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『妖星ゴラス』(1962年)を今日的に観る その2

2018 MAR 3 9:09:39 am by 野村 和寿

その1はこちらです

妖星ゴラスが太陽系に侵入すれば、45日目の1982年2月中旬には地球に到達し衝突してしまう。そのときまでに地球は少なくとも40万㎞以上も軌道を大移動させなければならない。地球を動かすのに要する推力は660億メガトン、加速度1.10×10のマイナス6乗G。

国連科学委員会

NYで緊急開催された国連科学委員会。その席上で田沢博士は妖星ゴラスはこのままでいくと、1982年2月中旬に地球に最接近することを解く。背景の絵画は、アンリ・ルソーの絵画「戦争」のオマージュだと思われる。

これまで互いに争っていた米ソ両大国でさえ、地球それ自体の危機に際し、一致協力して、南極へのブースター群基地建設を急ぐのだった。

ロケット噴射口の高さは地上50m、面積は600平方㎞推力660億メガトンのジェットパイプで、これで100日間に40万㎞以上地球を動かす。世界各国から資材が続々と集結し建設された。

 

 

ブースター群基地は、ジェット噴射で、地球の軌道自体を動かしてしまおうという気宇壮大な計画。国連科学委員会の席上で、田沢博士(池部良)は、推力に水爆と同じ重水素と三重水素(無尽蔵の海水)を使い、巨大ブースター推進装置の基地からジェット噴射させれば、地球自身の軌道を変えることが可能であると諸外国の科学者たちに力説する。

 

さらに、妖星ゴラスの爆破計画も提案され、日本政府に、国連からなけなしのJX-2鳳号の派遣を要請される。妖星ゴラス爆破し、軌道を変えるべく出動。

JX-2「鳳」号

国連からの要請を受けてJX-2「鳳」号(写真左)が、妖精ゴラス爆破に向かう。母船「鳳」号のカプセル(写真右)が発射され金井隊員が妖星ゴラスに接近を試みるもあえなく失敗。母船はカpセルの回収には成功するが、乗組員の金井隊員は記憶喪失に。

世界が注目する中、JX-2鳳号は妖星ゴラスに接近、爆破を試みるが、重力が大きすぎて爆破は不可能。逆に、鳳号のカプセルで、妖星ゴラスへの接近を試みたが失敗。妖精ゴラスは、パロマ天文台発見当時は質量が6000G、JX-1隼号から送られてきたデータでは6100G、そして鳳号の観測データでは、6200Gと、惑星を吸収すながら肥大化を遂げていた。いまや地球の6200倍あることが観測で判明する。

JX-2鳳号乗組員で、偵察任務に出た、金井達磨隊員が、妖星ゴラスの輻射熱で、記憶喪失になってしまう。この「記憶喪失」というのも、なんだか、当時のネタという気もする。金井隊員は、幸運にもJX-2鳳号に回収され、無事地球に帰還するも、記憶は喪失されたまま。

金井隊員は、宇宙相の秘書でタイピストの野村滝子(水野久美)と幼稚園から高校までの幼なじみで、恋心もいだいていた。金井はすべての記憶を喪失しまっていた。なんとか記憶を呼び戻そうと奔走する滝子。

妖星ゴラスの重力により地球は既に膨大な被害をこうむっている。東京はほぼ水没。この映画のなかでの1982年2月に計算上妖星ゴラスと地球はぶつかる計算になる。

このままいくと妖星ゴラスは1982年2月中旬、地球に最接近するか最悪の場合衝突する可能性がある。日本宇宙物理学会の河野博士(上原謙)の新聞記事。

悲観した滝子(水野久美)は「いっそのこと妖星ゴラスと地球がぶつかっちゃえばいいのに」と嘆息する。妖星ゴラスと地球とが、衝突しないためには、あと36時間分の地球移動距離が必要と判明。足りない。さてどうなったのであろうか?

妖星ゴラスとの衝突を回避しようと試みる、南極のブースター群ジェット・パイプ基地は、100日間、総エネルギー660メガトンのジェット噴射で燃え上がることになった。

南極基地のジェットパイプ

南極計画 地球の軌道を変えるために、100日間噴射口の合計600平方㎞の噴射口から、推力660億トンのジェットパイプが勢いよく火を噴いた。

宇宙ステーションに設けられた「妖星ゴラス重力圏外観測本部」では、妖星ゴラスの地球接近を観測した。

妖星後ラス重力圏外観測本部

宇宙ステーションに設けられた「妖星ゴラス重力圏外観測本部」では、妖星ゴラスの地球接近を観測した。

重力圏外に設けられた観測本部では、地球が南極基地のジェットバルブ噴射により1.10×10の−6乗Gで地球の軌道が動き出したことが判明した。地球と妖星ゴラスの衝突はひとまず回避された。地球の軌道を元に戻すこれからが大変だというところで映画は終わっている。国連科学委員会からのメッセージ「皆さん、我々は勝ちました。妖星ゴラスは既に地球から離れようとしています。我らは全人類の平和への願いと協力によって勝ち得たこの勝利を永遠のものにしようではありませんか!」

1962年公開・東宝映画 監督・本多猪四郎 特撮監督・円谷英二 製作・田中友幸

 

*この映画の面白さ 時代背景が面白い

1979年のクリスマスでごった返す人混みのなかの、園田智子(JX-1「隼」号園田艇長の娘・白川由美)と野村滝子(宇宙省大臣秘書・水野久美)

ここで挙げられるのは1962(昭和37)年という『妖星ゴラス』が公開された年時代背景である。

確かにぼくの子どもの頃、昭和30年台には”Merry Xmas”などと飾って、頭に紙の帽子をかぶって、盛り場に繰り出すということがあった。今、考えればとても奇妙な日本のクリスマス的な風物だった。

映画公開当時の1962年から17年後の設定である1979年のクリスマスは、クリスマスの帽子をかぶった浮かれムードで銀座に繰り出す若者でいっぱい。宇宙パイロットは、アルバイトで、かぶりものの、ロボットのかぶりものに身を包み、サンドイッチマンをやっているという趣向。あくまでも未来はばかばかしいほどに明るい。

1956年に日本が南極観測を再開し、昭和基地を作ったことは、日本の国際社会への復帰を日本国民はこぞって喜んだ。

映画では、当時日本では最高の国際機関だと思われてもいた国際連合本部が登場する。1962年当時、日本は国際社会への復帰が国民大衆の大きな希望であったことが窺える。「国際連合」という戦後登場したインターナショナルな国際機関が、「希望の星」とみていた機運は確かに日本にあった。

国連科学委員会にはなぜか黒板が

国連科学委員会で妖星ゴラスの軌道を発表する**博士。黒板で発表するのが当時らしくほほえましい。熱心に働きすぎており、上司から「君ももう少し自分を大事に為なくちゃ」といわれている。この言葉は当時の映画によく出てきた台詞だった。

日本の英知では世界に貢献できる。ということも、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞以来日本が抱いていた希望だった。日本の学者が国際会議の席で、各国の代表のなかでも、指導力を発揮し、平和利用で地球的な規模の難題に立ち向かうという話も、当時的にはうれしかったのだろう。日本は戦争には負けたけれども、捨てたものではない知的な国家なのだと思いたかったのだろう。

パロマ天文台というのも、私たち男児には魅力的な名前だった。アメリカのカリフォルニア州サンディエゴにあり、当時世界最大の1.22mの反射式望遠鏡が完成したのは1958年のことだった。子どもの図鑑には必ずといってよいくらいパロマ天文台の写真が載っていたのものだった。

*******

写真上・国連という名前は1962年当時の理想の国際機関 映画内の「南極基地」にも国連のマークが見える。写真下・富士山麓宇宙港の建物。ロケは山手線内で一番高い建造物だった早稲田大学理工学部校舎が使用された。夢と現実をうまく組み合わせた例

妖星ゴラスの衝突を地球の軌道を変更することで、回避するというアイデアは、当時スタッフが東京大学理学部天文学研究室『妖星ゴラス』の軌道計算の黒板への板書は、当時最先端の権威、東大の理学部天文学科 畑中武夫教授門下・堀源一郎先生(のちに東大名誉教授)に、軌道計算を依頼した。大まじめにSF映画のスタッフが、ときの権威の門をたたいたこと。そして、ときの権威もそれ大まじめで応えたこと。これはかなり画期的といってよい。しかし、堀先生は、映画のために、計算に入ったが、なんど計算しても、妖星ゴラスが、地球と衝突してしまう計算になったために、軌道計算の修正になんとまる1日もかかってしまったとのことである。国際会議場で、田沢博士(池辺良)の背景に出てくる黒板への長い長い数値計算式は、実際の堀先生の板書とのこと。

ちなみに宇宙省富士山麓宇宙港の建物は、当時、東京の山手線内でもっとも高かった出来たばかりの早稲田大学理工学部の建物が使われた。この建物は、世界遺産ル・コルヴィジェの愛弟子でった建築学科の吉阪隆正教授の設計による建物群だった。

一方で、宇宙船に隼(はやぶさ)号とか、鳳(おおとり)号とか名前が付けられている。宇宙船内は、なんだか戦前の伊号潜水艦を思わせる作りで、蚕棚の乗組員居室、艦長の潜望鏡による宇宙視察など、さらには、通信や艦長の部下への命令下達の口調はなんだか、旧日本軍の命令口調と似ている。つまりまだまだ日本のなかに、戦前の日本軍のイメージがずいぶん色濃く残っていた。

地球は危機から脱した。すでに水没した東京を東京タワーから眺める野村滝子(水野久美)と、園田智子(白川由美)

1962年当時大人達がおおまじめで製作した『妖星ゴラス』は、1962年当時の大人と子どもの、日本の将来への夢がいっぱいつまった作品であったことは間違いない。

 

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