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インペリアル航空第109便その2

2017 JUN 4 15:15:16 pm by 野村 和寿

本の題名 インペリアル航空第109便とは実際にあった飛行機会社なのでしょうか?これをつきとめるのが、今回です。

インペリアル航空パンフレット

これが1937年版インペリアル航空イギリス南アフリカ便のパンフレットです。Special thanks to HP  airline timetable

エンパイア

インペリアル航空が実際に運航に使用していたショート・エンパイア飛行艇です。

インペリアル航空は確かに実在していました。インペリアル航空とは1924年から1939年まで実際に存在した英国の航空会社です。その後第2次世界大戦に突入したため、ブリティッシュエアウェイズ(今のとは異なります)と合併して、英国海外航空(BOAC)となり、さらに、1974年にBA(英国航空)となりました。ショート社のエンパイア、戦後には改造型の諸ショート・サザーランドといった飛行艇を擁していました。

インペリアル航空の運航図です。クリックすると拡大できます。この世界図では、イギリス・ササンプトンから南アフリカ・ヨハネスブルクに地図が伸びています。またアジアは、シンガポール、オセアニア・オーストラリアにまで便がのびていることがわかりますが、日本は当時まったくの蚊帳の外なのがわかります。

実際にインペリアル航空の運行表をみてみます。

インペリアル航空運航図

インペリアル航空イギリス・サウサンプトン・南アフリカダーバン間の経由図です。Special thanks to HP  airline timetable

インペリアル航空料金表

インペリアル航空の運賃表です。ロンドンから11番目のDurbanをごらんください。225ポンドとあります。これは往復の運賃です。Special thanks to HP  airline timetable

実際の費用は、インペリアル航空の航空運賃をみてみますと、ダーバン(南アフリカ)ロンドン(ササンプトン)間が、往復で225ポンド。

ちなみにインペリアル航空の時代設定である1930年代の貨幣価値は1ポンドが、当時の日本円で17円くらいでした。日本円に換算すると3,842円

なんと510万7393円! すごいお値段です。

現在の英国航空のロンドン・南アフリカ ダーバン便を検索してみます

ヨハネスブルク(南アフリカ)19:20発 ロンドン・ヒースロー着05:30着(いずれも現地時間 所要時間21時間40分 ファーストクラス77万6,700円)

1930年代はやはり飛行艇は10数名しか乗客が登場できず随分と割高だったのがわかります。

■飛行艇は英語ですと、Flying boat になります。Air shipですと飛行船です。船から航空機へ。確かに現在でも航空機の機長はみずからの機をシップと呼び、また自らをキャプテンと呼ばせています。この呼称も船の名残なのだと思います。

■インペリアル航空の運航時刻表をみましょう。不思議なことに、エジプトにはルクソール、カイロ、アレクサンドリアとなんども着水します。最初、これは何だろうと思っていたのですが、どうも観光旅行の一助だと推察します。つまりルクソールのファラオやピラミッドの上空を旋回し、乗客に観光してもらおうという計らいらしいのです。

また、着水場所を調べていくと、湖沼や河、港湾の最奥部のことが多く、なるだけ波静かな海を着水地点に選んでいたこともわかってきました。

インペリアル航空運行表

実際のインペリアル航空南アフリカダーバンからイギリス・サウサンプトン間の運航旅程表です。Special thanks to HP  airline timetable

南アフリカのダーバンを10:00発

1日め*ダーバン(南アフリカ)発10:00

*ロレンソ・マルケス(旧ポルトガル領モザンビーク現モザンビーク共和国)

着13:00 現在の名称はマプト モザンビークの首都 マプト湾テンベ河口

マプト

ロレンソ・マルケス(マプト)写真をクリックすると拡大できます。

*べイラ(同)その日の午後着 時間未定 ベイラ1泊

ベイラはモザンビーク湾をのぞむモザンビーク第2の港湾都市

ベイラ

1905年頃のベイラです。写真をクリックすると拡大できます。

2日め*ベイラ発 06:00

*モザンビーク着10:40

*タンガニーカ・リンディ(旧英国領 タンガニーカ共和国をへて現在タンザニア連合共和国)着14:26タンザニア南部にリンディ湾億に位置する。

タンガニーカ・リンディ

タンガニーカ・リンディ 写真をクリックすると拡大できます。

*タンガニーカ・タルエスサラーム(同)その日の午後着 時間未定 タラエスラム1泊 インド洋に面した都市 タンザニアの元首都(現在の首都はドドマ)

*なおタンザニア人は、第2次世界大戦では、イギリス軍ニ87000人が出征し、インパール作戦で、イギリス軍の一員として日本軍と戦ったことはあまり知られていません。

3日め*タンガニーカ・タルエスサラーム発08:00

ダルエスサラーム

現在のダルエスサラーム

*モンバサ(旧英国領 ケニア)着10:00モンバサはケニア海岸州モンバサ島の都市

モンバサ

現在のモンバサ 写真をクリックすると拡大できます。

*キスム(ケニア)着 その日の午後着 時間未定 キスム1泊キスムはビクトリア湖カビロンド湾奥部

4日め*キスム(ケニア)発07:00

*カンパラ・ポートベル(旧英国領 現・ウガンダ)着7:45

カンバラ・ポートベルはビクトリア湖北岸

カンパラ

ブルーの部分はアフリカ最大の湖、ビクトリア湖。その北部のわずかに黄色い部分がカンパラ市街です。写真をクリックすると拡大できます。

*マラカル(英埃=エジプト領スーダン 現・南スーダン)着13:25   マラカルは、スーダン上ナイル地方東部ナイル州

*ハルツーム(スーダン)その日の午後着 時間未定 ハルツーム1泊    ハルツームはウガンダから流れる白ナイル、エチオピアから流れる青ナイルの合流地点の南岸

ハルツーム

現在のハルツーム 写真をクリックすると拡大できます。

5日め*ハルツーム(スーダン)発07:00

*ワディハルファ(スーダン)7:45

*ルクソール(エジプト)着14:05 ルクソールはナイル西岸古代エジプトの都テーベがあった所。

ルクソール

古代エジプトの都テーベがあったルクソールです。ナイル川のほとりにあります。写真をクリックすると拡大できます。

*カイロ(エジプト)着16:55 ナイル川下流河岸の交通の要衝

*アレクサンドリア着 夜着 アレクサンドリア1泊 ナイル川デルタの北西部

アレクサンドリア

現在のアレクサンドリアの港湾風景です。アジアとアフリカ、ヨーロッパとを結ぶ要衝に位置していたために、当時飛行艇の基地として有名でした。写真をクリックすると拡大できます。

6日め*アレクサンドリア(エジプト)発05:45

*アテネ(ギリシャ)着11:05

*ブリンディジ(イタリア)13:30 イタリア半島の靴のかかとに位置するプーリア州 19世紀スエズ運河開通以降、アジア、アフリカとヨーロッパとを結ぶ欧亜航路などの発着地の一つ 森鴎外「舞姫」の冒頭に登場します。

ブリンディジ

ブリンディジの港です。写真をクリックすると拡大できます。

*ローマ(ブラチアーノ湖・イタリア)その日の午後着 時間未定 ローマ1泊

ブラチアーノ

ローマ近郊のブラチアーノ湖に飛行艇は着水しました。写真をクリックすると拡大できます。

7日め*ローマ(イタリア)発8:15

*マルセイユ(フランス)着10:50

*サン・ナゼール(フランス)その日の午後着 時間未定 サン・ナゼール1泊 仏大西洋岸ロワール川三角州の右岸に位置する。

8日め*サン・ナゼール(フランス)発09:00

サンナゼール

フランス・大西洋岸のサン・ナゼール 写真をクリックすると拡大できます。

*ササンプトン(イギリス)着11:00

サウサンプトン港はタイタニック号も1912年4月10日にサウサンプトンからニューヨークへ向け出航しました。写真をクリックすると拡大できます。

*ロンドン・ウォータールー駅 午後着 8日めにしてやっとロンドンに到着しました。おつかれさまでした。

ロンドン・ウォータールー

ロンドン・ウォータールー駅

そしてとうとうYou tubeで飛行艇の内部、サービス風景、飛行風景の動画を発見しました。BBCのHig Fryers How Britain Took to the Airという映像です。全部で58:11ですが、なかでも42:57前後からインペリアル航空のサウサンプトン発南アフリカ行きの映像が登場します。お楽しみにごらんください。

これも、BBCが制作したThe Last African Flyinfboat full documentary という1980年ごろのドキュメンタリーです。全部で1時間13分の長編ですが、最後にのこったエジプト・アレクサンドリアに残った飛行艇で飛行してみるという内容ですが、冒頭の4分までは、1930年代のインペリアル航空の実際の機内サービスが動画で捉えられています。飛行艇の内部が観られるなんてまさに夢のような瞬間でした。

 

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