Sonar Members Club No.36

カテゴリー: スポーツを科学の目で見る

スポーツを科学の目で見る (プロレスその2)

2014 JAN 31 9:09:06 am by 西 牟呂雄

スポーツを科学の目で見る、とは少し違うが、ビジネスの切り口で考えたい。全く賛同を得られたことは無いが、アメリカの3大スポーツ・エンタテイメントは①フット・ボール②メジャー・リーグ③プロレスと僕は考えている。人によって③にはアイス・ホッケーやバスケット・ボールを入れたいかも知れないが、そうは行かない。試合の規模・回数とかスーパースターの年棒からいけば議論の分かれるところであるが、多くのインテリ人種はJ-SPORTSで中継されるWWEのウィークリー・マッチの盛り上がりやペイ・パー・ヴューの視聴の実態を知らない。これ、見れば物凄い盛り上がりである。

プロレスのややこしさは必然的に食わず嫌いを生み出すので、ましてや我が国で行われているマイナー団体の試合を見た人は僕の回りにはまずいない。これはビジネスとしては小さいが、コアなファンで一杯なのだ。大(全や新ではない)日本プロレスや大仁田が率いていたFMWの、蛍光灯で頭を叩き画鋲を撒いたところへのボディースラム、或いは電流爆破などはマイナー過ぎて、痛みに耐える訓練は感動モノだが一般の視聴には耐えられないだろう。

それはさておき、WWEスタイルは、誰と誰がどういう確執で今日に至っているかのシナリオがあり、それに沿った試合スタイルをいかに造り上げていくのか、を楽しむ代物として完成されていて、エンタテイメント性は他を圧倒している。善玉・悪玉が決まっていて必ずトークが入る。中にはトークだけがクローズアップされるレスラーまでいて、趣向を凝らしまくる。そして会場にまで足を運ぶのは、階層で言えばB級の観客ばかりだからそれなりの『受け』を狙って、ツカミから盛り上げまで反応を確かめつつジョークも交えてやらねばトップは張れない。従ってスーパー・スターにはアクション映画に出演するようなクレバーな演技者の才能が求められる。ロックとかジョン・シナ達がそうだ。事実彼らの主演映画が撮られてヒットした物もあるのだ。なかなか日本のレスラーには真似できるものではない。ラッシャー木村の『馬場、このやろう!オレは焼き肉10人前食ってきて負けちゃったんだよ!今度は20人前食ってやるから、待ってろよ!』だったり『兄貴!今年もよろしくやってくれよな。』式のマイク・パフォーマンスはあったのだが、洗練度が違う。日本でも高田延彦や小川がやっていたハッスルがその路線を踏襲した。しかし、シナリオがプア過ぎてダメだった。曙が卵から生まれた赤ちゃんというシナリオなんて・・・。

WWEのビジネスとしての貪欲さはエゲツないの域に達していて、イラク戦争が始まれば英語の喋れないイラク人(実はペラペラ)をリングに上げる、アフガニスタンには米軍の慰問に行く、ひどかったのは日系レスラーのプロモーション・ヴィデオにはキノコ雲をバックにする始末。ヴィンス・マクマホーンは娘の結婚・出産・離婚までリング上のセレモニーにして客を呼んだ。この辺がプロレス愛好家の知性が疑われるところなのだが。しかしながら子供の頃にチラリと見たことぐらいはあるのだろう、僕の相手になったそれなりのインテリ・アメリカ人に、テリー&ドリー・ファンクとかハート・ブレイク・キッドといった名前を出して知らなかった奴はいない。ただ、ひとしきり盛り上がった後で『イッツ・フェイク』と呟いてニヤッとするが・・・。おまけにドーピング程度は当たり前で規制も何もないから体格の素晴らしいの何の。ただやりすぎで皆同じ禿げ方をする。ビリーー・グラハム、ハルク・ホーガン。エディ・ゲレロなぞはホテルで歯ブラシを咥えたまま死んだ。そのくせ日本の政治家並みに世襲が多い。オートンとかローデスとかフォン・エリックいったファミリー・ネームに記憶のある方もいるだろう(いないか)。ミル・マスカラスの所なんか親戚中プロレスラーだ。これは一つには遺伝的な身体能力もあるだろうが、一方相当おいしい商売なんだろう。どこの世界でも一流と底辺はものすごく差がつくものだが、中堅クラスの稼ぎは冒頭の①②より遥かに上のはずだ。これは日本でもそうで、野球の二軍選手やボクサーよりも年収はいい。但しレスラーになりたがる人数が比べ物にならない程少ないのだが。

それではアマチュアはアマレスしかできないかと言うとそんなことは、ない。あちこちにアマチュア・プロレス団体というのも存在しているのだ。現在ではマットもやわらかく、ロープもキチンと張り、レフリーもトレーニングを積んだちゃんとしたプロレスになっており、選手達も良く練習している。飛び技、投げ技、打撃技、スピード、そしてエンターテイネント性も申し分ない試合が行われている。中継(無論していないが)の為の解説も、倉持、古館、福澤といった名アナウンサーばりの調子で見事なもんだ。しかし40年前は凄かった。僕は偶然見たのだが関東アマチュア・プロレス・ヘビー級選手権は大田区立体育館で体操用のマットを敷いて行われていた。ロープなんかを張る機材も何も無い。ところがバレーボール・ネットに使う鉄柱が二本ポツンと立てられていて不思議な感じで始まった。暫くは投げ、締め、張り手と繰り出して四の字固めとか片エビ固め、といった基礎トレのような試合があった。ロープがないから跳ね返ることもできない。ところがリングアナウンサーが、メイン・イベントを伝えると雰囲気は一変した。ヘビー級の選手権はチャンピオン、ビッグ赤平 対 挑戦者ハンニバル清水の試合だった。ビッグ赤平はかなりの巨漢、ハンニバル清水は空手家のコスチューム。ハンニバルの反則パンチ・キックにビッグが耐える試合構成だったのだが、場外乱闘になった。リングを組み立てていないので、場外転落ではなく、単にマットからはみ出しただけだが、今まで意味なく立っていたバレーボールの鉄柱の意味がそこで分かった。そう、鉄柱攻撃なのだ。ハンニバル清水がビッグ赤平の頭を掴んでガシャーン、ガシャーンとやると赤平の額からホンモノの血がドバァーと吹き出して、床に座って見ている(アマチュアだから席なんかない)僕達の前でポタポヤ落ちる。ところが使用後に後が残ると叱られるらしく、スタッフがセッセと雑巾で拭くのがお笑いだが。最後は打点の高いドロップ・キックから見事なジャーマン・スープレックスでビッグ赤平の勝ち(体操のマットが床に敷いてあるだけですぞ)!ちゃんと試合後のインタヴューもあって額をタオルで縛った赤平選手がマイクに向かって吠える。回りは少年ファンが囲んでいる(僕以外)。

中継役「赤平選手、おめでとうございます。試合を振り返ってどうですか。」

赤平「いやー、ハンニバルがしぶとくて。危なかったです。」

中「ものすごい出血ですが、明日から仕事大丈夫ですか。」

赤「こんなケガ、一晩寝れば何ともありませんよ。はっはっはっは。」

後日分かったことだが、彼は一週間休んだらしい。いかん、このブログ趣旨と関係ないところに行ってしまった。

10.21横浜文化体育館

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スポーツを科学の目で見る(ソチ・オリンピック 外交)

2014 JAN 29 11:11:10 am by 西 牟呂雄

さて現在のテーマとして「ソチ・オリンピックに向けてースポーツを科学の目で見るー」としたものの、プロレスの話ばかり書いていてはしょうがない。安倍総理も開会式に行くようだし、多少のコメントをしなくては。『オリンピック阻止』のテロが起きてしまって、力の信奉者プーチン大統領は遮二無二押さえに掛かるだろうから、戒厳令下のオリンピックみたいになるかもしれない。シャレにならないこと夥しい。

安倍総理は開会式に参加するそうだ(しかも7日、北方領土の日!)。野田元総理はロンドンには行かなかったが、北京の時には福田首相が開会式に行った。しかしあれはただ見に行っただけなのか。胡錦濤主席や温家宝首相と会談したが、あの頃は毒入り冷凍餃子の問題があった時期でヘラヘラされても困るのだが、靖国には行かない人だったし尖閣も今ほどじゃなかったからただ会っただけだろう。それよりも同時期にいた ノルウェー タジキスタン といった普段なかなか行けないような国の首脳と会った方がよっぽど効果的なんじゃなかろうか。向こうも来てることだし。安倍総理にもプーチンとは実りある会談をにこやかにこなし欧米をヤキモキさせつつ、インドやトルコの首脳と旧交を温めるような腹芸を見せて欲しい。できれば中国・韓国が『しまった』っと思うような国であれば尚結構。例えば台湾。台湾は参加するのかどうか知らないが。或いは表立って会うわけにもいかない北朝鮮。政治とオリンピックが無関係だと思っているようなウブな人など世界中にいないのだから、おおっぴらに入国し『親善』と一言うだけで何でも有りではないか。日本版NSCもできたのだから僕を秘密工作員で雇ってくれれば喜んで行く(こんなことを書いた時点で秘密も何もないのだが)。

以前のオリンピックでどこかの国が選手団を送り込んだら、途端に何人も行方不明になったような事件があった。又、冷戦の最中には選手が亡命の挙に出たこともあったかと記憶する。ソチの位置からみてそれらしいことが起きはしないだろうか。苦しい練習に耐えたアスリートには申し訳ないが、情報戦・政治戦の最前線と捉えたら、願っても無いタイミングと場所。この道のプロだったらツッコミ所満載の開催地だろう。黒海に面しているのが実にエグい。コーチとかトレーナーをカヴァーにして潜り込ませればどうにでもなるように思うのだが。

ところで冬季オリンピックは圧倒的に白人のためのもので、カラードは東洋人ぐらい。半島のスケートが少しいる以外日本人だけではないか。その日本が幅を利かせ出すとルールを変えたりして露骨に排除のバネが働く。萩原健司が無敵だったときに突然ジャンプのルールを変えたのがその典型だった。フィギア・スケートもキム・ヨナや浅田真央が人気が出すぎると怪しいことにならないか心配だ。

僕は日本のメダルはせいぜい2個(銀と銅くらい)と見ている。それよりももっと地味な競技を見て(あんまり地味だとBSの放映も無いかもしれないが)健闘している選手に声援を送ることにしようっと。

 
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スポーツを科学の目で見る (プロレスその1)

2014 JAN 22 14:14:58 pm by 西 牟呂雄

前のブログで”開発の蹉跌”と称して材料開発の難しさをおちょくったが、あれは当時研究開発者達の前で本当に口に出した台詞が入っている。さぞ不愉快だったろうが真面目な人達に申し訳無いことをした。更に失礼ついでに、色々と実験することとプロレスの観戦は同じだ、という仮説をさんざん喋っていた。何を脈絡も無くとお思いだろうがこういう訳だ。

実際僕は研究者と言ってもいいほどプロレスには造詣が深い。村松友視の『私プロレスの味方です』という本が売れたが、あの本は当時のアントニオ猪木が唱えたストロング・スタイルの解説本で、無論読んだが正直言って、今更何言ってんの、ってな感想だった。比較されたジャイアント馬場のスタイルをショーマン・プロレルと貶めアントニオ猪木スタイルを過激なプロレスと論評した。これを聴いた馬場のコメントが残っている。「過激なプロレスって何だ。やってることは同じだろ。」・・・・さすが。もう一つ、猪木が進めた異種格闘技戦のハイライト、アリ戦に関しても「僕はアリなんか強いとは思わない。」と語ったとされている。ただ、ツウの間では猪木ーアリ戦はよくやったという評価はある。あれだけ直前にルールに文句をつけられて、何もできなくなった猪木がとっさに寝転んでアリの膝のみを狙わざるを得なかったのに、一応(一般的にはダレたが)15ラウンド戦ったのだ。

話がなかなか進まないが、僕レベルのツウになると大きな試合を見る際はその流れを事前に予測する。どこでどういう技を出すか、キメ技をいつ出すか、結果はどうなるのか。実際にはプロモーター(日本であれば所属会社)の意向が働きシナリオは出来ているのだが、そのシナリオを読みに行く訳だ。そしてそれがどの程度当たっているか、又は選手によってはどこまで忠実に耐えられるのかを見極めるのが醍醐味である。即ち『仮説を持って観戦し、結果を持って議論する。』と言った具合である。翻って実証実験をするに当たっては『仮説を持って実験し、結果を持って議論する。』のが王道であろう。何が何でも混ぜてしまえでは、何が開発要素なのかが分らなくなり、偶然の産物しか結果は出なくなる。これが本論の意味するところだ。

例えて言えば、新規プロセスの開発において製造機械のスケールアップを目指す場合には、開発側としてはいくつかの新規要素を盛り込んだ設備にしてコストを下げたいだろうが、良好な結果が出ても、どの要素技術が効き目があったのか、一概には言えなくなることがしばしばある。できればいくつもの設備を段階的に投入したいところなのだが、予算がかかり過ぎる、と誰でも悩む。こここそ『仮説を持って』であり、初めはその通りの結果など出ることは稀であるから徹底的に議論をするのである。

ところで、これほど研究している僕にして、プロレスの試合結果が全く思い描いたものとならないことも、たまにある。いくら専門家の間で議論しても『あれはないだろう。』となる展開に驚くような試合のことだ。古い話だが『ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田VS大木金太郎、キム・ドク』のPWFタッグ選手権がそうだった。馬場と大木はこのシリーズ初めから意地の張り合いが続き、キム・ドクは鶴田を挑発し続けた。セメント・マッチ(本気のケンカ試合)ならば大木の方が強くはないか、と研究者の間で囁かれていたのだが、この試合で見る限り拮抗していたと考えられている(後にシングルマッチで馬場に軍配は上がるのだが)。タイトル・マッチの結果は、滅多にないことであるがあのジャンボ鶴田が頭に血が上り、キム・ドクにパウンド(馬乗りになること)しての左右パンチのラッシュが止まらず反則負けとなった。鶴田という選手はプロモーターからは実に頼もしいレスラーで、自由自在に試合を組み立てられる逸材なのだが、この時の鬼気迫る止まらない連打は、長年プロレスを見てきた僕が怖かったくらいだった。一方のキム・ドクはアーノルド・シュワルツネッガーのレッド・ブルで、冒頭サウナでのケンカに登場した東洋人と言えばおわかりの人もいるだろう。アメリカで売れたヒールなのだがこれも実力は一流だ。恐らく鶴田がヒート・アップしている内に歯止めがかからなくなったものと言われている。同じような展開に、タイガー・ジェット・シンが猪木からタイトルを奪ってしまったNWF選手権が上げられる。やったこともないアルゼンチン・バック・ブリーカーが偶然決まってしまい、シンも引っ込みがつかなくなって、猪木がギブ・アップしてしまった。もっと昔にはデヴュー試合でルー・テーズ(とっくに全盛時代は過ぎている)相手にいいところを見せるはずだったのに、試合途中にくらったバック・ドロップで失神したグレート・草津。

この草津という人はナイス・ガイで引退後は日本バスコンというコンドームの会社で営業部長をやっていた。元々はラグビーの名選手で所属は当時のY製鉄だった。高炉の炉前において、超人的なスタミナとその怪力で数々の伝説を残している。酒なんか超人を越えた魔人と言われたそうだ。ついでに言えばグレート東郷の最後の教え子で、同期は星野勘太郎。

この話、少し長くなりすぎるので次回に譲る。

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