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忘れがたいワル(サラリーマン編)

 世の中には『これでよく破滅したり捕まったりしないもんだ』と感心させられる輩がいる。

 これから話すのもその中の一人で忘れ難い人物だ。中背のがっしりした体型にドラエモンを思わせるマスク、決してイケメンではないが人懐こい顔をしていた。
 実に有能で実務能力に長けた男で、仕事は良くでる商社マン。体力も抜群のタフなネゴシエータであった。神奈川県の某高校では野球部で、桐蔭学園には負けたが一応甲子園を目指して練習に明け暮れたという。
 更にギターが上手く、僕は一度バンドを組んであまりの技量の高さに舌を巻いた。編曲もこなしてくれて各パートの譜面をサーッと書いてしまう。自分で編成したバンドでは玄人受けする凝った曲をレパートリーにしていた。
 こいつはしかし凄腕のワル。特に女癖が悪かった。
 何でそんなにモテるのか誰にも分からない。しかし現在の言い方ではフェロモン全開とでもいうのかいつでもイイ女が周りにいて、より取り見取りのよう状態なのだ。僕とは趣味が全く違うので、女性問題で睨みあうということにはならない。アッ女性蔑視という話じゃなくて恋愛の話ですから。可憐な感じの女性が好みだった。
 いまから考えると、彼は自分のような人間に興味を持つタイプの女性を瞬時に見分けることができていたようだ(僕には彼が魅力的とは全く思えなかったが)。これも一種の才能なのだろう、要するにモテまくる。
 商社マンをやっていたから忙しかっただろうに。結婚を機に、すでに相当の修羅場をくぐっていたから、少しはおとなしくなるかと思ったが全くそうならなかった。
 当時は僕もサラリーマンで互いに忙しかったから待ち合わせは六本木の店で夜中の12時といった具合。そのまま朝まで飲んで出勤したり、サウナに泊まったりもしていた。おかげでその後こちらは体を壊し(急性膵炎)入院する騒ぎを起こしてしまった。
 退院してきて会ってみると、なんと同時期に奴も大ピンチに陥っていて夜も眠れない状態だったとか。
 それ以来奴は『共振の法則』を発見したと言い、自分がヤバくなると時々僕に連絡を寄越した。
「アノー、最近何かありましたか」
 不思議な事にそういう時にまた僕の方もエラいことになっていて(こっちは大体が酒と仕事がらみだったが)お互い『やっぱりね』等と言って善後策を相談していた。
 その男、数々の人生の危機一髪を潜り抜け、今日さる会社でエラくなっている。勿論バツイチだが、先日会ったら相変わらずだった。

 もう一人挙げておきたい。学生時代の遊び仲間なのだが、当時から得体の知れない奴だった。実はこいつともバンドを組んで仲良くなった。全く不真面目でモノを考えたことがないのではないかという印象を持ったものだ。
 ところがこいつは要領のよさが天才的で、特に帳尻合せに関しては神業的な鮮やかさを見せた。全く勉強なんかしないくせに就職に必要なAの数を揃え、ウソにウソを重ねて就職を決めてしまう。志望理由は特になかったはずだ(無論面接でそんなことはおくびにも出さない)。
 僕が2年程離れていた東京に舞い戻って来て再会した奴は遊びに遊んでいた。奴の勤務先は結構な給料で知られていたが、実家にいたので全て使い果たして更に巨額のツケをため込んでいたっけ。
 こいつの場合は、前述のワルとは違ってミョーに怪しげな女性がウジャウジャしていた。どう怪しいかというと極端に年上だったり物凄い美人の飲み屋のネーチャンで、ただ深みにはまることは無く単なる遊び仲間のようだ。いわゆる女好きではなかった。
 そういった付き合いを通じては本能的にアブない世界に近づいて行き七転八倒してまた元に戻るようなことを繰り返していて、同時にサラリーマンをどうこなすのか見ていてハラハラした。要するにモノを考えていない破滅型ともいうタイプかもしれない。
 答えは簡単で、アイツはロクに仕事をしていなかったのだ。ここぞ、という所の一発芸でごまかしていたが、いくら何でもそう長くは通用しない。そうこうしている内についに地雷を踏んだ。どこかのオネーチャンの借金取立てに首を突っ込んで小遣いを稼ごうとしたら恐い目に会ったらしい。 
 するとまた実にいいタイミングで海外に転勤の辞令が出る。大変に治安のよろしくないアジアの国で、大方の見方は露骨な左遷だったが勘違いしたのか本人は嬉々として赴任していった。
 コイツは長ーいこと連絡が取れずに噂も聞かなかったが(聞きたくもなかった)バッタリ地下鉄の駅で出会った。僕は気づかず向こうが『ニシムロ?』と言うのでシゲシゲと綺麗にハゲた頭を見て仰天した。品のいい紳士になっていたのだ。

 二人書いたところでバカバカしくなったので止める。後少しいるのだがまた別の機会に。断っておくがこいつらは決して善人ではない。ただ運が少し良かったから何とかなったに過ぎない、スレスレの人生を送っているのだ(多分今も)。

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