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婆娑羅将軍 足利義満

2019 JAN 22 7:07:55 am by 西室 建

 サンスクリットのバージラ(バジャラ)が転じて婆娑羅。「バ」も「サ」も女が入っている当て字を持ってきたところに情念を感じると言ったら女性に失礼かな。 
 派手な格好で好き勝手に振舞う傍若無人のならず者、お江戸の歌舞伎者に通じる一連の系譜だ。時代を遡れば平家一門、藤原氏の貴公子達、とどの時代にも必ず目立つ連中はいるが、婆娑羅はそれにもまして”強さ”が強調されている。その後戦国時代の集大成のように信長・秀吉のキンキラ文化として花開く。 
 『婆娑羅』は太平記にしきりに記述されたが、その後の戦国時代の文献からはなくなる。おそらく戦国時代になって日本中が下克上に明け暮れたから珍しくもなんともなくなったからだろう。
 婆娑羅大名として必ず名前が挙がるのが太平記の準主役である佐々木道誉・土岐頼遠、高師直・師宣兄弟の不良根性たるや見事ですらある。彼らはそんなに物事を考えていたとも思えないが、個別の戦闘にはやたら強い。権威が何だ、しきたりクソくらえ、とてんやわんやの有様。
 そしてその連中の上に天下一大バサラに当たるのが室町幕府三代将軍の足利義満だと思う。日明貿易で大儲けして絶大な権力を振るう。
 明の使節と会うときは唐人の装束を着て喜び、世阿弥を可愛がったが飽きがくればポイ捨て。
 相国寺に八角七重塔を建てるがその高さは100m以上と言われている。これに金閣寺を加えると誇大妄想気味の気概と悪趣味は物凄いエネルギーを感じさせる。
 子供の頃は南朝との抗争や観応の擾乱でドタバタして京から近江や播磨まで逃げ出したりする苦労があったが、その時に立ち寄った摂津の景色が気に入り、景色ごと担いで京都に行け、というわがままな命令を下すようなガキだったらしい。
 9才で足利将軍となると、細川・斯波・土岐・山内といった守護大名を巧みに離反させて権力を握り、三種の神器を北朝に返すやり方で南北朝問題をかたずけた。これは日明勘合貿易に大変役に立った。どういう経緯か明の窓口は南朝懐良親王であり、その際の呼称は「日本国王良懐」だった。その後釜のような者として日本国王を名乗ったのだ。
 藤原氏出身ではないのに従一位太政大臣になったのは平清盛に次いで史上二人目で、その後は徳川家斉と伊藤博文だけ(藤原氏はたくさんいる)。
 太平記はいくら丹念に読んでも因果関係が分かるはずがない。やっている本人達も分からないのだろう。だがこの時代のやりたい放題は維新後・敗戦後に匹敵する歴史の転換点とも考えられる。その時点で権力の頂点にいた者こそ義満であり、この時代から鎖国されるまで今で言えばグローバル時代の荒波を被り続ける時代を切り開いたことになる。 

 翻って近代では田中角栄が近いところだろうか。娘はゴーツク・ババァだが家族以外は皆敵、というのは孤独な婆娑羅の血を引いている痕跡がある。角栄がいくら贅沢をしても中国高官の汚職に比べればカワイイもんだし、そのついでに教育基金を作ったりしていれば今太閤の上を行った今婆娑羅の偉人になっただろうに惜しい事だ。そういう意味では孫正義さんあたりに期待したい。
 
 日本人よ孤独を恐れるな。ひとりぼっちで死んでいく。その日が来るまでただ狂え。

 
 しかし、ゴジラやモスラはいたが『バサラ』というのはいない。あれだけ毎週新怪獣がテレビに出ていたのに誰も名付けなかった。唯一『怪獣ブースカ』とかいう着ぐるみのコメディがあって、主人公のブースカの笑い声が「ばらさ、ばらさ」だったが、関係ないか。

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Categories:伝奇ショートショート

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