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プーチン・プッツン

2022 FEB 28 1:01:43 am by 西 牟呂雄

 全くひどい話だ。外交も何もない。気に入らないからいきなりブッ放しキャタピラ音を鳴らしながら首都に侵攻。
 直前まで『部隊は撤収する』などと三味線を世界中に吹聴しながらいきなり開戦だ。これでは会談に奔走した仏独首脳は単なるコマ使い。筆者はハンガリー動乱やチェコに侵攻したソ連を思い起こす。
 プーチンは会見では原爆の使用体制を取ったとまで発表した(特別態勢のこと)。しかし一体どこに撃つのか、まさか自国の兵士がいるウクライナの都市ではあるまい。アメリカ?まさか。現ウクライナ政権をナチ呼ばわり(ロシア系住民をジェノサイドしたというフェイク)。映像を見るとやや太り、その目はイッている。体調に異変をきたしておかしくなったのではないのか。
 このナチ呼ばわりには伏線があって、ウクライナの2014年政変(親ロシア大統領追放)の際、その後の政権中枢にネオ・ナチ一派がいたことは本当だ。このことはロシア国内で思いきり報道されモスクワでは常識となっている。しかもその一派はアゾフ連隊として武装し、東部親派の支配地域で対峙している。その源流を辿ると大戦時に親ナチだったグループに行きつく。だがゼレンスキー大統領はユダヤ系なのだ。東部でロシア系住民を虐殺したと言うが、大きな声では言えないがこの8年というもの、東部ではそのアゾフ連隊とロシア派がズーッとドンパチはやっていて犠牲者も出ていた。
 キー・ワードはNATO。ウクライナの現政権はNATO加盟を謳っている。既にバルト3国がNATO入りした現在、プーチンにとってベラルーシとウクライナのNOTO入りはどうしても阻止したい。冷戦中は16ケ国だったのが今や倍だ。
 ロシア人の国境感覚がそうなのだ。ロシアの国境のロシア側には何にもない。20kmくらい寒々とした荒野が広がっているだけだ。モンゴルとも中国ともそう。そういう緩衝地帯がないとロシア人は落ち着かない。NATO加盟国と国境を接するなど以ての外という考えである。筆者はかつて日ロ合弁会社を立ち上げ、現在もロシア人との交流は続き、普通のロシア人の善良さをよく知っている。上記の国境感覚も彼らと話していて気が付いたことだ。北方領土の問題に一般のロシア人が関心がないのはそれが『島』だから。アッチラ大王に攻め込まれ、ジンギス・ハーンに蹂躙されたことがDNAに沁みついていて、中国人をキタイ・スキーと呼ぶのは契丹のこと。広大な緩衝地帯がなければいられない。
 それにしてもアメリカからあれだけの警告を受けたにもかかわらず、たった100発のミサイルでガタガタになったのはどうしたことか。ベラルーシから入って来た部隊は、遠く極東から移動して演習に参加していたことは確認されていた。今更、予備役招集、志願兵募集・外人部隊とか言っているが、何も対策していなかった、勇武のコサック発祥の地だというのに。8年前にほぼ無抵抗でクリミアを取られて東部を実効支配されながら何をやっていた。無論サイバーもフェイクも工作も(クリミアの時もやった)何でもやられ放題だったにせよ、こんなに脆いとは思わなかった。或いは首都籠城を決め込んで墨子の戦いでもするつもりだったのか。
 ついでに言えば、頭のおかしくなったプーチンにウクライナが蹂躙されている時に、アメリカもNATOも成すすべがないことをジーッと見ているのは大陸と北の国。ウクライナはソ連崩壊の際に保有していた核を手放した。台湾ははるかに小さい。放ったらかしにして見殺しにした場合、ニンマリするのは〇近〇と刈り上げデブだ。さっそく一発撃って見せた、こっちも向いてと言いたいらしい。
 一方、欧米がSWIFT排除まで踏み込んだ。ルーブルは暴落するだろうが、こっちも返り血は浴びる。例えばエネルギーが高騰する。合弁事業はどうなるのか・・・。モスクワ在住のロシア通日本人は『自分の人生が否定されたようだ』と嘆いた。彼はほぼ完璧にロシア語を理解するため、ロシアのTV・新聞ばかり見て普段はかなりバイアスのかかった意見の持ち主だが、さすがに落ち込んだ。
 ウクライナもウクライナで、2004年の通称オレンジ革命でEU寄りを主張したユシチェンコ政権は内部抗争に明け暮れ2010年時点ではロシア寄りのヤヌコーヴィチに選挙で負ける。オレンジ革命そのものもジョージ・ソロスに操られたものだと囁かれていた。

ユーリア・ティモシェンコ

 その頃、首相として人気のあった美人のティモシェンコは、後に逮捕される程利権を漁りまくった腐敗政治家。2014年にユシチェンコを引きずり下ろしたポロシェンコも大金持ちで、オレンジ革命を支援していたが実態は不正蓄財に励むマムシのような大統領だった。要するにロクな政治家がいたためしのない国家なのである。

 ところでこの電撃侵攻は(全く認められないが)見事の一言に尽きる。ウクライナはまだNATOではない、バイデンは部隊を派遣しないと言った、EUは簡単に騙せた、オリンピックは終った(パラリンピックはこれからだが)、相手はまさかと思っている、大地が凍って戦車が移動しやすい、今しかない、というタイミングを選んだ。アッという間に防空システムを破壊し、3方面からの侵攻を開始し首都を包囲する。
 東部でブラフをかけて主軸は北と南から、しかも主力は今なお温存している。
 そこから『非軍事化』と『中立化』を条件に話し合う、と誘いをかける、うまい。非武装中立とは恐れ入る。九条でも押し付けるつもりか、満州国でもつくるつもりか。
 ゼレンスキー大統領は前提条件なしでの交渉に応じるとか。核にビビッたか。
 その間、制裁は厳しくなり、ロシアの孤立感はますます募るだろう。だがプーチンはそんなことは織り込み済みで怯まない。多少の返り血は覚悟の上だ。国内のデモなんか知ったことか。
 それから感心したのは、SNSでも意識したのか攻撃対象を軍事拠点に絞り込んでいる(当然誤爆もしているが)。ロシア軍がアフガン(撤退を余儀なくされたが)やシリアでやったことは(シリア軍がやったことになっているが)皆殺しである。やってることは20世紀・昭和丸出しだが、戦術は今世紀・令和ということか。
 気になることが三つ。あの気が遠くなるほどの渋滞の中、トイレは大丈夫なのか?
 密集する両軍にオミクロンは蔓延しないのか。
 国連は話を聞く機関に過ぎないのか(そうなんだけど)。

 さて、NATOとロシアに挟まれた国。大国の思惑により攻撃を受ける国。言うまでもなく米・中の力比べのただなかにある我が国と台湾の置かれた状況と同じなのだ。この事態を見て大陸が台湾領の島を取りに行く、アメリカは辛くも助けて戦闘になる、自衛隊が周辺事態としてサポートし実弾攻撃を受けて巻き込まれる、大陸の意を受けた北の国がミサイルを100発我が国に打ち込む、安保条約発動の全面戦争、核!
 まだある。安部ートランプだったら有り得ないが、バイデンの裏切りだ。民主党は昔から大陸とツーカーだ。冷戦時代はソ連に大陸をけしかけるため密かに協力をしていた可能性が言われている。
 世界は中露・日米欧・インド(今回国連の理事会で棄権)・イスラム教国家・どうしていいか分からない国、の五つに分かれていくだろう。
 さて、どうする。核武装しますか、岸田総理!

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Categories:ロシア残照

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