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民自党総裁選顛末

2024 AUG 14 14:14:32 pm by 西 牟呂雄

『不破ぁ!考えてもみろ。何度もオレの顔に泥を塗ったあいつが総理になって国際会議であのモッサリした喋りをしたらG7の連中が何と思う。トランプと対談が成り立つと思うか?』
 朝生副総理はまくし立てた。相手は立候補に意欲満々の甲野である。
 甲野は立候補に当たって派閥オーナーである朝生の腹を探ろうと面談に及んだが、いきなりまくしたてられて鼻白んだ。実は不破・甲野・大泉のトリオで連合しようと秘かに考えていたのだった。
『お前らの後ろから糸を引いているのは須賀だろう。あいつの口車に乗ってロクなことになった奴はいねえ』
 図星を突かれてさすがに怯んだ。
『金の勘定もできねえ、横断歩道の渡り方も知らねえ、お前に総理が務まるか』
 
 その頃、大泉新次郎は旧阿部派の大物である元総理、大森喜朗と相対していた。
『君を総裁候補と考えている。今の民自党は若返りが必要だ。私と同志は全面的に協力するからウンと言ってくれ。君の親父さんの了解も得ている』
『いや、しかしまだ要職もこなしていない私では短命に終わるでしょう。私もまだ若輩者ですし、以前は不破さんの推薦人になっていますから』
『君、こういう話は一度乗り損なうと次のチャンスは掴めなくなるよ』
『親父は3回挑戦して総理の座を掴みました』
『ふふふ。まさか須賀にそう言えと言われてるんじゃないだろうね。あの男はゴリ押し一本鎗であんまり中身はないんだよ』
『いや、そうではないですが、須賀さんにはお世話になってますから』

 その須賀元総理は不破に向って訴えていた。
『いつものセリフ。そう「国民がどう考えるか」なんて甘っちょろいことを言っていては天下は取れない。自分から取りに行かなければなれないのが総理というものだ。分かっているのか』
 不破は視線を宙に泳がせた。須賀は続けて言う。
『推薦人は何とかしてやる。甲野も大泉も決選投票になったら君を立てる。全て私が根回しした。これが最後のチャンスだ』
 絞りだすように言うのがやっとだった。
『この身を須賀先生にお任せします』
 不破が須賀の軍門に下った瞬間だった。

 一方、したたかな朝生は低支持率に悩む現木志田総理にはこう言った。
『まあ、派閥の解散だの上限5万円のスタンド・プレーは頂けねえが、政策全般に関しては良くやっていると評価できる。防衛費増額なんか阿部のときでもなかなかできなかったしな。賃金アップも何とかしのいだところで裏金問題に足をすくわれた感があるが、この支持率では普通に考えれば再選は難しい』
『何とかご協力願えないでしょうか』
『オレは基本的にはアンタでいいんだが、仲間を説得するには条件がある』
『何でも言ってください』
『アンタが勝手に解散した宏池会の若手には選挙が不安な奴が多い。助けてくれって話がオレんところに引っ切り無しに聞こえてくる。元々オレんところは宏池会の流れなんだからそいつらがウチに来ることを押してくれ。大宏池会の復活を認めろ』
『そんなことは・・・・』
 翌日、木志田は総裁選不出馬を表明した。

 そのニュースを笑いを噛み殺しながら聞いていたのは幹事長の持木である。これで『裏切者』とも『令和の明智光秀』とも言われず思いっきり総理を目指せる、と。
 しかしながらエラソーな物言いと木志田総理に対する露骨なサボタージュで全く人望がない。有力議員が次々に派閥から出て行ったことがそれを物語る。一人では立候補すらできないのだ。平成研の栄耀栄華は見る影もない。そこで持木は暗躍する長老、すなわち既出の朝生・大森・須賀に会食を持ち掛けるが相手にされない。惨敗覚悟で出馬するのか、眠れない夜が続く。

 数日後、正体不明の令和のフィクサーとも日本のディープ・スロートとも呼ばれた集団は密かに一人の政治家を呼び出した。
『目下の民自党の混乱は国益を損ない続けている。木志田に諦めさせたのは我々だが、次は決めていない。目下の総裁候補が小物過ぎて話にならないからだ。あれでは複数候補が立ったとしても戦国時代にはならない。せいぜいチンピラの縄張り争いだろう。そこで我々は次は以下の3条件から絞り込んだ。まず総理経験者の再登板。次に自衛隊容認の憲法改正に積極的である。最後に財務省の言う事を絶対に聞かない。するとあなたの名前が挙がった』
『光栄です』
『官房長官には加藤勝信を起用すること。幹事長は福田達夫にする。これが飲めれば我々が木志田・朝生・大森・須賀を説得してあなたを支持させる』
『しかし・・・』
『絶対に小沢一郎を近づけるな。公明党の連立をやめて国民民主党と手を結べ。維新の会は我々が潰しておく』
『なるほど・・・・』
『では離党届をすぐに出して二階派のあとを継いでくれ。スペシャル・ミニスター・クラブ、我々SMCが全て手はずを整える』
 男たちが席を立った後に盤面を紅潮させた男こそ、阿部元総理の国葬において格調高い弔辞を読み、また故人から捲土重来を即された元総理野田佳彦であった。

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Categories:陰謀

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