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夏の終わりのヨット・レース

2020 SEP 7 0:00:05 am by 西牟呂 憲

 結局この夏は全然海で遊べなかった。自粛と言えば自粛なのだが、感染者が200~300人出ている最中に東京から行くのが憚られたのが大きい。どうしても港が見たくなって入口までドライブして船をみないで帰ったりした。
 それが夏のドン詰まりにレースがあって、我が愛艇はボランタリーに本部船(実行委員長が乗船しスタート支持やゴール着順を判定する船)をやることとなったのでお手伝いに行った。勿論日帰り・泊まりなし・酒ナシ。
 スタッフは随分前からコース設定、マーク手配、帆走指示書の作成・公示、などでずっと忙しかった。僕はひと夏棒にふったのでミソっかすなのだが、一度も乗らずに年を重ねる罪悪感に抗しきれず朝早くからポートを目指した。
 当日のスタート予定は10時。着いて直ぐに出港の運びとなった。快晴・微風で海は静かに凪いでいた。

 コースは3角形のルートでターンする所とスタート・ゴールにマークを打つ、黄色の大きな風船のようなもので、本部艇はそこにいて現在レース実行中である旗(オレンジ)を上げる。そして大会会長が当日の風を見て、コースの時計回りか反時計回りかを判断してこれも旗で知らせる。その間、エントリーしていた船が本部船を回って参加人数を知らせチェック・インする。人数によってレーテイングが変わるからだ。
 タイム・キーパーが時計を見ながら「5分前まであと1分・・30秒・20秒・10秒・9・8」とカウントダウンしてキッカリ5分前に予告信号(音響 短音1声、掲揚)、4分前準備信号(音響 短音1声、掲揚)。
 この頃になるとスタートラインで各艇が風向きからポジション取りの駆け引きは始まってまるでクジラが群れているように海面が慌しくなり、スキッパーの怒鳴り声が飛び交う。1分前(準備信号旗降下 音響 長音1声)、5・4・3・2・1・スタート(予告信号旗降下 音響 短音 1声)、さあ、始まった。

スタート

 フライングもなくきれいなスタートだ。やや上り風を受けた船がグーッとヒールしながら出て行った。本部艇からはラインをオーバーした船にリコールをしたり、場合によっては再スタートをしなければならないため緊張はするがきょうは問題ない。
 遠くに行ってしまうと横一線にしか見えないのでレースの様子は分からないが、大分バラけているので早くも戦いは佳境に入ったようだ。
 10時スタートで最終フィニッシュは15時半。レースの無事を祈るばかりだ。
 本部艇は早々とゴール・ラインを作るために、アンカーを引き上げマークの反対側に移動した。普段はここで「さぁビールでも」となるのだが、大会会長・レース実行委員長も乗船しているので控えて釣竿を出したりお弁当を食べた。
 すると面白いことにカモメが1羽近くに来て着水した。こっちを見ている。こいつはお弁当を食べているのを見ておこぼれを待っているのだろうか。試しに海老の尻尾を投げて見るとオォ!パタパタ水面を蹴って食べた。シャケの皮は、これも食べた、それも潜って。
 そうこうしていると本部(陸上)から連絡が入る。東京湾の方から参加している船がリタイアしたらしい。エンジンの調子が悪いので帰港できないかもしれないので、というのだが。レース中は帆走なのでエンジンの調子が悪いのがなぜわかったのか不思議だ。
 ちょうど水平線のあたりに第二マークに向かってスピンを上げている船団が見える。あれはレース中盤を走っている連中だな。今日は各マークにプレス・ボートがレスキューも兼ねて張り付いてターンした船を連絡してくれる。そしてドローンも飛ばして動画も撮影、通信機器の進化は進化は目覚しい。しばらくはこの強い日差しの下、昼寝かな・・・。
 大島は見えたが富士山はモヤって見えない。
 ところで本命は精鋭の乗ったレース艇が数杯。中には快速カタマランがいてこいつは速い。スタート後3時間を過ぎた頃から第二マークをターンしたという連絡が入りだした。
 すると江ノ島方面から続々と船影が見えてくる。あのコースの真上りではあと2回タックを入れないとゴールできそうもないな。それぞれスキッパーの判断により沖の方から回るグループと半島側に突っ切ってきてワン・タックで勝負する船に別れた。このあたり、風だけではなく潮の流れも考慮して作戦を変えているようだ。
 プレス・ボートから『まだ1艇ターンしていないがリタイアの連絡はないか』の連絡が入りヒヤリとする。この船はその後僕達の本部艇に挨拶に来て『マークを発見できなかった』と言ってリタイヤしたが、チャートの読み違いなのか。更に『最後の船〇〇は時間内にはフィニッシュできそうもない』との連絡も入る。
 その頃はファースト・ボートがハッキリしてきた。スタートの時のように近づいてくると〇時〇〇分5・6・7と読み上げていきラインを通貨した時点で音響・短音でゴールを記録する。ところがマズいことに日が傾きだした逆光の上、船体がこちら側に傾くため船名とセール・ナンバーが読みにくいのなんの。双眼鏡まで出して何とか読むのだが、固まって来られると慌てる。

 本命がフィニッシュし、後続にデッドヒートを繰り広げる塊が入って来る、僅か7秒だった。3時間以上波や風と戦ってきて僅か数秒の差でフィニッシュ。彼らはこの数秒に知恵を絞り戦術を練り技を競ったのだ。すべての参加者の意思が結晶した結果は、順位とは別に讃えられてしかるべきである。
 そんな時にプレス・ボートが『〇〇は時間内のフィニッシュをあきらめ帰港することの連絡あり』と伝えて来た。〇〇はおじいさんが二人のダブル・ハンドで参加していたが、参加そのものを楽しんでいたに違いない。それではこちらも撤収しようか。

 すると最後に僕がドジを踏む。アンカーが上がらないので引き上げに行ったのだが岩を噛んだのだろう、水深40m位なのだがどうしても上がらない。ロープを足で踏んで腕に巻きつけようとしたらどうした弾みか足に絡まって転んだ。スキッパーが咄嗟に後進をかけてニュートラルにしてくれて助かったが、下手すると骨折やら落水やらになるところで、あわやの事態にド顰蹙もの。深い反省とともに夏が終わった。

 夏の海、また来年な!

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Categories:ヨット

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