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梅雨の合間の相模湾

2022 JUN 19 0:00:44 am by 西 牟呂雄

 強い雨が多い今年の梅雨。実は雨に降り込められてボヤーッと本を読んだり音楽を聴いたりしているのも実に居心地のいいもので、好きである。好きではあるが、飽きるのも早いのは事実だ。
 さる週末にクル-ジングの声がかかったので早速乗って来た。最近若いクルーが入って来たので、その練習がてら船団を組んで伊東まで温泉に浸かりに行くことになったのだ。
毎年この時期に行われていたレースがコロナで2年間できず、みんなうずうずしていたらしく、直ぐに話が大きくなった。伊東のハーバーはゲスト・バーズを拡張したのでウェルカムだったのもある。
 レース形式は取らずに、入港時間の申告制にして各艇バラバラにスタートし正確さを競うのである。
 で、風の予想であるが前線がやや南の大島あたりを通っているようで午前中は北からの微風、この時期は午後から南風(はえのかぜ)が吹くはず。それを狙って10時に油壷を出た。案の定1時間くらい行っても風はなく、オート・パイロットでのんびりとビールを飲んだ。まわりには先に出た艇が2隻ほど霞んで見えたが船名まではわからない。
 するとやはり南から風が入りだした。『セール・オン』スキッパーの声がかかり、配置に着いたクルーがスルスルとメインとジブを上げ、船が大きくかしいだ。グングン船速があがり7~8ノットで走り出す。アビームのランは最も舵を取りやすいので、新人に任せて風を浴びた。

オーナー・チェアの寛ぎ

 イルカの群れが横切った。すると逆側から別の群れが。何かを追いかけているのだろうか。
 この海の中で狩りが繰り広げられているのかと思うと何かと血が騒ぐ。
 相模湾はプレートがぶつかっているトラフであり、最深部が1,600mと日本の沿岸では最も深い。従って生物も多様であり、あのイルカもハナゴンドウかも知れない。
 我々はその多様な海の海面に点として今存在しているわけで、誠に心細いといえばそうである。うっすらと大島のシルエットが見えるがその向こうは太平洋であり、幅100kmに達する最速4ノットの黒潮が流れている。その端っこに点として存在する間は、いかにその営みが知的であろうと冒険的であろうと渚の砂粒よりもミクロであり、寂しいものであろう。
 船影が近づいてきた。見えた船名は僚船で行き先が同じ伊東だ。そしてその船は初島―大島レースを2連覇している快速艇である。向こうもこちらに気が付いて手を振るのだが、その表情は驚きに満ちている。それもそのはずで、我が艇は殆どのレースも早々とリタイアするので有名なのにこちらが先行している。向こうのスキッパーが檄を飛ばしたようで、それまでのんびり甲板から足をブラブラさせていたクルーたちが配置に着いた。
 こちらのスキッパーは秘かにエンジンをかけて回転数を上げ『あっちは今頃ベロンベロンになってるはずだからイジワルしてやる』と舵を握った(自分もベロベロなんだけど)。向こうがコースを変えてこちらの後ろを右舷から左舷に切り込もうとするのでこっちもそのコースを取って風が行かないように頭を取ろうとする。なかなかのデッド・ヒートに歓声が上がる。
 あっ風が上がった。風速計をみると17ノットくらいの強風だ。向こうが一気に勝負に出て、素早くタックし右舷に回ったところでもはや手も足も出なかった。やれやれ。もう伊東が見える。4時間半!我が艇の新記録である。

 遠くで護衛艦がへりの発着訓練をしているのが見えた。

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Categories:ヨット

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