Sonar Members Club No.27

カテゴリー: 演劇

「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 1990年上演舞台と「オンディーヌ」

2014 JUL 13 2:02:06 am by 阿曾 靖子

先月6月14日、米国の作家ダニエル・キイスが亡くなりました。
彼の名を一躍有名にしヒューゴ賞に輝いたこの作品を知ったのは
劇団昴 上演作品としてでした。(「文学座」から有志による「劇団雲」が生まれ
それが「劇団円」と「昴」に分かれた経緯があります)
1900年 千石の3百人劇場にて、主役は牛山茂。こちらのあらすじ
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n265/n265_04-01.html
またはWikiでも概要がありますが
このチャーリーという純粋で心優しい精神遅滞の大人、(のちに天才に
進化してしまう)主役は、作品の完成度の高さと衝撃度と共に
いわゆる「役者(男優)が演じてみたい役のベスト20」に入ると直感しました。
ストレートプレイでの上演は残念ながら最近あまり無いようですが、今年ミュージカルとして商業演劇ベースで秋に再演されるようです。
原作、映画、ストレートプレイ、ミュージカルと媒体が違うと、当然「別物」として味わうようにしていますが、「素材の優れた名作」としてお好みのもので機会があれば触れていただきたいです。

それからラヴェル「夜のガスパール」の項で、東さんが「オンディーヌ」に触れておられましたし、ジャン・ジロドゥの至宝の傑作、演じて見たい役(女優編)というカテゴリにも入るかなと思いますのでhttp://www2.tbb.t-com.ne.jp/meisakudrama/meisakudrama/ondinu.html
の詳細なあらすじもお薦めします。
これはまさに、劇団四季の記念碑的な作品でもあり、1981年版は、オンディーヌ、三田和代、ハンスは山口雄一郎。(初演は北大路欣也!日生劇場で大ヒットしたとか)
3度の水の精の呼び声に約束通り記憶を消されてしまったオンディーヌが、最愛の人の亡骸にそれとは気づかず、「なんて美しい人・・・。生きていれば、きっと好きになったでしょうに。」
という最後の台詞、透明感溢れる三田さんの声が今も耳に残っています。

「ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン」インカの黄金伝説と共に

2014 MAY 18 5:05:34 am by 阿曾 靖子

今月のテーマ「黄金」で記憶が蘇りました。

「ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン」

私にとって忘れ得ぬ衝撃を受けた名舞台ベスト3に入る名作です。
1985年パルコ劇場 にて
ピーター・シェーファー作 テレンス・ナップ演出
伊丹十三翻訳 山崎勉 主演

太陽を父とする帝国2400万人を従えるインカの王と
粗野な成り上がりスペイン将軍のピサロ
ならずもの167人でその太陽を生け捕りにしてしまうという
インカ帝国征服を主軸にした作品なのですが
作者のピーターシェーファーは「エクウス」「アマデウス」「ブラック・コメディ」等
20世紀のシェークスピアと賞され、私の観劇体験の中でも
この劇作家は突出しています。

巨大な日輪と縁取る花弁が印象的な装置の中で
驚きは当時まだ「演劇集団 円」の研究生だった
渡辺謙の鮮烈なデビューの存在感でした。
「アマデウス」におけるモーツアルトとサリエリのごとく、
この芝居では山崎勉と渡辺謙の対立する二人の主人公の
葛藤の上に構築されているのですが、このインカ帝国の王
アタウアルパのスケール感に、名優山崎勉も食われてしまう程の
名演でした。(事実そういう「役」でもあるのですが)
王の自由を得る為に、民が2ヶ月をかけて国中の黄金を運び込み
巨大な部屋を埋め尽くすという場面を今月のテーマ「黄金」で
懐かしく思い出してしまった訳です。
(長さが22フィート、幅が7フィート、黄金は高さ9フィートの
しるしまで積まれることになった、とあります)

ベスト3に入るもう一つの「アマデウス」は
サンシャイン劇場にて、確かこちらは1982年の日本初演時
あるいは翌年の最初の再演時、
(この作品は1979年にトニー賞を受賞しています)
主演の二人は松本幸四郎と江守徹でした。
終演後、確実に観客が衝撃で静まり返った様に感じたこの時の
感覚は、芝居にかかわる者として幸せと絶望感が
入り混じったような忘れ得ぬ体験でした。

演劇の悲しさー 名作名演の数々が「生もの」ですので
ご紹介していても悔しさがありますが
優れた作家の作品はまたどこかで上演されるかもしれませんので
ぜひ機会があれば見ていただきたいです。

伊丹十三訳のこの作品「ザ・ロイヤル・・」のあとがきに
「・・・・このような文化的、パラダイム間の葛藤は、実は手品の仕掛けに過ぎず
シェーファーはこの仕掛け使って、より深く、より根源的な、
人間そのものに根ざす対立へと観客を導いてゆく。
愛と憎しみ、希望と絶望、信頼と裏切り、純粋と打算、崇高と汚辱
祈りと呪い、偉大と矮小、純真と卑劣、許しと拒絶、連帯と孤独、等の
対立を、グロテスクな事件の連鎖のうちに綯いまぜて、
シェーファーは胸の詰まるようなやり方で、人間という不可解な縄をあざなって
ゆくのである。」と評しています。

劇書房ベストプレイシリーズ等、翻訳劇の戯曲として
作品に触れることは可能です。

シェイクスピア作品の魅力

2014 JAN 26 2:02:03 am by 阿曾 靖子

いまさら・・ですが
17世紀の英国の劇作家であるシェイクスピアの戯曲は
世界中の多くの国に翻訳され、上演され続けているという点で
まさにゆるぎない地位を確立し続けています。
もちろん世界的に上演されている人気古典作家も数名浮かびますが
翻訳者の数、上演形態も無限の可能性があり
「翻案」といいますが場所を他国にしたり、時代を現代にしたり
「映画」は当然ながら、「狂言、歌舞伎」にまで原作として登場する
マルチプレーヤーぶりです。
日本だけでも黒澤明「乱」、蜷川マクベス、野村万斎・・等等
作品の持つ強い魅力が、他ジャンルのアーティストを触発しつづけて
いるからだと思います。

「百万人の心を持つ」といわれる多種多様な登場人物の優れた台詞は
脇役からさらに新しい作品がこれも世界中で生まれていますし。

小田島先生の授業以前にも、「アンソニーとクレオパトラ」を偶然高校生の頃
大阪で見ていましたが、(このときのクレオパトラは栗原小巻さんでした)
以降は、「リア王」「ロミオとジュリエット」「マクベス」「ハムレット」
「真夏の夜の夢」「リチャード三世」「12夜」「テンペスト」「じゃじゃ馬ならし」
「恋の骨折り損」「ヴェニスの商人」「お気に召すまま」「空騒ぎ」
上演劇団も俳優座、文学座、円、青年座、東演、シェイクスピアカンパニー、さらに東宝やその他劇場企画など同じ作品を様々な場所と形態とキャストで観劇しました。
出演作は「真夏の夜の夢」(レ・キャンズ)ですが、なぜかご縁がある作品で
桐朋の専攻科時代の卒業公演もこれでした。

歌舞伎もそうですが、まさに「演出家と役者」が試されるお芝居でもあり
だから面白さが増す訳です。

一昨年早野さん出演の「ハムレット」を見て、このロシアの演出家から感じられる
不思議な風土感が交じり合い、独特の空気をかもし出していると感じました。
いわゆる「4大悲劇」といわれるシェイクスピア後期の円熟期
世界中で上演回数もトップスリーの作品です。

今回も楽しみに伺いますね!

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