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魂が宇宙を漂う話 Ⅱ

2022 APR 10 1:01:32 am by 西 牟呂雄

『おい。おい』
『え、なんですか』
『オレだよ。しばらくだったな』
『あぁ、オマエか。いや、久しぶりだな』
『5年経ったんだよ。どうしてる』
『相変わらずだよ。ヤボな仕事したり船に乗ったり、そうそう野菜造り手掛けてるけど、忙しいんだかヒマなんだか。ちょっとオマエどこだよ。顔がよく見えない』
『バカ。オレは死んだだろ。顔はもうない』
『・・・そうだったな。もう5年か。お前からはオレが見えてるのか』
『見えるわけないだろ。視覚が無いんだぞ』
『それもそうか。待てよ、じゃなんでオレだって分かったんだ』
『こっちは真っ暗なんだよ。そこを歩いているような漂っているような感じだな。そしたら不思議なことに少し光を感じたんでそっちに行こうしてたらなぜか夢から覚めたように意識がはっきりしてあ~っあいつのことだな~という一種の覚醒があって今だな。オマエだってことはすぐ気が付いた』
『凄いな。死んでエスパーになったのか』
『いや、今オマエは寝てるんだよ。その夢の中に入ってこうして話をしてるのさ』
『夢か。どうりでハッキリしないと思った。するとオレが死んだらその真っ暗なところでオマエとまたこうして話せるのか』
『そうはいかない。だってオレは幽霊といえば幽霊なんだから夢なんか見ないし』
『なんだよ。それじゃオレも生きている奴の夢に入り込むしかないのか』
『どうもそうなっているらしい。死んでから5年経って初めてだ』
『ふーん。そんならそのうちまだ元気な息子さんや娘さんの夢でその後のことを聞きゃいいだろ。よりにもよってオレの夢じゃもったいない』
『無論オレもそう思うんだがうまくいかないもんだ』
『多分何かのワザとかコツみたいなものがあるかもしれないな。修行が必要か』
『さあな。こっちにきてからじゃ修行も何も、体もなけりゃ時間の感覚もない』
『苦痛もないんだろ』
『まあそうだ』
『だがオレの所にはうまく来れたな』
『腐れ縁だからな。別に来たくもなかった』
『待てよ。オレはまだ生きてるんだよな』
『そりゃそうだろ』
『するとオマエはオレの夢が勝手に作っている幻という事だよな』
『断じてそれはない。オレがお前の幻想などありえない。断じて認め難い』
『まあそうだろうな。オレだってやだよ、何が悲しうてお前の台詞を妄想しなきゃならんのだ』
『よし、オマエも死んで見りゃいいだろう』
『それは構わんが死んだ幽霊同士は会うことも話すこともできないんだろう』
『だからさ、二人で誰かの夢に忍び込むんだよ。そうすりゃ勝手に話せるだろ』
『ほう、それならいいかも知れんが、誰の夢に入るんだ』
『タカオでどうだ』
『おっ、そりゃいいな。あいつとは決着がついてないからな』
『ん?決着?』
『ほら、今から半世紀も前に大モメにモメたやつ』
『あー、あれか。明日のジョーは死んでたのか生きてたのか、のことか』
『そうだよ。オマエが息を引き取ってたんだ、って言い張ったあれ』
『それはあの時に論破したはずだが』
『バカ言え。一方的にオマエガ返事をしなかったのはすでに死んでいたからだ、と論争を打ち切ったんだよ』
『一方的とは何だ。タカオは答えられなかったじゃないか』
『アイツは一言、ジョーは白い灰になった、と言ったんだよ』
『それじゃオレが論破したことになる』
『ならない。白い灰が死んだことを表していない。死んでいるなら白い骨でなければならん』
『同じことである』
『いや、違う。骨は灰ではない。DNA鑑定ができる』
『バカなことを抜かすな。よし、それじゃ今からタカオの所に行くぞ』
『上等だ。早く行こうぜ』
『早く死ね』
『何だと』
『死ななきゃアイツの夢に忍び込めんだろう』
『そうか・・・。オレは生きてたんだ』

 ワッ! 危なかった。だけど死ぬのもこんなものかもしれんな。

魂が宇宙を漂う話

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Categories:アルツハルマゲドン

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