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エカテリンブルグの春

2018 APR 15 17:17:57 pm by 西 牟呂雄

 さてロシアである。4月は日照も大分長くはなったが東京の感覚では充分に冬のエカテリンブルグに立ち寄った。
 市街地は130万都市であるからドカドカの積雪ではないが、夜は軽く氷点下になる。道路は除雪されているものの歩道は雪解けのグチャグチャした感じだ。

日本に来た事があるとか

 この街は今年のワールド・カップの開催地でもあり、日本もセネガルとの試合が組まれている。各国歓迎の意味で国旗が飾られている中に日の丸もちゃんとあった。
 ところが元々の競技場の観客席が3万人以下だったので(ロシアらしいが)スタジアムの外にスキーのジャンプ台のような仮設席を作って間に合わせた。もちろん終わったら取り壊す。あの上から試合を見るのは怖いだろう、と地元の奴が言っている。

 ロシア経済は石油価格の下落と制裁を受けて著しく停滞し、昨年は多少盛り返した事になっているがまだまだだ。
 といってもこんな田舎では(一応ロシア第四の都市だが)目に余るほどの景気低迷は分からない。昔からインフラがとても先進国並みに見えなかった。
 むしろ僕が見ればそこが可愛らしい、手頃な町という印象だ。 
 大統領選挙があってプーチンが軽く再選された、見た限りでは『だから何なんだ』というほど影響を感じない。反プーチン・デモなどここでは起こらなかったし、選挙の不正は話題にならない。投票率は60%くらいあって日本と変わらない。
 民間のロシア人と接していて感じるのだが、オカミに対するガバナビリティが高い。というか元々統治者という者はロクなもんじゃないと感じているフシがある。『政治家は、悪い奴かもっと悪い奴か物凄く悪い奴のどれかだ』という冗談はロシア人から聞いた。勉強不足でつぶさに読み込んでないが、ロシア革命もソ連崩壊も財政破綻が引き金を引いたトップの権力闘争と資産のブン取り合いと言ったら皮相に過ぎるかな。
 ここエカテリンブルグもそれなりに犯罪もあり、HIV感染者も公表されているのでマフィアぐらいいるかもしれない。車のラジオからローリング・ストーンズの『Get Off My Crowds(一人ぼっちの世界)』が聞こえてきたときはオッと思った(50年前の曲だが)。

 しかし日本も悩んでいる少子化問題は合計特殊出生率・乳児死亡率は10年前に比べるとそれぞれ1.3⇒1.7、8.5(1000人当たり)⇒6.0(日本は3以下)と改善傾向にあるので驚いた。聞けば男性の平均寿命も60位だったのが66才まで伸びている。
 知り合ったロシア人はカタコトの英語で話すのだが、無論政治の話なんかできない。二重スパイ暗殺の話も北方領土も怖くて話題に上げない。民間同士は結構制約が多いのだ。彼らからプーチンに対するあからさまな不満を聞くこともない(日本在住のロシア人はたまにこぼす)。
 オリンピックがあったので、フィギア・スケートの話で盛り上がったり。どうも今回会ったのははそれなりの連中らしく、クラシック音楽やバレーの出し物なんかに詳しい、文学への教養も深い。機械設計のエンジニアなのだが僕なんかより遥かにITに強く、様々なことを瞬く間に画像化できる。
 問題はそれをビジネスに繋げるインフラというかチャンスが少なすぎるのではないだろうか。無論地理的なハンデもあるだろう。
 この辺の事情を良く理解した上で、いいヒントを与えてやればまだまだ伸びる余地のある国でありエリアだと思う。
 何と日本語学校が市内に3つもあるし、日本食レストランも出来てきて(見なかったが)日本への関心も高い。
 調べていないのではっきりしないが、ここにはシベリア抑留とは別にノモンハンの時に捕虜になった日本人がいたらしいとも言われている。

酒が飲めない!

 ところで奴等が自慢したことの一つに、一人当たりのマヨネーズ消費量が世界一でギネスにも載っている、と言うのがあった。何でそんなにマヨネーズが好きなのか分からない、飲んでいるんじゃないのか。

 そして帰国の際に小銭を両替したら、10%以上もルーブルが下がっていた。
 どうせトランプがろくでもないツィートでもしたのだろうと思っていたら本当だった。オイオイ、止めてくれよ。
 そしてシリアに・・・。

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Categories:ロシア残照

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