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私家版 交遊抄

2025 APR 15 22:22:07 pm by 西 牟呂雄

 そろそろ時効なのでバラしてもいいだろう。以前に日経新聞の交遊抄の欄に友人が僕をフルネームで書いた。
 そもそもその男Aは高校の同期なのだが、〇大名誉教授である。もう一人名誉教授Yというのもいて、ずいぶん前にその交遊抄でAのことを書いた。やたら褒めてあってしばらくAの事とは気が付かなかったと記憶する。実はAは翻訳業界では大物で、知り合いの作家も同じく書き2回目の登場となったところで、日経新聞から同欄の執筆依頼があったそうだ。半年以上前の話である。
 Aの性格は偏屈であり頑固でもある。著名人の知り合いも多い。例えば自身英語でも小説を書く村上春樹、その村上春樹よりも先にノーベル文学賞を取ったカズオ・イシグロ等々。日経の編集部もその辺を狙ったと思われるが、奴はこう言った。『それじゃ面白くないからオマエを書いていいか』
 高名な作家が面白くなくて僕だとなぜ面白いのかが理解できなかった。『お前の本が売れなくなったり、せっかくの業績がパァになるからヤメロ』と言っておいた。
 しばらく音沙汰がなく、やはり作家でも書くのか或いは僕を書いた時点でボツになったか、と安心していた。
 さる土曜日の朝、ライン・メールが騒がしい。当然二日酔いだから放置していたら、僕の記事が出ていた。
 今から半世紀前の高校生がバンドを組んだり授業をサボって雀荘に入り浸っていた話が書かれていた。まさかそこまで書くとは思わなかった、無論一言も褒めていない。困ったことにウソでもないのでクレームの付けようもない。
 僕に執筆依頼があれば一矢報いることができるのだが、あるはずもない。そこでこのブログにあることないこと書き散らして溜飲を下げてみようと考えた。

―交遊抄ー秘密結社『五人会』
 わが母校の同期で秘かに集まる『五人会』という秘密結社がある。 当時詩人を気取っていた私だけが後に堅気のサラリーマンとなった。    
 一人目は仮にA氏としておくが、実は翻訳家かつ〇大名誉教授である。A氏とはバンドを組んだりして遊んだ。平日の昼間、入り浸っていた雀荘で私から大三元を上がった強者だった。
 次はC氏。根っからの無頼派で、ロクに教室には来なかった。何とか卒業した後に行方を晦ましていたが、私が上海で仕事をした際に偶然世話になり、旧交を復活させた。何と広告代理店の社長に化けていて驚いた。その後、会社を売り払って目下の職業は自称『プー』だという。C氏はA氏と同様に卓を囲んだのだが、私が親の時に滅多に見られない『流し満貫』を成立させる勝負強さだった。
 お次は紅一点。その美貌により全学年の高嶺の華だった。研究者の道を歩むかと思われたが何故か主婦に納まり、受験指導に当たっている。普段はおとなしいのだが時にプッツンする癖があり、ある考査で全科目白紙の答案を出して教師を慌てさせた逸話の持ち主である。
 最後は図抜けた秀才だったY氏である。実はこの男も〇大名誉教授であり、その高潔な人格により推されて危うく〇大総長になりかけた。『お前が総長になるとオレ等にどんな旨味があるのか』と聞くと、しばらく考えてこう言い放ったので呆れた。『生協で安くモノが買えるかな』
 この結社の特殊性は、なぜこの集まりなのかを外からは絶対に理解不能なことにある。専門・趣味・嗜好・性格全てが一致しない。話題も全くまとまりがない。これも母校の自由と多様性を許容する伝統の結実だとすれば、教育の成果と言えなくもない。

 武士の情けで本稿では仮名であるが、万が一本当に執筆依頼があった時は実名をバラす所存である。 

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Categories:遠い光景

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