)。折りしも水戸藩の大日本史出版問題で幕府と朝廷が対立を深める中で尊王が藩是の宗春はとうとう蟄居謹慎させられる。宗春はわざと朝鮮通信使の格好を真似したり、白い牛に跨ってウロウロしてみせたり、兎角目障りだったのだろう。面白い人なんだが。
 その後、いやがらせのように将軍家から養子を押し付けられたりしていたが、幕末の時代に名古屋系の高須松平家から慶勝が藩主となる。悪い時に藩主になったとしか言いようがない。
 時代が時代だけに藩祖伝来の尊皇攘夷主義者として開国を指導した井伊直弼と対立し直ぐに蟄居謹慎。ところが井伊が暗殺されると復活する。
 ここから長州の大暴れが始まり目まぐるしく情勢が二転三転するのはご案内の通り。何と慶勝は第一次長州征伐の征長総督になるが、征長軍全権を委任された参謀格はあの西郷吉之助である(この時点で長州は朝敵)。その後スッタモンダの挙句に第二次長州征伐の途中将軍・家茂が大坂城で薨去、従兄弟の一橋慶喜が十五代将軍になるという巡りあわせだ。

 最後の将軍は図抜けて頭が切れたことで知られる。朝廷に対し怒る・拗ねる・開き直る、といった腹芸をしてみせ、ついに大政奉還の大博打を打つような胆力も備わっていた。既に開国に舵は切られており攘夷もクソもない。現に貿易を通じて幕府は大儲けしていた。
 ところがこの将軍、頭が切れすぎて感情の起伏が制御できなかったと思われる。極めて饒舌だったとされるが、相手を見下して追い詰めるように論破してしまうのだろう。
 更に酒癖は悪い。中川宮邸に夜半泥酔・帯刀して殴りこみをかけるような振る舞いに及ぶ。筆者も酒乱のケがあるので良く分かるが、酔っ払うと物凄く早口になって喋りまくり翌日記憶を失っていたりすると胸クソが悪くなる。あの酔った感じは脳が考えているのじゃなくて舌が考えているのじゃないかと思えるほどだ。
 第二次長州征伐に行こうと言い出した時は兵隊用の排膿を背負ってはしゃぎまくっている姿が目撃されているが、鳥羽伏見のしょっぱなで押されるとドーンと落ち込む。挙句にコッソリ江戸に逃げ出すのだが、その時に無理矢理連れていかれた会津の松平容保と桑名の松平定敬は何と徳川慶勝の実弟達なのだ。
 更にバカバカしいことに幕軍がいなくなって開城された大阪城の城受け取りに行かされたのは慶勝という皮肉なことに。その段階で京都にいた慶勝は既に討幕の腹を固めたのか、この間の慶勝の心の葛藤たるや凄まじいものがあっただろう、藩是の尊王か宗家への忠誠か。
 実は第一次長州征伐の際にほぼ話し合いで納めた長州の措置が寛大すぎるとして慶喜に非難されたようで、慶喜に含む所があったのではないかと推測している。
 官軍は尾張藩を素通りどころか江戸まで全く戦闘なしに通過するが、その際慶勝が街道諸藩・寺社に『抵抗せずに通すように』という趣旨の所感を数百通も出していたからだと言われている(現物が残っている)。
 江戸は無血開城され、その腹いせのように弟の容保・定敬はとんでもない目に会う。更に慶喜が将軍になった後の一ツ橋家を継いだのはこれまた慶勝の弟、徳川茂徳というオマケもついている(この人は異母弟だから慶喜の従兄弟ではない。慶勝が安政の大獄で謹慎だったときには尾張藩主になっていた)。

 慶喜と慶勝のなんとも言えない運命の皮肉である。
 慶喜は若い頃にヒマに任せて絵画に勤しむような趣味人のところもあり、維新後駿府に行ってからは狩猟・写真に油絵やサイクリング等も楽しみ興味の赴くままに暮らした。地元の人々からも慕われていたそうである。その後貴族院議員にもなるが、政治的には何もしなかった。
 実は手裏剣の達人でもあった。
 一方の慶勝も写真には一家言あるほど熱中した。撮影から現像まで様々な薬品の調合なども一人でやり、今日そのメモが残されている。いわゆる理系の真面目な人だったと推察する。
 大雑把にいうと、共に凝り性なのだが慶喜は今で言う文系、慶勝は理系の頭脳だったのかと思う。次回は二人を対談させて心の奥を覗いてみたい。
 それでなくとも徳川は多士済々だ 徳川奇人伝
 尾張徳川は前述の通り、御三家筆頭ながら遂に一人も将軍を出せなかった。

最後の将軍と尾張藩主 Ⅱ

慶喜の手裏剣

徳川 奇人伝(今月のテーマ 列伝)


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新春架空座談会 (今月のテーマ インテリジェンス)

2017 JAN 12 17:17:45 pm by 西 牟呂雄

「司会を務めるニシムロです(以下『西』)。明けましておめでとうございます。本日はそれぞれ専門の違うインテリジェンスの大家の皆さんにお集りまして2017年を考えていただこうという企画です。まず自己紹介をお願いします。」
「名前はご勘弁を(笑)。アメリカ人ですのでAでお願いします。専門を強いて言えばハッキングです」
「それでは私は英国人ですからBですね。私はヒューミントが主です」
「中国人です、Cです。東アジアが担当で主に対日工作に従事しています」
「ドイツ人、従ってD。専門はロシアだ」
西「昨年世界は大きく動きました。皆様もそれぞれの分野で関わられたのでしょうが、ここで申上げておきたいのはどの方も、そして勿論私も愛国者だということです。いかがでしょうか。」
B「スパイと言ってしまうと007のイメージが強すぎますが、彼も含めて国家への忠誠心は高いのが一般的です。」
D「所属する機関にもよるがね。ロイァリティは高くなければ勤まらない」
A「それは二重スパイにも言えますね。ISにリクルートされた格好で潜入するエージェントなんか我が国への忠誠心が最も強い」
C「そうあらねば敵と味方の峻別ができないでしょう」
西「さて、昨年大きな話題になったパナマ文書については今後どういった展開を見せるのでしょうか」
B「あんなものもう展開も何もないですよ。(Aを見ながら)使い切った情報を表に出しての警告でしょう」
A「『使い切った情報』の前に、散々稼いだ、が付くんじゃないですか。タックス・ヘイブンはほとんどBさんの国の領土ですな」
C「(やはりAを見て)それより大物の名前が出なかった国を疑うのがこの業界では普通じゃないですか」
A「言いたいことは分かるが、諸刃の刃ですよ。Cさんの国で無期懲役になった令計画(リン・ジーファ)の弟が我が国でペラペラ喋ってるそうじゃないですか」
C「あれがいくら喋ってもどうってことありませんよ。幹部の腐敗についてバラしているのは知ってますが、既にAさん達が知っていることばかりでしょう。この業界の取引材料にはなりませんね」
西「ペラペラで思い出しましたがモスクワにいるスノーデンはどうしているんですかね」
D「あれこそ個人情報の流出程度の内容ばかりでしょう。それよりプーチンは二重スパイの疑いを強く持っていて彼を信用していない」
B「プーチンはこの業界の人間ですよ。あんなに有名になって映画にもなるような奴を使うはずがない」
西「しかしヒラリー陣営へのサイバー攻撃何かには役に立ったのではないですか」
A「チャンチャラおかしいよ。あいつが亡命した時点でセキュリティ・システムは既に変更済みです」
西「そういうものですか」
D「そういうものですよ。サイバー空間は既に日常的に『戦闘モード』ですからね」
西「するとAさんなんかはISとも戦っているということですか」
A「詳細は申上げられない。中東の情勢は複雑で一言では語りつくせませんが、例えばハッカー集団『アノニマス』は既にサイバー空間上で宣戦布告しています。事実ISのリクルート能力は落ちていますから。」
C「我々はサイバー空間どころか現実に防衛を強化せざるを得ません。ウィグル族にもIS戦闘員がいて帰国し始めている」
西「実際に防諜されているんですか」
C「対テロという意味では勿論やってます。ただヒューミントに関しては遅れていると言わざるを得ませんね。彼らは恐ろしく口が固い」
D「対イスラムという意味ではヨーロッパもロシアも何度も裏をかかれているので強硬になる。世論もそれを後押しします。予算が跳ね上がった」
西「北朝鮮は皆さんの対象ですか」
A「あの国はIT化が遅れすぎていてハッキングしてもサイバー攻撃しても全く効き目がありません」
C「ヒューミントについても同様ですね。物凄い密告社会になっていて直ぐに告発されてしまう。スパイ網が構築できない」
B「以前は在日からのルートがあったんですが、安部政権になってからガラリと変わりましたね。」
D「ロシア当局も頭を抱えている。ただ制裁は少しづつ堪えてきていることは確かだ。ところが朴槿恵があんなことになってしまって今は盛んに対南工作をしてる」
B「そういう時こそエージェント確保のチャンスなのだが。Cさん金正男の身辺はどうですか」
C「言える訳ないでしょう(笑)。健康であるとだけ明言します」
西「金正男がキーマンなんですか」
C「ニシムロさん、そのアタリの情報には近づかない方がいいですよ。あなたはとっくにマークされています(マカオの怪人)。」
西「えっそうなんですか。」
A「あんまりこの業界をナメてかからない方がいい。自分がエージェントに仕立て上げられている事に気が付かない人は多い。」
西「でもハニー・トラップなんかあった事ないですし」
D「それはあなたが重要人物じゃないからです。ロシア関係をウロチョロしたことも我々とっくに知っている」
西「・・・・。それでは今年のトランプ大統領就任で皆さん方がもっとも注目しているインテリジェンス・エリアはどこでしょうか。お一人づつお願いします」
A「イスラエルですね。イランとの核の妥協を物凄く怒ってます。トランプ側に猛烈なロビイングするでしょうから結果がおもわしくなければ先制攻撃ぐらいしかねません」
B「Cさんの前でナンですが中国です。トランプの強硬発言にピリピリしてますよ。習近平は経済がダウンして反党運動が起きるのにビビッてます」
C「私はむしろ日本です。安倍総理がプーチンとトランプを手玉にとるんじゃないかとインテリジェンスを研ぎすませています」
D「仕事柄ロシアだな。EUが潰れかけているのをプーチンが笑いを噛み殺して見ているからね。具体的にはバルト三国とウクライナは相当危ない」
西「本日はどうもありがとうございました。平和の為に今後ともよろしくお願いいたします。そして仕事柄くれぐれも身辺にご注意ください」

そしてインテリジェンス業界の者は普段は目立たないように行動し、質素に暮らすのだった。

本当だろうか 暗殺‼️

マカオの怪人

諜報機関SMC (今月のテーマ インテリジェンス)

大統領がスパイだったら・・(今月のテーマ インテリジェンス)


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