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アンサンブル・フランのコンサート

2021 FEB 8 21:21:18 pm by 西村 淳

演奏行為は自己表現の一つの手段だとするなら、オーケストラの団員として弾くのははどうしても窮屈である。なぜなら指揮者という絶対的な権力者への忠誠を求められるから。私はあまりオーケストラの活動が得意ではない。その理由は自分でやることは自分で決めたい、この一点に集約される。すべての責任は自分で負う、というやり方。アブナイのは独りよがりになりがちでよく言っても孤高の人、悪く言えば奇人変人となる。究極はバッハの無伴奏チェロ組曲だけを弾いて一生を終えることなのかもしれないが、まさに奇人変人。自分で決めたくても私はそこまではなれない軟弱な人なのでなんとか浮世に居場所を確保できているようだ。
前置きが長くなったが、第一生命ホール(晴海トリトンスクエア)で行われた「アンサンブル・フラン」の演奏会を聴いた。

この団体はアマチュア合奏団の中ではトップクラスの実力を持ち、特にこのコンサートではライヴ・イマジンに参加しているメンバーが3人も弾いているし、高名な指揮者が振っている。プログラムは以下の通り。
指揮・高関健
曲目 
・ ブリテン:フランク・ブリッジの主題による変奏曲 Op.10
・ ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 Op.127(弦楽合奏版)
・ アンコール:ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 ~ 第五楽章 カヴァティーナ
メイン・ディッシュは勿論Op.127。ライヴ・イマジン45で演奏した記憶はまだ生々しく、弦楽合奏でやるとどんな演奏になるのかワクワク感もあった。プログラムによればヘンレ版のパート譜にピアニストのマレイ・ペライアがコントラバス譜を付加したとのこと。なぜペライアがこの曲に拘ったかは不明ながら弦楽合奏とするにはこのバスパートの補強は必須で実際その効果はコントラバスは2名であってもとても力強いものがあった。逆にこれ無しに弦楽合奏は無理じゃないかとも感じた。
一方、指揮者がいることで、冒頭に書いた通り弦楽四重奏としての自主性、自在性が希薄になる面は否めない。バーンスタインがウィーン・フィルを指揮した第14番の録音があるがここでも同じような印象、つまり違う音楽になっている。得るものもあり、失うものもある。この形態を良しとするのは指揮者がいることで見通しの良くなる「大フーガ」くらいかもしれない。

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