Soner Menbers Club No43

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ブルガリアンリズム

2022 APR 15 11:11:58 am by 吉田 康子

4/9土曜にライヴイマジン49でストラヴィンスキーの「兵士の物語」とバルトークの「コントラスツ」を演奏した。
コントラスツは、私のバケットリストの筆頭にあった曲で長年温めてきた。ベニーグッドマンとシゲティの委嘱により作曲され、この2人とバルトーク自身のピアノで初演された。初めて聴いたのがいつだったか思い出せないけど、バルトークというと独特の民族的な和声とリズムでなかなか仲良くなりにくい気難しい印象がある。でもコントラスツは出だしからゴキゲンな曲。え?バルトークにもこんなお茶目な面が?と意外に思ったのが第一印象。

ブージー&ホークスの楽譜表紙には眼光鋭く不機嫌そうな表情のバルトークの顔写真がドーンと載っていて、見るたびに視線を避けるかのように裏返してしまう。「この曲は弦楽四重奏より難しい」と師匠が言うだけあって、アマチュアは恐れをなしてしまう「手を出してはいけない曲」のようだ。だからって気に入った曲に挑戦するのは自由なのに。

人生後半戦、逃げたまま死にたくない。何人かに共演を持ちかけては断られた末にようやく今の共演者が一緒に挑戦してくれると返事をしてくれた。「同じ編成なら兵士の物語もある」と師匠の言葉に恐れをなした幹事がコントラスツ回避を勧めてきた。一応楽譜を買って検討したけれど「やっぱりコントラスツでしょ」という思いは変わらず。「本当に大丈夫?」と何度も念を押されたけど「やるなら今でしょ!」と。でも結局それだけでは短すぎるということで、兵士も演奏することになった。まぁ折角の機会だし。

実際にはそこまで言って押し切った割には譜読みが思うように進まない。しかも3楽章の「ブルガリアンリズム」には本当に苦戦した。3+2+3 2+3という複合拍子の踊りの曲。8分音符の速さが330というメトロノーム指定。それだけで眩暈がしそう。私がリズムを刻み和声を添える役割で他の2人がそれに乗って旋律を奏でる。3楽章の中間部分にあたる。

先ずはウンチクからとブルガリアンリズムについて検索すると沢山の資料。そういえば私の手元にもあったっけ。お宝を持ち腐れないよう役立てないと。

そして動画を検索すると「ポップン」という色々なリズム演奏のゲームも。
クラブDJなのか、ノリノリで「東ヨーロッパの豊かなリズムが洪水のように溢れ出す。激しいビートを叩き出せ!!!」というコメント付き。ポップン

またボカロの初音ミクがブルガリアンリズムで歌って踊っている動画も沢山。初音ミク

な~んだ、要するに「ブルガリアンリズム」というのは、ノリのいい「踊りのリズム」のリズムパターンのひとつとして既に周知されているということを実感。目から鱗、というより知らないのは私だけ。

師匠や共演者には「旋律に合わせろ」と言われたけれど、こちらが拍子を刻む立場だから「私に合わせろ」ではないか?と反論した。でもそれは私自身がきちんと拍子をとれてこその話。大前提が揺らいでいる状況では進展が望めない。先ずは私がしっかりリズムをとらなければいけない。

さてどうしたものか?共演者からはそれぞれの経験を踏まえた拍の数え方とかを教えてもらったけれど、各自やり方が違うので私の理解には繋がらない。その状態で他者の旋律の細かい動きにまで合わせるのは土台無理な話。枝葉末節にまでこだわれるような余裕無し。必要最小限のお役目を果たす方針で行こうと思った。重箱の隅をつつくより大事なことは他にある筈。

或る人から「これはテイク5と同じではないか?」とアドバイスをもらった。最初は「何故ここでトンチンカンで訳の判らないことを言っているのか?」と腹立たしくさえ思ったけれど、実際にyoutubeで聴いてみるとドンピシャの大当たり。テイクファイブ

もうこれにすがるしかない。メトロノームに合わせるより遥かにノリがよくて、何倍も数えやすい。拍数を全部合わせたら13拍子かもしれないけど、そうじゃない。これは踊りの曲だ。前半の3+2+3と後半の2+3のそれぞれ最初の拍が合えば曲が進む。境目にご丁寧に点線が楽譜に記載されている。そう割り切って弾けば合わせどころの和声もいい感じに響く。結局のところ本番前の最終練習で何とかマシな状態になり、見切り発車で当日に至った。

それでも本番でピアノに向かった時には「やっと人前で弾ける!」と演奏が実現したこと自体が本当に嬉しくて、ワクワクするような幸せな気持ちで一杯だった。弾き始めから感無量の思い。オメデタイと言われるかもしれないけど、そんなに深刻になってどうする?派手なグリッサンドもぶつかり合う和音の連打も楽しい!もちろん難曲なので技術的にも音楽的にも限界があり感傷に浸っている間は無い。反省点も沢山。それでも挑戦して精一杯の努力を重ねた結果の自分の実力だと納得している。

この点で意識の高い共演者との大きな差を実感。そうは言っても本番の録音を冷や汗もので聴き終えた今、所詮アマチュアの大冒険、実際にはそれほど大きな差があるとは思えない。

今後も自分の演奏に「満足」などと到底出来ないと思うが、そうであっても試行錯誤を続けながら大好きな曲に挑戦し続けていきたい。周りに迷惑をまき散らしながらも、やった者勝ち。アマチュアだと言い訳にするつもりはない。でも実力を持ち合わせていない自分の立ち位置を客観視くらいは出来る。そんな私にも音楽は平等に存在すると信じている。

Categories:ライヴ・イマジン

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