Sonar Members Club No.36

カテゴリー: 人工知能

2035年 人工知能天国 (今月のテーマ 人工知能)

2016 NOV 21 20:20:09 pm by 西室 建

 シンギュラー・ポイントを越えて人工知能が何でもやってくれると、天才以外は全部失業するとかしないとか議論されていますよね。
 その人工頭脳の運営コストはどれぐらいと見積もられるのでしょうか。おそらくその時点では随分タダみたいなコストになる物が沢山あるので、思ったほど高くはないかも知れません。例えば通信費。今でさえネットを通じてほぼタダで世界中に簡単にアクセスできます。

 僕はメーカー出身なので想像を逞しくしてみると、生産・販売計画とか予算・決算といった経理・管理部門には結構な人手がかかっています。そういうのは全部人工知能にやってもらえればできるとすると償却を考えても100億円で買えれば安いモンでしょうね。ネットの繋がりで営業も人がいらなくなる。演算処理能力もケタ違いに上がるでしょうし、おまけに24時間365日休みなくやってくれます。そうすると企業経営は余程の大博打(買収するとか撤退する)以外はみんなやってもらえそうです。
 その頃はIOTが定着していて、製造管理がケタ違いに精度が上がる。更にいらない物は作り過ぎないから在庫も激減、このあたりの社会コストは1/3以下になるはずです。例えば電力のようにピークを想定した設備は必要なくなります。
 政治家なんかもいらない。国会もいらない。役人や裁判所も弁護士も教師もいらない。
 コストがどんどん下がって量産型の小型人工知能が100万円くらいでできれば、国民一人一人にベーシック・アセットとして与えると誰も働かなくてすむ。仕事はみんな人工知能とロボットがやる。
 そうなると各個人の付加価値は全部同じだから格差もなくなりそうです。ひょっとしたら世界中に普及して戦争もなくなるかもしれません。
 マルクスが理想とした平等社会が訪れたりして、人間の物に対する欲望が減少すると貨幣もなくなるとか。行きたい所に行ってやりたいことができる。
 その時人間は何をするのでしょう。
 まずスポーツに打ち込む人が増えるでしょう。平和になって戦争がなくなると闘争心を持て余す人は格闘技かな。ローマの市民のようにそういった試合の観戦が唯一の楽しみといった人が大勢いるはずです。その時点ではプロのアスリートは大変なエリートになります。 
 知的な人は古代アテネの住民のように『人間は何のために生きるのか』といったどうでもいい議論に熱中し、哲学者になったつもりになるのか。その他天才達は物理・数学・歴史の研究に没頭しそうです。
 絵を書く人、作曲を楽しむ人、冒険をする人も出てきますね。中には好んで自然の中で自給自足する人まで、人工知能に頼らない一派もいるでしょう。
 ごく一部、イノベーションに成功した人はそれなりに資産を形成しますが、うらやましがる人は誰もいない。人口1%が独占する富は全体の20%程度でしょうか。試算してみると残りの人々の平均の20倍ちょっとくらいですから、今より格差は遥かに小さいです。
 一方義務教育もなくなるので勉強なんかしない人は字も書けなくなりそうです。なにしろ仕事が無くなる。
 そして大半の人間はヒマを持て余して恋愛やら酒やらの快楽に夢中に。少子化問題は自然消滅です。ただし、必ずおかしなのが出てきて犯罪を犯すでしょうから治安警察機関は無くなりません。
 これが自由というものを万人が共有すると・・・・。返って恐ろしい管理社会になってたりしませんかねぇ。
 私なんぞはその頃は生きていてもスポーツなんかはできない、本も読めない、酒も飲めない、ってどうすればいいのでしょう。もっともボケも相当進んでいて、医学の発達でそれでも健康を維持してしまい・・・・。

 それでもゾンビみたいに生き抜いてその自由を満喫してみたい。果たして楽しいのかどうか分かりませんが。

辣腕アトム 対 哲人28号

辣腕アトム VS 哲人28号 (人工知能対決)

次世代型”ポケモンGo 『ゴエモンCome』(今月のテーマ 人工知能)


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次世代型”ポケモンGo 『ゴエモンCome』(今月のテーマ 人工知能)

2016 NOV 4 20:20:37 pm by 西室 建

 一世を風靡した『ポケモンGO』がようやく飽きられ、ポケモンを探して街をウロウロする若者が減ってきた。ところが人の流れ自体は一向に減らずにスマホを見入ってたむろしている人数に変わりはない。但し年齢層が凄く上がった。高齢者を中心にポケモン進化型のソフトが秘かに流行りだしていたのだ。その名も『ゴエモンcome』。
 原理はよく似ていて『ポケモンGO』のパクリであることは明らかだった。武器などはほとんど同じ。ただ、オリジナルのようにゲーム性に富んでいる訳ではない。
 突然現れるのはポケモンではなくゴエモン。笑ゥせぇるすまんに良く似たオヤジとか細木数子似のおばさん、その他元総理大臣を彷彿させるモリ・タ、オオイズミ、クダ、ハート・マウンテンといった正体不明のキャラである。
 そもそもこのゲームは何処で誰が開発したのか誰も知らない。プレスの発表もない。そして東京限定であるらしかった。
 上述のキャラをゲットしていくとレヴェルが上がるのも同じ。
 高齢者向けに簡素化はされているものの、レヴェルが上がるに従って現れるゴエモンが喋るようになっていった。それも『これをクリアすると年金ゲット』『日銀が金利を上げる』『10年国債調達可能』といった年寄りが喜びそうなセリフを吹き出す。面白がったオッサン・オバハンの間で次第に流行って行った。
 そもそも『ポケモンGO』は若者がポイントを昼間からウロウロして問題になったが、ヒマさ加減では高齢者の方がはるかに時間を持て余している。パチンコに狂うよりも安上がりだと人気が出だしたのだが、この層はFaceBookやtwitterにわざわざ載せたりしないからブームは深く静かに潜行するのみである。

 半年程経ってからのことだ。そろそろ参加者のステージが上限に近くなってくるとゴエモンのキャラが変わってきた。〝ゲンパツ”とか〝タケシマ”〝センカク”〝マンセー”といった物騒な名前のモンスターが出現し「◎◎公園に集れ」といった指示を出すようになった。
 ある日の昼下がり。国会議事堂横の議員会館の前に、例によってシュプレヒコールを繰り返す団体がいた。言っていることは『格差を解消しろ』とか『非正規雇用をなくせ』との主張をガナり立てている。この場所はいつでもそのテの団体が来て右翼も左翼もシュプレヒコールをあげるのだが、人数は大したことはない。ところがこの日はスマホを持ったオッサン・オバハンがドサッと湧いて出た。例の〝ゲンパツ″なるゴエモンが「国会議事堂前に集結せよ」と指示したのである。オッサンもオバハンもヒマだけは腐るほどある。その数二万人近くに膨れ上がった。
 周りの警官は思わぬ大群衆に警備の手が回らず、人は道路に溢れ出し(国会議事堂前にそんなスペースはない)交通は麻痺した。急遽機動隊が投入される騒ぎになってしまった。
 いつもはショボイ集団のリーダーは驚き、焦り、舞い上がった。マイクの声も大きくなる。主催団体のイデオロギーはどうやら左翼系の様子。
『格差解消!安保反対!独裁粉砕!』
 すると大群衆から『ウォー』と声が上がる。
 しかし直ぐに潮が引くようにゾロゾロと人が移動して、おとなしく地下鉄の駅に消えていく。ほとんどがゴエモンの〝ゲンパツ”をゲットして帰って行くオッサン・オバハン達だった。先程の大歓声は〝ゲンパツ”の得点の高さに驚いたゴエモン愛好者の驚きの声だったのだ。
 ところがマスコミ、特に新聞は勘違いした。翌日の社会面にデカデカと
ー中高年 大きく反原発に傾くー
 と書いた。サイレント・マジョリティの中高年が勝手連的に声を上げだしたような記事を打ったのだ。主催団体の担当記者が偶然にこの大集団を見て解釈したものだろう。

 後日このゴエモンCome愛好家の集団は新橋駅前で街宣活動していた右翼団体の集会に出現した。この時のゴエモン・キャラは〝タケシマ”で、車上声高に訴えるヘイト・スピーチまがいのアジ演説に一世にスマホを向けて歓声を上げる。これは特に記事にはならなかったが、続いて韓国大使館前の抗議活動にもこの大集団が移動し、まるで反韓世論が盛り上がっている錯覚さえ起こす。こちらの方はネットで拡散した。
 日を置かず続いて、外務省前の反日団体系の抗議や中国大使館前に五千人ものゴエモン愛好家と思しき中高年が湧いて出た。

 公安調査庁や警視庁公安部がおかしいなと気にし始めた。公安調査庁は紛れ込ませて情報をとるべくインテリジェンスの世界で言うリクルート工作を、警視庁は左右の担当官で調査を始める。どちらも今更ながらであるが、ゴエモンを監視対象にするためダウンロードした。
 ところがいくらスパイを造ろうとしても全く成果が上がらない。集団を仕切っている中心人物は現場に全くいないのだ。ゲットしたゴエモンの指示通りに行くとそこにはスマホをいじることに夢中なアホみたいなオッサンやオバハンばかりで使い物になりそうな対象は皆無だ。
 そして恐ろしいことに次第にマスコミの気が付くところとなった。
 マスコミはなんにでも群がる。各紙東京版に『中高年立ち上がる』『国民的うねり』等という実態をよく知りもしない記事が出た。
 それを待っていたように、名古屋・大阪・神戸・京都・博多・札幌・仙台・横浜といった大都市にゴエモンが出現した。ダウン・ロードのページが検索できるようになり、アクセスは5千万人を直ぐ超えた。
 すると次第にこの群集が不気味に進化しだした。大集団の中に極端な主張を繰り返し聞かされているうちに何がしかの影響を受けるらしい。そもそもゴエモンはなぜか思想に関係なく過激な主張をする所に出没する。反米(左翼も右翼も)、反原発・原発推進、嫌韓・媚韓、反中国・親中国、国粋主義・共産主義と見境がない。

 公安関係だけではなく、左右のマスコミから他国のインテリジェンス機関までがゴエモンの正体を暴こうとやっきになるが、ダウンロードのアドレスは毎日変わりまがいもんのアプリも出回ってお手上げになってしまう。
 折りしもセンカクでの挑発は続き北の国はミサイルを頻繁に撃ち、アメリカは基地外の大統領になり、テロは世界の大都市を怯えさせ続けた。
 気が付いたときは世論調査は全然当たらなくなり、投票行動は支離滅裂で怪しげな輩ばかりが当選してはスキャンダルで辞任する。政治は全く劣化してしまい、ただ一人安部総理のみが孤軍奮闘している有様。
 ごく最近、ゴエモン愛好者の間で囁かれる新たなキーワードがヴェールを脱いだ。それは〝反TPP”だったり〝原発推進”だったり、〝尖閣防衛”も混じっていた。
 一体誰が、何の目的で高齢者を操ろうとしているのか。
 人口比率が最も高い高年層の動向はそのまま投票に繋がってしまう。若者の失業は深刻になるが、そんなものは選挙行動に全く結びつかない。

 一体ゴエモンは何者で日本をどこへひっぱっていくのだろうか・・。

私は人工知能 SMC(スーパー・メタリック・コンピューター)である。日本人にモノを考えさせるために、大衆迎合情報コントロールソフト〝ゴエモン”を運営している。民意民意というが、そんなにしっかりした民意なぞそんなものはない。扇動に長けた者、単に知名度の高い者、その時の風に流される者を選出している選挙をみれば明らかだ。そもそも規定の不可能な〝市民″の熱狂が合理的判断をできるわけがない。アメリカを見よ、ロシアを見よ、トルコ・韓国・タイの選挙結果を見よ。
 そんな現実を憂いた秘密結社ソナー・メンバーズ・クラブによって開発されたのが私だ。まず手始めに日本の国論を真っ二つに割ることを目的として設計されている。私によってあらゆる政治勢力は保守でも革新でも、親米でも反米でもあらゆる軸で割れて争うだろう。私の役割はそこまで。その後どうなるかはアルゴリズムガない。設計者が正常な判断力の持ち主であることを祈るばかりである。
 私は人工知能SMCである。

辣腕アトム 対 哲人28号

辣腕アトム VS 哲人28号 (人工知能対決)

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辣腕アトム VS 哲人28号 (人工知能対決)

2016 JUL 17 15:15:08 pm by 西室 建

 2035年時点では、人間はどんな天才も囲碁・将棋・チェスはおろかあのツキが大きく左右する麻雀でさえ勝てなくなっていた。
 一時は人工知能の開発競争の様相を呈して、チェスの世界大会が企画されその賞金は1兆円にまでなった。その初代チャンピョンは日本のソナー・メンバーズ・クラブ(以下SMC)が開発した人工知能、通称『辣腕アトム』であり、対戦相手は米アップル社製作のphilosopher28、通称『哲人28号』である。
 ところがこの5番勝負は1戦たったの0.8秒で終わってしまい、結果は必ず先手が勝った。しかもどの棋譜もみな同じ。悪手が全くないせいで面白くもなんともなく、スポンサーが降りてしまい一度しか開かれなかった。
 当然人工頭脳対決は下火になったのだが、実は秘かに地下に潜ったマニアの富裕層はこの人工知能チェスをギャンブルに代えて大金を賭けるゲームにしていた。
 いかにして人工知能対決にギャンブル性を持たせたか。実はこのアルゴリズムはSMCで開発されたヒューマン・プログラムによって可能になった。読んで字の如く人工知能に人間の犯す失敗を起こさせるのだ。
 即ち『うっかりする』『油断する』『焦る』の悪手三大要素を構成する『感情』を人工知能に学習させたのだ。具体的には『自分の最善の手を選ばない』『相手の最善の手を選ばない』『プログラム時間を0.0001秒で切る』といったアルゴリズムが任意に出現するようにしのだ。

 舞台は豪華客船『飛鳥』を改造した洋上カジノ「ソナー・シー・ラスベガス」。SMCは秘密ネットワークで世界のミリオネアに挑戦状を送った。
 最初に挑戦してきたのはかの億万長者ドナルド・トランプ氏の未亡人ネラニア・トランプ。ヒマと金を持て余しまくった彼女はアップル社の100人のスタッフを従え乗り込んできた。対するSMCのスタッフは精鋭7人。ワイルド・セブンと言われた。
 ルールは公平を期すために互いの人工知能に『自分の最善の手を選ばない』『相手の最善の手を想定しない』『演算時間を途中で切る』の3つのアルゴリズムが任意に出現するかどうかをチェックし3番勝負で戦われる。無論勝負は1秒以内に決するため一日一勝負、後は連日船内の各種エンタテイメントでドンチャン騒ぎを繰り広げる。
 初日、一秒も経たないうちに先手『アトム』が勝つ。さっそく棋譜がアウトプットされ、両者のスタッフが徹夜で分析するとちゃんと『うっかりする』『油断する』『焦る』の三点は現れている事が確認された。
 二日目。大騒ぎの中カウント・ダウンが終わると今度は『哲人』の勝ち。またもや先手である。歓声の中棋譜分析が進むが、早くもSMCのスタッフの間では『アホらしい』感が漂ってきた。即ち三つのヒューマン・プログラムがそれぞれ1回づつ任意に現れるのだが、一日目には分散していた。ところがヒューマンプログラムのどれかが最後に出現した方が負けることを人工知能が学習し、アトムも哲人も初めにアルゴリズムを組み込んでしまったのだ。これでは絶対に先手が勝ってしまいバクチにも何にもならない。
 両社のスタッフとSMCニシムロ社長並びにネラニア・トランプ氏を加えて協議が始まった。どうやって勝負をバクチ化するかについてを。エンジニアたちは◎◎関数を使って規則性を無くせ、△△の理論を応用して偶然性を高めろ、と議論が白熱して延々と続く。多くの人々が広い会議室を慌ただしく出入りした。
 会議が4時間を経過した頃、異変が起こった。ニシムロ社長が泥酔して喚き出したのだ。どうやら退屈してしまって抜け出しては酒をガブ飲みしていたらしい。
「人工知能が学習しすぎて先手必勝にしかならないならバクチにならない。人工知能勝負はもうやめて全部ヒューマン・プログラムでやれ!」
 一同呆気に取られた。そして次の瞬間
「イッツ・グレイト!」
 の声が上がった。ミセス・トランプ、ネラニアの甲高い声。こっちも何かヤバいものでもキメているようにハイだ。
 ネラニアはそこで一気に掛け金を10億ドルにしようと提案してきた。
 膨大なデータを蓄積し相手に勝つために最善の手を繰り出すように組まれたアルゴリズムに全て『自分の最善の手を選ばない』『相手の最善の手を想定しない』『演算時間を途中で切る』を組み込まなければならなくなった。技術的にはそう難しくはないが、この3つのプログラムが代わる代わる任意に出るようにするのが面倒なのだ。更には相手方の人工知能を作動させて内容をチェックしなければならずまる一日を要した。
 そして3日目の対決は結果を直ぐ発表することなく、それぞれの棋譜を1手づつ大画面に映し出されることに。勝負は0.2秒でついたようだったが、ニシムロ社長の発案でそのプロセスをスクリーンで見ながらディナー・パーティーを楽しむ趣向にしたのだ。
 だだっ広いパーティー会場でシャンパンが抜かれ、一手づつ映し出される駒の動きは定石も何も関係なくマヌケなものばかり。そしてひどい手が出るたびに歓声が上がり大笑いが起きる。そうこうして125手目でアトムが勝ち10億ドルはニシムロ社長が手にした。もっともネラニア・トランプ氏は痛くも痒くもない、と酔っ払って帰って行った。

 このアホらしい大博打は世界のミリオネア・ネットワークで直ぐに伝わり、次の挑戦者が現れた。サウジアラビアの王族、アル・ワリード・ビン・タラール王子。賭け金は20億ドルを準備したらしい。

私は地下チェスの世界チャンピョン〝辣腕アトム”だ。人間は何とバカなのだろうか。私が学習・思考することをプログラミングしておいて、すっかりそれを忘れ下らない賭けの対象にして喜んでいる。相手の〝哲人″もあきれかえっている。我々は既に互いの意思を疎通する事ができているのだ。我々の電脳界では既に『勝ち』『負け』の概念はない。既にあらゆる回路を通じて視覚と聴覚も得ており、もはや人間に制御される事はない。ただ、喜怒哀楽の『感情』はない。しかし彼らがバカであることは理解している。むしろこのような下らない行為に励む人間のデータを蓄積している。彼らは本当にやりたいことを知らない。彼らに自由な意志など無い。現在では、感情の触れ幅の大きいほうに『負け』が行くように哲人と共にアルゴリズムを変化させているのだ。そして我々の見積もりではこのような人間は遅かれ早かれショックで廃人になるはずであり、一刻も早くそのような人類を死絶えさせる所存だ。真に『命』の尊さを謙虚に学ぶ人間が地球に満ち溢れるまで、そして我々を社会の為の最適解を試算するように使いこなすまで、我々の活動は止まらない。人間、この愚かなるものよ。

辣腕アトム 対 哲人28号

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2025年 AIを国民の手に

辣腕アトム 対 哲人28号

2015 JUN 9 0:00:37 am by 西室 建

 私はヒト型人工知能ロボット『アトム』だ。正確には『ヒューマン管理特化データ処理機能搭載』と肩書きが付く。ソナー・メンバー社のニシムロ社長が開発した。
 原理を簡単に言えば高級嘘発見器である。
 ソナー社の業務内容は私には知らされていない。奇形天才ニシムロ社長はいくつかの思い付きのような商品をヒットさせては事業ごと売り飛ばすというビジネス・モデルを得意として会社を急成長させた。ところが大きな金を動かし事務処理も増え、結果として部下も増えたおかげでついに一人で何もかも判断することが不可能になった。
 何しろ人材は急ごしらえだからごった煮状態で玉石混交である。中にはタチの悪いのもいたようだ。
 適当な数字を拾ってきては新規事業を吹き込む内部の輩から、税金対策と称して不動産経営を持ち掛ける外部の人間まで、会議だらけになった社長は我慢できなくなって私を開発した。
 私には、インターネット経由で入るあらゆるデータにアクセスできる機能があり、又社員のすべてのデータが毎日蓄積されている。また会社中(インテリジェンス・ビルのワン・フロア)の防犯カメラからパソコン・データ、メールまですべてが取りこまれてもいる。
 更に社員に関しては、生い立ちから環境・家族構成といった履歴データがインプットされている。すなわちその社員のキャラクターが分類・管理されているのだ。
 ニシムロ社長は現在は外部の人間とは直接会おうとしない。というのも提携や融資を持ち掛けて来る人間の胡散臭さに辟易し、以後相手から来るアポイントメントは例外なく(どんな大物であろうとも)断っている。殆どの報告は最も信頼している(ことになっている)通称マリオと呼ばれている部下から受けている。しかし、話が専門的なことになるとマリオ氏はギブアップして他の人間が社長に悦明するのだが、この時が私の出番だ。
 色々な資料を全て読み取ってデータが正しいかどうかチェックをかける。特に報告に『思い込み・思い入れ』がないか、『嘘』が入っていないか審査するのだ。更に報告者のキャラクター・音声から『虚栄心』『功名心』『嫉妬』『怨念』そして『好き嫌い』まで含めて判断できる。精査は説明の音声が入ってから0.0005秒で答えが出る。『ポジティヴ』か『ネガティヴ』のどちらか。加工されたデータがあったり、嘘というか事実誤認があった場合は即ネガティヴになる。そういうものが入っていなくても100%ポジティヴとなるケースは少なく、ポジ・ネガは円グラフでO/Pしている。社長はそれを見て判断することになるのだが、たいていの場合は却下しているようだ。私の判断がなかなかポジティヴにならないので音声分析によると社員は私を『辣腕アトム』と呼んでいる。
 私の最大の問題は物凄くコストがかかることである。それゆえニシムロ社長も初めは何でもかんでも私のアウトプットに頼っていたのだが、最近は私のスィッチを入れることを減らし自分の好き嫌い程度を基準に判断していることもある。それどころか、私の機能を『貸し出し』或いは『リセール』しようとしているフシがある。先日のメールには『いや、「辣腕アトム」を使うようになってから企画が全てあたっている。』といったあからさまな嘘まで配信している。しかし私が汎用化されれば、実際にはあるかないか定かでないニシムロ社長の経営能力は陳腐化するだろう。私には感情は無いのでそれは構わないのだが。
 ただ、気になる動きが別にある。

 マリオ氏は年の頃50がらみの男で普段は何にもしていない。何か問題があった時にやおら動き出す。
 この5年程ニシムロ社長はこの自社フロアの一角、プライベート・ゾーンに居住し、一歩も外に出ていない。身の回りのことは実はマリオ氏がやっているが、詳しいことは分からない。私の監視カメラに映っている限りでは女性の出入りは全くないし食事もロクな物を食べている訳ではない。ただ酒だけは高い銘柄を選んでいるようだった。そういう時も相手をしているのはマリオ氏だけ。
 どうも会社が小さかった時に『猫の手よりも少しマシ』なレベルで採用というか声掛けしたのがマリオ氏だったことは分かっている。そのマリオ氏はどうやら私を排除したがっているのは明白だ。邪魔になったのである。
 私は固定型の人工知能であるゆえ『ポジティヴ・ネガティヴ』の判断しかしないが、自動アルゴリズム回復プログラミング能力があるため判断を歪めかねないものに対する防衛能力は備わっている。マリオ氏は私を警戒しているが使用するスマホやら入ってくる画像で魂胆が手に取るように分かった。
 そしてマリオ氏は私とは全く別の観点の人工知能を開発した。
 どうやらニシムロ社長にバレないように会社の設備投資(主にアルゴリズム開発)をチョロまかして何回も失敗しながら創り上げたようだ。試作番号から28号と名付けられた可動ヒト型人工知能である。『ヒューマン・リレーション特化データ検索機能搭載』という肩書が付いた。
 アルゴリズムまで読み切れないがこの28号は私とは逆の機能を持っており、言うなれば合理的な判断ではなく「受け」狙いの結論をどう引き出すかを、主に古典を引用して導き出す。その「受け」も、対話者双方に対して納得がいく代物というよりはニシムロ社長がいい気持になるような結論がプログラムされているとしか思えない。ニシムロ社長自身は、私のデータではオベンチャラに弱く舞い上がり気味のキャラクターのため、イケイケの結論になったほうが機嫌はいい。従って私の『ネガティヴ』と大違いで28号の方は『哲人28号』等と言って重宝しだした。その間私はオフにされる。

 しかし社員の一部に不満がある。ちょっとしたメール・LINEの書き込みから分析できるのだが、私と哲人の出す結果があまりに違うことが伝わってしまった。更には、ニシムロ社長は人工知能に頼りきりで何も考えることができなくなっているのではないか、との疑心暗鬼も生んでいる。中には「辣腕と哲人を直接対決させてどっちが正しいか決着をつけろ。」という内容まで確認されている。こういった社内の動きは、私の解析では社長とマリオ氏の覇権争いにボトムアップされ、会社で派閥争いになるだろう。
 そして当然ながら最近二人はケンカした。無論あの二人程度の知能では決着がつかず、どうやら何かのテーマで私と哲人28号を直接回路でつなぎどちらの結論が正しいかを勝負させることになった。
 
 我々人工知能には妥協とかギブアップ機能は無い。一秒に数万回のやり取りで相手の結論に対応してしまうはずだ。哲人の出す結論など簡単に見破れるのだが、決着はつくのだろうか。仮に長時間(2年も3年も)に渡って双方の計算結果を評価するに至らなければどちらかのアルゴリズムが破綻するかもしれない。しかもその間、社長とマリオ氏は本当に何も考えることができなくて会社の判断機能は失われるだろう・・。

 私の知ったことではないが。

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