旧奏楽堂のオルガン
2019 MAY 2 0:00:10 am by 吉田 康子
先日、上野公園内にある旧奏楽堂(東京音楽学校奏楽堂)に行ってきました。お目当ては、藝大生によるオルガンコンサート。
実は来年2月に予定しているライヴ・イマジンの44回目の公演をここで開催する予定で、その下見という訳です。
この旧奏楽堂は2006年の第3回目公演から会場として何回か使っていましたが、当時オルガンは故障中ということで使用出来ませんでした。「ある音を出すと止まらなくなってしまう」そうです。
オルガンというと大きなホールの舞台背面に設置されているパイプオルガンか教会に置かれているものを想像しますが、ここのは小ぶりなもの。年代物の木製フレームが歴史を感じさせます。そういえば今迄この音を聴いた事が無かった、ということに気づきました。いずれハルモニウムを使用する編成の時に取り入れてみたいと思い立ちました。
好天に恵まれたGW前半ということもあって客席は8割がた埋まっていて、藝大の院生という小柄な女性が出てきて弾き始めました。その音は会場を圧倒するような大音量ではなくて、柔らかく鄙びた音色で、包み込むような感じ。まるで昔の手回しオルガンを想像させるような響きでした.
今回のリハーサルでも以前の故障は直っていないらしく、最上段の鍵盤は使わずに演奏するとのこと。建物自体は耐震補強と称して数年間閉館していたのに、オルガン自体は修繕していないのかもしれません。
またパイプオルガンによくあるように、客席背を向けて演奏者が中央に座って弾くものだと思っていましたが、ここの場合は横向きになっていて手元が見えないのが残念。もし動かせるものであれば、演奏の時くらい移動するか、せめて向きを変えて貰えたら、鍵盤やストップ、ペダル部分が見えて視覚的にも興味深いのにと思いました。
演奏に際しては譜めくりとストップの操作の補助をする人が後ろに座っていて、曲の途中でお手伝いしているのも、不思議な感じでした。私は学生時代に3段鍵盤で2オクターブペダルのエレクトーンを弾いていた事があって、たぶん演奏に際する操作については近いかもしれません。でもそれは電子楽器だけあって前もって音色の変更やリズムなどの組み合わせを記憶させたメモリを使っていたので、このオルガンの操作はとてもアナログな雰囲気。
演奏された曲も馴染みの無い作曲家の曲ばかりで、知らない世界を垣間見た気がしました。レトロな建物のホールにある日本最古のオルガンを見て聴いて、なんだかタイムスリップしたような気分に。この味わいのある楽器をイマジンのプログラムにどう取り込むか?また楽しみが増えました。
Categories:ライヴ・イマジン
西村 淳
5/2/2019 | 8:19 PM Permalink
ほほう、難ありとはいえコンサートに使用できるのであれば旧奏楽堂のオルガンが蘇ったわけですね!貴重な情報です。
プログラミングの幅も広がるし、「可能性」をプラスしていただき感謝します。
これからは曲のチョイスもさることながら、このオルガンのAに合わせてほかの楽器が耐えられるか、絶対音感を持った人はちょっと大変かもしれません。でも20世紀に造られたもののようなので大丈夫でしょう、きっと。
吉田 康子
5/4/2019 | 1:26 AM Permalink
オルガンはピアノやチェンバロとは全く違った音色ですから、選曲の幅も広がりますね。調律についてまで考えが及びませんでしたが。
maeda
5/4/2019 | 11:25 PM Permalink
今月、祐天寺の教会でオルガンと一緒に何曲か歌曲の伴奏をします。辻オルガンの初期の作品でパイプはドイツから輸入した物らしいのですが、ピッチは445Hzでオルガンに合わせざるを得ません。昔、チリのカテドラルでもオルガンと一緒にミサの伴奏をしましたが、石造りで残響が長く余韻で音楽を作る感じでした。オルガンもお国柄があって、ドイツとスペインのでは大分違うようです。奏楽堂のはイギリスのようですね。
吉田 康子
5/21/2019 | 2:07 PM Permalink
オルガンの場合は、特に設置されている建物が楽器の一部のような感じがします。コンサートホールにある大きなパイプオルガンではなくて街の教会に置かれている小ぶりのものの方が、人々の生活に身近な存在として音楽を与えてくれるのでしょう。教会でのコンサート、楽しみに伺わせて頂きます。