Sonar Members Club No.36

月別: 2017年3月

空にとどけ (今月のテーマ 空)

2017 MAR 19 21:21:38 pm by 西 牟呂雄

厳冬の 凍らんとする 風に乗り
   駆け上っていけ  山の満月

 キーンと冷え切った夜空にも満月は上がる。
 何にせよ季節は巡っていく。寒い季節に未練はないが、楽しみはあった。
➀セーターやコートが着られる。マフラーで遊べる ➁スノボに行ける ➂オッサンでもブーツが履ける ➃床暖があったかいので床で転がれる  ➄ろくに運動をしないからほとんど汗をかかない ➅それもあって温泉に入る楽しみのコスト・パフォーマンスが高い ➆落葉した木々の枝の先まで痛々しく見える ➇大量の落ち葉をファームに埋めて肥料にできる(かなぁ) ➈冬至以降少しづつ日没が遅くなるのが嬉しい(日の出は二月初めまで遅くなるが日没は冬至の前が4時半で最も早い) ➉焼酎・ウィスキーのお湯割りがおいしい

 しかし空のどんよりした冬の日というのは本当に気が滅入る。ヨーロッパ北部の人の夏休みに対する感覚は当然我々とは違うものになるだろう。ニューヨークも冬は不景気な天気が続く。日本でも新潟のあたりの方々だって今年のように雪に振くり込められては気の毒だ。ただ冷たい雨よりはましか、灯はきれいだし。

このまんま わたしを放って 行ってくれ
   夜更けの白い  雪原の中

 昔スキーに行った時にゲレンデから宿までが遠く、何人かで連れ立って帰るのにヘトヘトになってしまいおまけに日が暮れた。汗まみれになって気力を失った。その時に、あまりの街灯に照らされた道の美しさに息を飲んだ。
 途端にガリガリに凍った道で倒れて顔を切った。鼻の横からポタポタ血が出ていて「おい。どうした」と声をかけてくれた友人がビックラして「ヤバいぞ。早く来い」と言いながらぼくの前をスケーティングで滑って行った。本人は『先導してやった』と後に恩着せがましく主張したが、見捨てようとしたことは明らかだった。その男こそ我が友、SMCメンバーだった故中村順一君その人で高校生か大学生入りたての頃だった。
 もっともコッチもセッセと滑るのに疲れ果てて、ほっといてくれ、といった気分
である。我等の奇妙な友情は実に第三者の理解を得にくいと思う次第。

 梅が咲いてもまだまだ寒く、アパレル業界ではこの時期を『梅春時』といって売れない時期となっている。コートも脱げないし薄着も出来ないからと言われている。そして多少売れるのは”緑””黄緑”だと。
 3ヶ月前が赤・黄の紅葉でその後はドロンとしたモノトーンの季節を過ごし(クリスマス・お正月の華やぎはあるものの)人の目がグリーンに飢えてくるのかもしれない。
 そして太陽の位置が少しづつ高くなってくるのである。

 梅も散った。お日様よ中天に上れ。寒い季節ももう終わりだ。 

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立ち止まってみた

2017 MAR 16 7:07:35 am by 西 牟呂雄

 「断・捨・離」という言葉があるそうだが、なかなかいい。いらない物を持ち込まず、いらないものは捨て、執着を持たない、ということだとか。
 これ、僕は3年前に母を送った時に身に染みて思うところがあった。遺品(というか生前使っていた物)は残された家族にとって全て必要のない物だ。見ると『ああ、これをあんなことに使っていたな』等と記憶が蘇り、もう少し取っておこうか、となりがちだった。
 しかし待てよ、物を見なけりゃ思い出さない記憶ってそんなに大事か。中にはイヤなことを思い出す代物もあったりして。
 で、結局片っ端から捨てに捨てた。洋服・本・書き物・日用品・装身具・靴・メモ・えーいこれでもか、とね。ついでに僕に関するものも多少あったが、それは見るのも嫌になって目を瞑って捨て。暫く呆然としたことは確かだった。

 例えば東京での孤独死や誰も住んでいない空家が問題になったり、地方のシャッター通りが話題になったりする。思うにこういったことは(それぞれ事情は違うにせよ)「断・捨・離」に失敗した結果かもしれない。
 前者は持てるものに固執して誰にも渡さない、或いは様々な事情により逆に周りから縁を切られてそうなったと考えられる。誤解を招くと困るのでクドクド申し添えるが、気の毒な結果になったことを本人のせいだと非難しているのではない。そこに至る過程で「断・捨・離」が上手く行かなかったことを慮っている。
 後者も全く人がいなくなったのではない。シャッター通りの住民も町の外のショッピング・モールに買い物に行っているだろう、と考えている。人の流れや消費行動が変わったことに気づかず、コストが高いままに駅前の店の権利を持ち続けたのかも知れない。店の持ち主も車に乗りモールで買い物をするのではないか。

 これ、人間関係にも当てはめられるだろうか。
 僕はこれ以上知り合いを増やしたくない。偶然の出会いはあるだろうが、殊更それを求めたくない。ちょっと前までは同窓会などの幹事役は進んでやったのだが、長い間会わなかった人と接するのに”人見知り”のような感覚に陥るのでやめた。この5年の話、調度ブログを書き出したあたりから群れるのが嫌いになった。 
 付き合いを断つ、そりゃ全部は無理ですな。一人では生きていけない。何も今仲良くしているのをブチ壊す必要はない。たまたま新たに知り合った人と親しくするのは誠に結構、ただ努めて新しい出会いを求めない。流れにまかせる。これが『断』にあたると考えている。
 長く付き合った(これは10年以上くらいか)例えば仕事をしていた頃の知り合いから声が掛からなくなった、或いは呼んでも出てこなくなったとする。無理矢理呼び出すとか押しかける事はしない。『去る者は追わず』と言う。これは自分が疎まれても別に嘆かない、僻まない、騒がない、こっちも悪いのだろう、と頷く。これを私流の『捨』としよう。捨てても捨てられても恨みっこなし。
 去年は親友一人、親しかった飲み屋のオーナー、親族二人といった面々を失った。特にかけがえのない友を失ったのは堪えた。正真正銘の『離』になってしまったわけだが、こちらもオッサンになってしまったから嘆いてばかりもいられない。むしろいつ自分になるか分からない、と言い聞かせている。
 静かに水がよどまないように流れて行く。これが私の『離』の解釈としている。

 この人間関係「断・捨・離」簡単なようでそうでない。この年になると分かるが、結構な根性を入れないとできないのである。
 例えば、まるで生存確認のようだ、と5年ほど前に年賀状をやめた。すると「あのヤローついにくたばったらしい」という悪意ある噂が流れた(1年だけですが)。
 また、どうしても会いたくない奴の顔を見るのが嫌で会合をすっぽかしたら「恩知らず」のレッテルが貼られた。

 静かに潮が引くように行方をくらまして「エッ、しばらく見ないと思ったらあいつ死んでたの」くらいになれないものか。

人は変わる どう変わる

病室にて


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モノを失くすという事

縞模様の空 (今月のテーマ 空)

2017 MAR 13 21:21:01 pm by 西 牟呂雄

 先日、中央高速下りでちょうど小仏トンネルを抜けたあたりで異様な空を見た。
 飛行機雲が幾筋かあって、更にもう一機が既に引かれている筋に交差するように飛んでいく。交差してバツ印ができそうなあんばいに(運転中だったが)一瞬見とれた。
 さる暗殺事件があった直後だったので、一瞬あの国が何かやらかして福生や厚木の米空軍とか航空自衛隊のスクランブルでもかかったか、とわざわざ車を寄せて携帯を確認した。勿論そんなことはない。
 もう一度ゆっくりと空を見上げるとだいぶ薄れてしまったものの少し残っていて(撮り忘れた)そのうちの一筋が中天の太陽にかかっていた。マズい!
 この現象は「白虹(はっこう)日を貫く」といって凶兆とされている。その昔の支邦の戦国時代、荊軻(けいか)が秦王(後の始皇帝)を暗殺しようとした時に現れた自然現象として記録されているのだ。本当は飛行機雲なんかではなく(その頃飛行機は当然ない)霧による白い虹が自然現象として現れる。
 燕の国の人である荊軻は普段は何にもしないで酒を飲み酔っぱらっては歌い傍若無人(要するにブラブラして)に暮らしていた。しかしその中でも読書に勤しみ秘かに胆力を練っていた(らしい)。相当ハッタリもかましたことだろう。
 そうこうする内に燕の宿敵・秦は強大な力を持って手が付けられなくなってしまい、ついに秦王を刺し違えなければニッチもサッチも行かなくなった時に荊軻に白羽の矢が立つ。ここで、待ってましたと匕首を偲ばせて秦に旅立つ。
 その日見送る者は皆白装束。そこで振り返ることもせずに高らかに詠んだのが次の歌である。
「風蕭々(かぜしょうしょう)として易水(えきすい)寒し。壮士ひとたび去って復(ま)た還(かえ)らず」 
 僕はこの光景が好きで、荊軻を気取って何もせずに酔っ払うことを心掛け、イザという時に備えている(その時が来る気配は全くないが)。結局暗殺は失敗に終わり荊軻はズタズタに切り殺される。うまくやっていれば秦の始皇帝は全国統一することなく中国史は変わったものになったであろう。
 もっとも白虹が日を貫ききってないから、燕太子・丹は荊軻の失敗を悟ったと言う説もある。秦王は結局始皇帝になっている。
 井伏鱒二は昭和11年2月25日の『荻窪風土記』にこう書いている。
『空は青く晴れ,皇居の上に出てゐる太陽を白い虹が横に突き貫いてゐるのが見えた。虹は割合に細く,太陽の直径の三分の二くらゐの幅である』
 翌日は例の2・26事件が勃発した。

 しかしこれも昭和天皇の踏ん張りによって粉砕される。失敗したのだから貫ききっていなかったのだろうか。それとも井伏鱒二だけに見えたのか。他に目撃が記録された例は見ていない。

2月26日に考えた事

帝王の罵詈雑言

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追悼松方弘樹 架空対談 小林旭 VS 梅宮辰夫

2017 MAR 11 13:13:21 pm by 西 牟呂雄

小林旭(以下「小」)「とうとう松方も逝ってしまった。山城も文太も成田もみんないなくなっちまった」
梅宮辰夫(以下「梅」)「最後は小さくなってしまって・・・、健さんもなあ。淋しいもんだぜ、全く」
小「深作さんのシャシン(仁義なき戦い)の時にゃー皆まだ元気で活気があったがの」
梅「みんな広島弁になってな」
小「松方なんか何回死んでもまた出てきた」
梅「深作さんとの相性もよかったしな」
小「そっちは松方とは釣りなんかで付き合ってたんだろ」
梅「ああ。楽しい奴だったよ。オレもあいつも東映育ちで昔から気が合った。そのころそっちは日活だろ」
小「こっちが裕次郎と遊んでた頃だな」
梅「とにかく酒が強かった。ウィスキーの2~3本は軽く飲んだからね。女にもマメだったし、昭和の俳優だ」
小「オイオイ、女の事はお前さんに言われたかぁないだろ(笑)」
梅「そりゃねぇダロ(笑)。死んだ山城新伍にや負けるぜ。とにかく金払いは凄かった。あれは金銭感覚がないっていうか、バカ高いワインやボトルをバカスカ開けるんだ。」
小「そういうところは勝新さんに似てたなぁ・・・・。大勢引き連れてな。オレ達はタメ年でアイツが四つ下か」
梅「そうそう。北大路欣也と一緒だ。だからオレのことは『辰ニイ、辰ニイ』と呼んでた。オレ等との4年の違いって結構でかいんだよな。敗戦の傷が生々しい頃の4年だから」
小「そりゃもう何にも無かった」
梅「オレなんかハルピン生まれの引き揚げだぜ」
小「演技も上手かったが心底映画が好きだったよな。プロデューサーとしても随分がんばったんだが借金も増やしたんじゃないか」
梅「がんばって作り上げてもオクラ入りってこの業界じゃ珍しくも何ともない話だ」
小「勝つぁんも裕次郎もそうだったけど映画を作るという魔力に取りつかれていた。オレなんか頭が下がるよ。こっちゃゴルフ場の失敗で借金まみれになったりはしたが。それでその後みんな歌で何とかなったんだがよ」
梅「こっちは娘の彼氏の大借金だ(笑)。釣りにもケタ違いにのめり込んでた。アレのオヤジが釣り好きだったんだね。一度テレビの取材であいつとマグロを釣りに行ったんだけどオレの方にアタリが来ちゃってアイツはサッパリ。いやもう機嫌が悪くなっちゃって大変だったよ(笑)。おととし360kgもの大物を釣ったときは暫くうるさくてしょうがなかった」
小「たけしの番組に出たときゃタマゲたなぁ。面白かったけどよ」
梅「あれな。オレもその頃から料理の番組とかバラエティに出だしたんだけど、あそこまでキャラを立たせられなかった。やっぱり上手いんだよ」
小「特におネエちゃんとの絡みは天性のもんだった。別にラヴ・シーンの話じゃねえぜ(笑)」
梅「あ~あ、とにかくお前さんだけは元気でいてくれよ。オレより長生きしてくれ」
小「そりゃコッチの台詞だ。去年の安藤さんの葬儀の時は調子悪そうだったから心配した。気をつけてくれィ」
梅「お互いにな」

追悼架空対談 高倉健×菅原文太

方言の生きの良さ


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機械に使われる気分

2017 MAR 8 16:16:46 pm by 西 牟呂雄

ルンバ君の顔

 皆さん、彼をご記憶でしょうか。
 我が家の働き者、ルンバ君です(本当はもっと変な名前ですが恥ずかしくて書けない)。
 相変わらずルンバ君は疲れもせずにセッセと掃除をしてくれています。
 僕はルンバ君と仲良しなので、彼が掃除をしているあいだ中彼の側にいて世話を焼いているのです。
 椅子だの屑篭だのスリッパが放置してあるとルンバ君はぶつかって向きを変えます。まだAI搭載型ではないので部屋全体を俯瞰してコースを決めることはできないため、ランダム(といってもいくつかのパターンで)方向を選んでトコトコ進みます。
 そこで僕が進行方向にある家具を、ルンバ君の邪魔にならないようにどけて歩くのです。
 これ(まさかやる人はいないでしょうが)やりだすと結構集中力が要ります。嬉々として1時間もやって我に返ると、フト思います。『この状態ってオレがルンバ君に使われてるんじゃないか』と。
 以前、認知症になった僕が『介護スーツ』というマジンガーZのようなボディ・スーツを着せられて、食べたくもない時にモノを食べさせられたり(本人ボケて分かってない)したくもない運動をさせられることを想像してゾッとしましたが、AIのただならぬ発達ぶりにあながち冗談ではなくなってきていますね。

2030年 認知症で自由になる

 自動運転の技術は今後飛躍的に発達することが予想されますが、どの時はどうなるでしょう。おそらく本人認証技術も同じように進化し、持ち主とその家族以外が乗ってもスタートできないようにするでしょうから、そのうち車にボビーとかジョーといった名前をつけてルンバ君のように擬似家族のようになるかも(僕がやりそうで怖い)。
 すると、その車が走りやすいようにまた気を使い、家の前の障害物をどけたり。

 狭い一本道を二台の車がすれ違えなくて困っています。車は自動運転なので行く事もバックすることもできないで止まってしまう。
 すると乗っていた人間が出てきて怒鳴りあいを始めました。
「オイッ、お前のクソ車が邪魔でウチのボビーちゃんが通れなくて困ってるだろーが。」
「ナニ!そっちこそこんなかわいいウチのジョーを脅かしやがって!何ならオレが相手になってやろうか」
「上等だ、このやろう」

こういう場合は人間同士が決着をつけるのだろうか。

ルンバ君(仮称)

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2035年 人工知能天国 (今月のテーマ 人工知能)

源実朝の嘆き

2017 MAR 7 0:00:43 am by 西 牟呂雄

 この将軍は何かと気になる。
 文学への思慕、立場の煩わしさ、身内の裏切り、家族の不幸、そして暗殺、と決して恵まれなかった28年の生涯は儚い。
 それでも僕は幾つかの挿話にこの若い将軍の少年のような感性と、同時に何やらアヤしげな運命を強く感じる。
 こういう逸話がある。
 子供の頃から夢でお告げ受けたと寺社に参詣したり、夜に怪しげな女性や光を目たと招魂祭を催している。
 ある夜、不思議な夢を見る。夢中に高僧が現れ、汝は宋の霊山医王山の長老であった、と。時を経て将軍となった実朝に、来日した宋人・陳和卿が面会すると涙を流しながら三度拝みこう言った。「あなたはかつて宋朝医王山の長老。時に我その門弟に列す」。
 自分の見た誰も知らない夢の内容を言われ、コロリと信じ込む。それだけではない。医王山を訪ねようと本気になり、陳和卿に船を造れと言い出した。
 実際に建造された船は浮かばずそのまま朽ちた。陳和卿は焼損した東大寺大仏の鋳造と大仏殿の再建に来日した実在の人物だが、徳の高い僧でもなく造船技術も何もなかった食わせ者だったのではないだろうか。おだてられて目の前で泣いて見せる外人に、フトそう言えばとその気になるタイプだったかもしれない(サイコ・パス型の人に多いとされる)。
 しかし可愛げがあるではないか。

 あるいは旱魃に苦しむ中降雨を祈り法華経を唱え続けると、その二日後に雨が降る(これも事実)。
 また、長雨で洪水に見舞われればこう詠いあげる。
時により 過ぐれば民の 嘆きなり 八大龍王 雨やめたまへ
 この『八大龍王 雨やめたまへ』のリズム感とダイナミックさはどうだ。
 水神は龍の姿をして現れ様々な呼称があるが、実朝には「はちだいりゅうおう」の語感以外に使う言葉はなかったはずだ。
 そもそも都に比べ著しく文化程度の低い鎌倉で、和歌が味わえる者など周りにはいないのが気の毒である。
 藤原定家に自らが詠んだ和歌三十首の添削を頼むなど、いじらしくさえある。
この天才振りは賀茂真淵や正岡子規が評価していなければ少年将軍のお遊びとして誰にも顧みられなかったかもしれない。
 趣味が昂じて『金槐和歌集』を編纂するが、坂東武士の冷ややかな視線を感じたはずだ。

 次から次から起こる煩わしいナントカ合戦だのカントカの乱、おびただしい政務に疲れたときは鎌倉の海をながめてはさぞ嘆いたことだろう。

 辞世とされる歌は
 出でいなば 主なき宿と 成ぬとも 軒端の梅よ 春をわするな
 但し、辞世として詠んだのではなく、先に作ったものの結果として辞世だとされた、という説に後世の偽作説もある。

沖の小島に波のよる見ゆ 

あやしうこそ物狂ほしけれ 

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あかあかや 華厳

大河ドラマで織田信長を演じた人達 Ⅲ

2017 MAR 3 20:20:41 pm by 西 牟呂雄

市川海老蔵登場
 今年は日曜の晩に喜寿庵にいることが多かったのでNHKの大河ドラマ『女城主 直虎』を見ていなかったが、何と織田信長を成田屋の海老蔵さんがやるというのでこうしちゃいられない。
 以前は桶狭間の時の信長の年齢(27歳)から佐藤健がいいな、と思っていた。しかし本能寺までやるのだから(49歳)現在40の海老蔵さんを暫く見られるならヨシとしよう。それに歌舞伎の名門が戦国一の歌舞伎者をやるとは、こいつは春から縁起がいいわい。
 名優に注文をつける気はサラサラないが、是非お願いの儀これありまする。

ひとつ 笑顔を見せないでほしい。ニッコリもだめですね。狂気が失われてしまう。
ふたつ 例の「デアルカ」は「ア」にアクセントを。棒読みだとマヌケ感がぬぐえない。
みっつ 藤吉郎をイジめて欲しい。「猿め!」「この禿鼠(ねねに宛てた手紙に本当にそう書いてある)!」
よっつ 舞台ではなくテレビですから海老蔵さん得意の『睨み』はやめて半開きくらいの目付きで。
いつつ 科白の抑揚は抑え気味に。本当は尾張弁だが江戸言葉なのは仕方ないとします。
むっつ 朝倉義景・浅井久政・長政父子の首を漆塗り金泥に固めて酒を飲むシーンを入れてください(史実です)。
ななつ 光秀役は眉目秀麗な若手を。それこそ佐藤健が絶対にいい。だめなら片岡愛之助。
やっつ 歌舞伎の台詞廻しは一度だけ本能寺の時。『是ー非ーもーなーしー!』
ここのつ登場のシーンはナレーション無しで『に~ん~げ~ん~ご~じゅ~ね~ん~』
とお  隈取までやらなくてもいいが目張りは入れてください。

 こんなところでしょうか。ん成田ぁ!見せてくれ、ワクワク! 

 ついでにほかの配役も予想してみよう。
豊臣秀吉・・・桜井翔
前田利家・・・野村萬斎
北条氏政・・・反町隆志
千利休・・・・堺正章
武田信玄・・・泉谷茂
上杉謙信・・・オレ

大河ドラマで織田信長を演じた人達

大河ドラマで織田信長を演じた人達 Ⅱ

映画 『花戦さ』


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本能寺の変 以後

怪僧列伝 カトリック編

2017 MAR 2 20:20:32 pm by 西 牟呂雄

 以前日本史に現れた怪僧を『列伝』にしてみたが、キリスト教にもバケモノじみた人物がいる(トム市原さんに指摘された)。ちょっとやってみたくなったのでサワリを書いた。

文化を破壊したドミニコ会の修道士ジローラモ・サヴォナローラ
 フィレンツェでの情熱的な説教が次第に人を呼ぶ。勢いがついてルネサンス全盛時代を迎えたロレンツォ・ディ・メディチの独裁政治を厳しく批判しだしておかしくなる。極々真面目な人だったのだろうが、こういうのが危ない。
 堕落した享楽生活に怒ってフィレンツエの厄災を予言したところ、本当にフランス軍が攻め込んできてイタリア戦争になってしまう。
 その際に市民の代表に選ばれてから更に狂って神政政治を始める。贅沢を戒め、堕落の元凶として絵画や楽器を「虚飾の焚刑」として焼き払う。かの「ヴィーナスの誕生」の作者ボッティチェッリはビビッて華美な絵を描くのを止めている。
 しかし享楽的なイタリア人がそんなに我慢できるはずもなく、やりすぎ感から後述するデタラメ教皇アレクサンデル6世に破門される。
 そうなると手のひら返しでサン・マルコ修道院に押し寄せた市民はサヴォナローラを有罪・焚刑にしてしまった。頭に血が上らなければ結構マトモな人だったかもしれない。

同時代で最も堕落した教皇アレクサンドル6世
 そのサヴォナローラを破門したのが、本名ロドリゴ・ボルジア。スペイン人だ。名前の通りボルジア家の人である。
 当時のスペインはイスラム教やユダヤ教から改宗した人々に対する異端尋問が盛んで、王族が先頭に立ってやった。しかしひどいもので、実態は財産の没収目当て。
 しばしば異端でも何でもないと人を告発したり報奨金目当てが多く、裕福な改宗ユダヤ教徒の告発は王室が行っていた。
 これに尽力したのがスペイン枢機卿だったロドリゴ・ボルジアで、その後奸計と買収で教皇の座につく。ちなみに異端尋問所長官のトマス・デ・トルケマダは告発と拷問で2千人とも8千人ともいわれる人々を処刑した。
 その男アレクサンドル6世は教皇になった時点で数人の子供を愛人に生ませており、初めはおとなしくしていたが次第に馬脚を現す。
 「マキャベリスト」の塊のような長男チェーザレ・ボルジアが右腕となって陰謀・毒殺・戦闘を繰り返し教皇の地位を支える。こいつは宿敵フランスとも同盟するのである(ご存知だろうがマキャベリの君主論はチェーザレをモデルに書かれた)。
 まぁ当時の聖職者は多かれ少なかれ堕落しきっていたが、ローマでは強盗殺人が横行し貴族も一緒になって町をメチャクチャにしていた。教皇自らダンスや宴会に浸りきって、更にロドリゴ・チェーザレ親子で美貌の娘ルクレチアと近親相姦を繰り返した挙句に政略結婚をさせる。
 この因果な二人はほぼ同時にマラリアにかかりあっけなく死亡するが、当時から毒殺の噂があった。

出ましたラスプーチン
 シベリアの農夫の子として満足な教育も受けずに育ったが、突然神がかりになって自分で熱心に勉強したようだ。カトリック修行僧として良いかどうか迷う所だが、サンクトペテルブルクのアレクサンドル・ネフスキー大修道院にいたことは確かだ。
 僕はこの辺りの一種”一生懸命さ”が好きで、気持ちは純粋だったと確信している。
 そして不思議な力を身に着ける。今で言えばヒーリングとかその手の超能力、気功の達人と言ったところだろう。
 サンクトペテルブルグで人々の病気を治したりして一気に名声があがり、そこから先はご案内の通り。
 ただ、シベリアの寒村での暮らしぶりは生涯抜けなかったようで、想像するに風呂なぞ入らず手づかみで食べ強い訛りで喋ったに違いない。しかしその能力で多くの女性信者に囲まれ、性的放埓さは直しようもない。
 誤解を招くと申し訳ないがこの手の気質は一部のロシア人に共通してあって、あのエリツィンも酔っ払うとウラルの田舎を思い出すらしく太目のオバサンに抱きつくようなことをしていた。

この視線

 コンスタンティノープル、パトモス島、ロードス島、キプロス、聖墳墓教会と巡礼の旅に出ているが、正確な教義の東方正教会の信仰だったのか。
 ニコライ二世の信頼も厚く揺るぎない。
 宮廷に巻き上がる嫉妬と憎悪の眼差し。
 帰省した時の暗殺未遂。
 第一次世界大戦の大混乱。
 無教養なラスプーチンに複雑な国際関係や混乱する内政への適切な指導など望むべくもない。しかしどうしてもそういったヒトに頼りたくなるのは、今日でも隣の国で女大統領がアヤシげな友達に寄り添った事を見ても有り得るだろう、ましてや100年前だ。
 彼は戦争には反対したせいもあってドイツの回し者と言われる。
 金銭にははなはだ無頓着であった。使い方も贅沢も知らなかったのではないかとも思う。入った金は皆やってしまったりレストランで支払ったりして残さない。残す、とう感覚がわからないのだ。
 そして暗殺。
 これが驚異的なことに青酸カリ入りの紅茶と食事を食べても全く効かない。銃弾を3発喰っても死ななかった。なにがしかの驚異的能力があったことは確かだったと思われる。
 最後は額を撃ち抜かれ凍った川に投げ込まれたが、その時点まで生きていたという伝説が残った。
 僕はラスプーチンがそんなに悪人だったとどうしても思えない。余計な能力が身に付いた為に結果として悪評のみ残り暗殺された気の毒な田舎の念仏オヤジに見えてしかたがない。

怪僧列伝戦国・江戸編(今月のテーマ 列伝)

怪僧列伝メチャクチャ編(今月のテーマ 列伝)


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水平線上のアリア (今月のテーマ 空)

2017 MAR 1 1:01:54 am by 西 牟呂雄

 ヨットで全く陸地の見えない360度海という景色を見続けていると、何となく地球は丸いのが実感できる気がする。日本人の先祖の中には南方系の海洋民族の血もまじっているはずだから、先祖代々(山国は別として)地球が丸いことが刷り込まれていたのではないだろうか。信長は宣教師から地球儀を見せられて、一瞬にして地球は丸いことを理解したと言われている。

水平線上の日の出

水平線上の日の出

 全部水平線の光景は、晴天の日は雄大で海の迫力に圧倒的される。だが、直ぐに飽きる。特に晴天微風の時は空と海のブルーの色彩に飽きると言ったらいいのか、作業をしていないと時々やりきれなくなる。日中の真上の空の色は物凄く濃く、水平線あたりのかすんだ青と違っている。
 寒いのもたまらないが、強い日差しの中(従って長袖でキャップも被っている)ボーッと水平線ばかりを見ているのもつらいものなのだ。
 何故かいつもは飲んでばかりいるのが酒なんか全然欲しくならない(結果は飲むが)。むしろ甘いもの、エクレアとか冷やしたシュークリームのような物が恋しくなる。聞こえるのは船体に当たる波の音ばかり。
 そしてこんな時はフト旋律が頭の中を駆け巡る。それも普段聞くロックンロールじゃなくてスローテンポの弦楽器ユニゾンなのだ。僕はそれを「水平線上のアリア」と名付けている。メロディーはあれ、G線上ですね。

 山の麓の喜寿庵にいるときは季節ごとの色彩は鮮やかだ。従ってあんまり空を見上げる事もない。
 人と会話をすることがほとんどない、一人で居る事が多いのだ。しかし常に渓谷のせせらぎの音がザア~~っという感じで雨音のように耳に入ってくる。
 変なもんで誰とも会わない喜寿庵にいると頻繁と着替えをする、一日に何回もだ。それもいちいち凝った服装にセッセセッセと着替えるのだ。繰り返しになるが誰も訪ねて来ないにも関わらず、だ。
 例えば芝生を刈るときにはゴルフの格好をし、アグリカルチャーの為に専用のツナギを買った。剪定の時にはネクタイまでする、そのネクタイの締め方も二重巻きという特別な占め方を発明した。暑くなれば汗まみれになるので一日に何回もシャワーを浴びてYシャツを着替える。それでいて買い出しに行くときはそんな格好をすると目立つのでわざわざジャージに着替える。要するに孤独でヒマなのだ。今時は寒いから家の中でスキーウェアに着替えることもある。

北斗七星

北斗七星

 谷合いの山荘だから昼間にジッと空を見上げることはあまりない気がする。むしろ夜空に見入ることはある。夏の夜に芝生に寝転がって星空を見ると、子供の頃「なぜアノ光は落ちてこないのだろうか」と不思議に思ったことまで思い出す。この頃は目が年ではっきり分かるのはオリオンと北斗七星くらいだが、この柄杓は思っているより大きくてダイナミックだ。
 するとですな、これまたせせらぎの音と共に脳裏に流れるのは大好きなエーチャンでも何でもなく、何故かホルストの組曲で真ん中あたりのジュピター!これは女性歌手が歌詞を付けて歌ったりCMのバックに流れたのでポピュラーになったが昔から好きだった。

 そうやって海でも山でも空を見て少しは清らかな人間になったかと思っても、室内で落とした照明の元に戻ると邪悪なローリング・ストーンズやブルー・ハーツをガンガン聞いて元の木阿弥となる。

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今はもう秋 港で思ったこと

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