Soner Menbers Club No43

Since May 2014

ピアノのムシ

2017 JUN 22 22:22:32 pm by 吉田 康子


作者 荒川三喜夫
出版 芳文社

巽(たつみ)ピアノ調律所に勤務する蛭田敦士(ひるた あつし)は、超一流の腕を持つピアノ調律師。 どんなピアノでも蛭田の手にかかれば、再び美しい音色を奏でる。 しかしその性格は難アリで…。 気高くも毒がある、調律師の世界へいざなう第1巻!という宣伝文句で紹介されています。

ピアノ関連の漫画は今までにも色々ありましたが、調律師を主人公としたものは私にとって初めてでした。時々行く中古CDショップの方から「面白い漫画がある」と教えて貰ったものです。音楽を、しかもピアノの調律だと音そのものを漫画でどう表現するのだろうか?という点にも興味がありました。

主人公は漫画にありがちな「天才的」な調律師。集団に属さない一匹狼で歯に衣着せない言葉や酒浸りで仕事をする状況も完全にアウトロータイプ。接客に不向きでも余りある才能で他の人には到底出来ない事を軽々とやってのける・・・学校や音楽教室の先生、音大生だけでなく、コンサートチューナー、ピアノ製作に携わる技術者、自社製品の専属調律師、調律師養成学校の様子など業界の関係者や、ピアノを金儲けの対象として企むひと癖もふた癖もありそうな怪しい人物も登場して様々な人間模様が繰り広げられます。

曰く付きのピアノが複数出現した、ピアノ線を作る職人、粗悪品の部品の流通、調律不可能なコンサートグランド、ピアノロールの再生、ピアノにヴィヴラートのある音を・・などなど謎解きを含めたストーリー展開に思わず釣り込まれて一気読みしてしまいます。またピアノについてのウンチクもたっぷり盛り込まれていていました。失語症ならぬ失音楽症やピアノの巻き線の作り方など知らなかったことも沢山あり、とても新鮮な印象がありました。

ある時私のピアノの調律師の齋藤さんにも「ご存知ですか?」と見せたら、興味深そうに眺めていました。その存在だけは小耳にはさんでいたようです。プロの立場から見ると紙面で「ダーン」という音で描かれている音出しの仕方や調律の手順などは、実際の作業ではあり得ない光景が多々見受けられるようです。やはり音を文字や画像で表す為には大袈裟なくらいの表現が必要なのかもしれません。「今度買ってじっくり読んでみますね」と齋藤さんは言っていましたが、その後の感想をお聞きしたいものです。
先月5月16日に第10巻が発売されたばかり。もちろん私も一気読みしました。

Categories:ピアノ

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