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私が選ぶ9人の指揮者による「ベートーヴェン交響曲全集」(1)第1番ハ長調作品21

2013 JUL 7 17:17:57 pm by

 

指揮者クーベリックは何と9つの異なるオーケストラを指揮して、ベートーヴェンの交響曲全曲を録音しましたが(東さん、おそらく、その全集をお持ちと思いますので、何かの機会に論評をお願いいたします。)、今回の企画は、9人の異なる指揮者でベスト盤全集を作ってみようという試みです。

つまり一度、ベスト1に選んだ指揮者は、以降の曲ではベスト1に選ぶことが出来ないという「制約」を敢えて付けて見ました。(次点には何回でも選出可)

今回は第1回、交響曲第1番ハ長調作品21です。

◎曲目についての若干のコメント

割と最近になって知ったことですが、作曲家として自分自身で作品番号を付けたのは、ベートーヴェンが最初だったそうです。つまり彼は初めから自分の曲を後世に残すことを意識していた、あるいは、自分の作品が、必ずや後世の人々から愛聴されることを確信していたのでしょう。

その作品番号から分かることですが、この最初の交響曲を世に問う前にピアノソナタは全32曲中の10曲(あの有名な第8番悲愴ソナタを含む)、弦楽四重奏も全16曲中の6曲を既に発表し、世間の好評を得ています。つまり、ブラームスほどではないにしても(彼は交響曲第1番で、着想から完成・公表まで20年以上を費やした)、ベートーヴェンも交響曲というジャンルに関しては、かなり慎重に準備し、満を持して公表したと言えると思います。

その第1交響曲、とてもわかりやすく、かつ、ムダの無い筋骨型の音楽構成、ハ長調という明るい調性、演奏時間も20数分と彼の交響曲の中では第8番と並んで短いものですので、正にクラシック入門者向けの曲ですが、長年クラシック音楽に慣れ親しんで来た人が聴き直しても、新鮮味が存分に感じられるのは、さすがにベートーヴェンならではと思います。また第3楽章、楽譜には「メヌエット」と表示されていますが、実体はテンポの速い「スケルツオ」で、音楽界の革命児であるベートーヴェンの面目躍如というべきでしょう。

◎私が選ぶ第1交響曲のベスト1

「トスカニーニ指揮 NBC交響楽団」

第1番で早くも超エース級を推薦して、正にもったいないのですが・・

このCD、晩年の彼の録音の中でも、特に録音が優秀で倍音も良く捉えられていて、感覚的にも充分に楽しめます。演奏は勿論、曲との相性が抜群に良く(花崎分類の1)、ベートーヴェンの意図したことを、最も自然な流れで余す所なく表現していることに素直に感動してしまいます。

特に第1楽章の冒頭、序奏の管楽器の和音を聴いただけで、いかに、トスカニーニが、この第1交響曲を気に入っていたか、ストレートに伝わって来ます。

トスカニーニは、この一番を1939年に同じNBC交響楽団で、また、もっと若かりし頃、確か1930年頃に英国BBC交響楽団を振った録音も聴いたことがあり、演奏そのものは、個人的にはBBC盤が、テンポの変化も激しく、曲のドラマティックな面が強調されていて面白いと思うのですが、録音等も総合的に鑑み、晩年のNBC盤を選んでみました。

◎次点の名盤を1点、選出してみました。

ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

この演奏をベスト1にしても良いと確信しており、正直、随分悩みました。この演奏も典型的な相性分類の1番で、晩年のワルターとは到底思えないほど、若々しく、また、みずみずしい感性に満ちあふれ、テンポの細かい動きも大変多いのですが、そのテンポの変化も不自然さは一切無く、自然な躍動感に一役買っている点が、特に驚異的でもあります。

また、演奏の本質からは離れ、枝葉的な観点かもしれませんが、あれほどソナタ形式の呈示部の反復が嫌いで(当のワルター自身、呈示部を反復して曲の冒頭に戻るのは、死ぬほど嫌で耐えられないと複数回、言明していたそうです。)、あの運命交響曲の第1楽章ですら反復しないワルターが、何とこの演奏の第4楽章では反復しています。(旧盤であるニューヨークフィルとの演奏でも同様)

トスカニーニ同様、ワルターもこの曲がとても好きだったのだろうと思います。

今回は、個人的にもとても仲が良かったと言われる両巨匠の演奏を挙げさせていただきました。 花崎 洋。

 

 

 

 

 

 

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