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イタリア人の考える神道

2016 DEC 27 21:21:10 pm by 野村 和寿

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今回は、フォスコ・マライーニ著『随筆日本 イタリア人の見た昭和の日本』(2009年松籟堂刊)という本を紹介します。この本の著者、マライーニは、戦前の1938年に、日本の外務省の国際学友会の奨学金を得て日本に留学、1941年には京都大学でイタリア語を教えていましたが、1943年に日本と同盟関係にあったムッソリーニの後継であるサロ共和国への忠誠を拒否して、名古屋の敵国人収容所に収容され、1945年敗戦後に開放され一時帰国し、1954年に再来日したという数奇な経歴をもった学者です。写真家、人類学者、東洋学者です。2001年には25000枚にも及ぶ彼の撮影した写真が、東京・恵比寿の東京都写真美術館で「イルミラモンド レンズの向こうの世界」と題する展覧会まで開かれたくらいです。
さて、本書はイタリア語で書かれ、それを*人の日本人が翻訳したという名作ですが、なにしろ、大著728ページにも及ぶ大著で新刊で価格も7500円しました。今は、絶版になっていますが、古書店などで探すと3万円(アマゾン)で今でも入手可能です。
ちょっとかなり高価な古書ですが、人にもよると思いますが、ボクは読む価値があると思っています。

この本の面白いところは、ボクの感想は、以下のようになります。
・・・通常、なんとなく通り過ぎている当たり前のような日本の景色、仕草、行動、季節的な行動、初詣のような、初日の出のような。こうしたことが実は西洋人からみると、随分不思議に映るらしい。日本人のアイデンティティを喝破されているのに等しいかもしれない。

日本人のアイデンティティとはなにか?
神社にお参りする気持ちは? 山河を愛でる気持ちはどこからきているのか? 神仏をいっしょくたにし、信じる神仏はいないと、無宗教を気取るも、どうして初詣には行き、七五三には、そして、厄年には、神社にお参りする気持ちになるのか?
何故、おみくじをひき、お札を奉納して、商売繁盛を祈る気持ちにもなるのか?
日本人とはなにか?
日本人の中に脈々と流れているものを、外国人のマライーニに言われて、ようやくわかってくるとはいったいなんと言うことだろうか?
日本人自身が、西洋的になったと思っているのに、どうして、西洋人にはない考え方を元から持っているんだろうか?

ちなみに、マライーニの本書から「神道」の項目から引用しますと
「神道の世界はきわめて複雑かつ多様である。それは、いわゆる世界宗教とは本質的に異なり、創立者も聖典も存在せず、神学としての教義を形成したこともなければ、厳密な倫理的価値観をつくることもなく、純粋に日本国内の民俗信仰のレベルにとどまった。神道は日本のあの魅惑的な風景のひとつに似ており、梅雨の日の神秘的な雲煙に霞んで見え隠れする山々の頂、滝や森、遠くの寺院の瓦屋根などからなる眺望の全体像を、想像で補ってみるのと同じようにして思い描かなければならない。神道の生命は、信条や教義ではなく、シンボルや直感、示唆やささやき、仄めかしや、詩情、魅力的な典礼や儀式、建築や庭園、音楽や沈黙、だが時には突如として想像しい民衆的な歓喜の表現になることもある。その内にこそだるのだ」引用終わり。

マライーニのイタリア的な知性にみる、日本人というものへの眼差しは、正直とても優しく、ほっとします。そして、これから正月の初詣に、神社にいくときに、備えて少しでもこんなことを感じてみてはいかがでしょうか?

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