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ポピュリズムの正体

2020 MAR 19 7:07:44 am by 西牟呂 憲

 はじめに断っておくが、SMCで御法度にしている政治的バイアスのかかった話ではない。あくまでポピュリズムは何なのか、という論考のつもりだ。
 そもそも右なのか左なのか、改革なのか保守なのか、どちらとも言えない。
 トランプの出現、英国のEU離脱、といった文脈でしばしば語られるポピュリズムは、反知性主義、ナショナリズムと排外主義に収斂しているように見えて、そこには思想的なうねりは感じられない。何となく損をさせられている、といった不満が充満しているところに扇動者がスポット・ライトを当てた気配が濃厚である。
 翻って平成期に我が国に起こったうねりはどうだったか。2001年(平成13年)に小泉旋風が起きる。高い内閣支持率の元、自衛隊の海外派兵、北朝鮮訪問と派手なパフォーマンスを打ち出した。一方でその時点でも引きずっていた不良債権処理に竹中平蔵を当てたが、こちらは(私は)評価できない。但し、当時の野党(民主党)が全くこちらの問題に疎かったため失策として追及を受けることはなかった。そして郵政民営化法案をめぐって自民党内でも政局となり、参議院で否決されると衆議院を解散するという賭けに出て勝利する。 

これに関しての総括
 未だもってなぜ国民が郵政民営化にあれほど賛意を示したのか。地滑り的な勝利は恐らく無党派層の投票行動によるものだとしても、一体どのゾーンが投票行動に積極的だったのか。マスコミの分析では、改革好きのIQ低めゾーン(B層と言われた)が熱狂したとされたが。
 また、あれほど無能ぶりをさらけだした女性外務大臣が熱狂的に支持されていたし、小泉チルドレンなる議員の資質は問題にならなかった。

 その後、現在では一強の安倍内閣が海外の事情や体調の問題を抱えて吹っ飛び、目まぐるしく総理が変わった挙句ついに2009年に民主党政権が発足する。
 その民主党は主として自民党の不手際を突っ込むことで衆議院309議席を獲得した。余談であるが、筆者は2000年時点で(当時は自・社・さ、自・自・公、自・保・公、といった野合的組み合わせが横行していた)『今日の政治的混乱が落ち着くのに後10年かかるだろう』と予言した。この民主党政権の発足はまさに今後の政治的安定、即ち保守VS革新といったイデオロギー対立を超えた政策論議によるアングロサクソン型の政権交代ができるシステムが定着したと解釈し、予言が的中したと吹いて廻っていた。だが結果はそうならなかったのはご案内の通り。

これに関しての総括
 この時期は、いかにも自民党政治(小泉劇場)の後遺症ともいうべき停滞感により風に乗った感のある政権交代だった。小沢ガールズといった呼称は記憶に残っている人もいるかもしれないが、今日生き残ったのはそれなりに見識のあった山尾志桜里ぐらいだろう。そのガールズが何を訴えて何をしたかについては何もない。選挙上手の小沢戦略の勝利とも言えようが、その後党内での分裂により最後は自滅する。

 更にその後に大坂維新や都民ファーストといったムーヴメントがあった。大坂の方は事情が良く分からないので詳述は避けるが、東京のあの風は無残極まりない結果になった。あれは一体何だったのか。
 都知事選で石原元知事の悪口を言いまくり、築地関連の大騒ぎを引き起こし、オリンピックにイチャモンを言い募った。おまけに国政に進出しようとして野党民進党を分断し、その後の統合にまで禍根を残すことに。その間実績は無いに等しい。今もって何が投票行動に結びついたのか謎としか言いようがない。左派ポピュリズムと言えるのではないか。

これに関しての総括
 あの〇池旋風こそポピュリズムなのではないか。無党派層の一般的に中道と言われるゾーンが、例えば長期に渡る閉塞感を持っている時に、一種カリスマ的な人物がターゲットを決めて煽り捲ると地滑り的に一方向に偏ってしまうような行動に出る。保守層は自民党に入れ、それ以外のゾーンは投票先としては共産党か公明党に投票するのでポピュリズムの煽りは受けない。
 この無党派中道というのが、希望の党なる得体の知れない政党まで作ったものの原動力であり、あっという間に消滅させた。

 こうしてみるとポピュリズムは一般的に翻訳されている『大衆迎合主義』ではなく『大衆扇動主義』とでもした方が分かりやすい。
 そこには敵がいないと成り立たない。その敵とはしばしばエリートであったり権力であり、反権力の流れもくんでいて、尚且つ反知性主義とも重なる所以である。
 ただし一旦権力を掴んでしまうと反権力のインセンティヴが無くなってしまい、弱者の弾圧に向かう、ナチスのユダヤ人迫害などがそうだ。
 何と言っても魅力的なカリスマが引き起こす。〇池知事が魅力的かというと反論もあろうが、あの時期に限って言えば自民党に苛められる女性といった演出が功を奏して人気はあった。
 そしてカリスマは既存の手続きを踏まないで直接語りかけて煽動する。この頃はネットという媒体を通し、一部愉快犯的な言説も相まって瞬く間に広がる。
 しかしながら破壊力はあるものの、その後の広がりは頗る振るわない。一時的に、或いはあるエリアで流行るのだが全国展開、長期に渡る息の長い運動にはならないと思われる。小泉郵政改革の熱を伝える動きは既にない。大阪維新は橋下氏が代表を降りてしまっている。石原元知事は国政においては小派閥のボスで終わっている。
 隣の国の財閥苛めや反日は典型的なポピュリズムだと思うが、これはいつやっても一定の効果が持続するので最早国是になっているのか興味深い。
 又、トランプ大統領は反知性的であり、民主党、移民、中国と次々にターゲットを上げるところはポピュリズム的でありながら4年やって支持率が落ちてこない。経済が好調なせいだと分析されているが、再選された後は続くのだろうか。

 そこへ今回のコロナ問題である。製造業の不況感は昨年の夏頃から実感としてあったが、世界規模でトドメを挿された感がする。サプライ・チェーンの寸断による稼動未達は元より所得の低下、消費減衰、資金繰り悪化、と続く悪循環は、ウィルス対策が行き渡った後も年単位で続くだろう。
 すると中道無党派層、及び前述のB層の不満は溜まりにたまる。行き場のない怒りがどこへ向かうのか、またそれを救い上げる者が脚光を浴びるのか。
 予想はできないが、仮説としては2つの方向があるのではないか。
 一つは今後の大不況はあらゆる政策を以ってしても不可避のため、やや排外主義的な動きが強まり、安倍1強が進み4選の流れができる。
 もう一つは頭に来て山本太郎の消費税廃止論に野党が乗っかってメチャクチャな政局になる。
 いずれにせよ、オリンピックが延期にでもなった暁には衆議院の解散が引き金になって真価が問われることになるかもしれない。

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Categories:選挙

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