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道元流 鬼谷子の帝王学 Ⅰ

2014 APR 25 10:10:28 am by 西 牟呂雄

  日本に来て既に四半世紀が経ちます。様々な活動を通じて日本に溶け込み多くの知己を得ることができました。日本人は勤勉で良く働きます。いい面をたくさん見聞きしてきました。今後の日本人もまた、逞しく生き抜いていくことと思います。しかし、これは日本の友人がよく口にすることですが、例えば政治、外交や国際関係、といった表舞台ではしばしばもう少し上手にできないのか、との思いがあるようで、私自身も同感するところです。

  日本は稀に見る平等社会です。格差の声がありますが、祖国中国やアメリカの物凄さに比べれば、社会主義かと錯覚するほどの緻密な社会を形成しています。その分、優秀な人材はいるものの、エリート教育はおろそかになっているのではないでしょうか。私の道家として修行を積んできた経験を元に、中国古典の『帝王学』を現代の日本人に伝えたい衝動に駆られます。

  鬼谷子という道教の真仙がいます。歴史的には実在は確認されていませんが、孫子の兵法の著者の孫ピン(月偏に濱のつくり)の師匠となっています(実際の「孫子」は孫ピンではなくその先祖と言われる孫武が書いたというのが現在の考証とされていますが)。この人の「鬼谷子」という書物が数術の始まりと言われていて、その中で帝王道を説いています。それを基本に分かりやすくこれから解説していこうと思い至りました。
  初めに誤解の無いように強調したいのですが、この世の中は領袖とその施しを受ける側の二種類の人間に分かれています。これは何も差別だの人間の価値を決めるものでは無い概念として理解して下さい。天は一人として同じに造らない、皆個性を持って生まれてきます。その一人一人の価値は「社会の中に存在感がある」という一点において平等です。ですから社会の中にふさわしい「自分の場」を探すことは大変重要です。そして困難な人生の問題を知恵を使い自分を高めていくこと。古人曰く「定而生慧(ひと『定』すれば天に勝つ)」。知恵を用いて静かに思考を巡らせ信念を持って事に当たる、心を安定させることです。或いは「自知自明(己の道と実力を知る)」。もうお分かりと思いますが、支配される側の人とは別に奴隷になるようなことではなく、言ってみれば一芸を磨き安心立命を保障されるといった有能な人であり、領袖とは、帝王学を学ぶにふさわしく人の上に立つエリートのことです。

  さて、領袖の条件は原則を良く知ること。物事の発展の原則は以下四つと捉えられます。循環・変化・平衡・対抗。古代に於いても、単に前例踏襲・伝統墨守の姿勢では発展に至らず、破壊衝動や盲目的服従では事を成しえないと考えられていたわけです。誰が、とは言いませんが、前例踏襲の官僚主導を変えると言いながら、メチャクチャにした挙句に自己弁護に終始する政治家は、現代の日本でもダメだしされてしまいます。これは原則を知らず、或いは改革を行うに当たって『智』と『勇』を持ち合わせなかったからでしょう。

智、即ち① 分析・予測力 ② 判断力 であり、勇、即ち決断力、であります。

いかにそういった力をつけるか、これから解説していきたいと思います。

  ここで文化の発展の話をします。詳しくは拙著「『気』の医学で全ての病気を治すー屠 文毅(講談社)」に書きました。
第一段階は「声、光の文化」です。人類が言葉を話すようになった訳です。
第二段階は「図象文化」です。人類は記録を始めました。韓国国旗に描かれる太極図はこの時代に考案されました。この図象は人間社会には先に述べた循環・変化・平衡・対抗の原則があることを示します。古の賢人はこのことを理解し図象化しました。
第三段階は「数字文化」です。東洋では夜空を見て観察を始めます。月と星座の位置を見て十天干、惑星と星座の位置から十二地支、月の位置と満ち欠けから八卦を作ります。論語に言う「陰陽二気は六虚を巡り流れる」の八卦です。空間の概念が確立します。数術の考え方はこの頃誕生しました。
  ちょっと脱線しますが、日本の碩学、漢学者の安岡正篤先生は「長い時間をかけて観察された事象は科学・医学の発展により驚くほど実証された。」と喝破しています。陰陽二進法はコンピューター言語であり、また原子核と電子の+-でもあります。電子はK殻は2個L殻は8個まで入る、十干ですね。最外殻電子は8個入ると2個ずつ対を成して正四面体型軌道になり安定します。13族の不活性原子ですね。空間の概念の八卦になります。N殻は最大32個の電子ですが、易はそれに陰陽二種の六十四形体としてそれぞれの空間の意味を持たせています。
さて、第四段階は「文字文化」です。先人はこれらを記録し始めます。鬼谷子の数術もこの時代に体系立てられました。
第五段階は「科学文化」です。我々はこの時代にいます。科学が発達し、事象を解釈する時代です。
これからは未来ですが第六段階は「哲学文化」の時代と考えます。発達した科学を基礎に分類・整理します。
第七段階で「芸術文化」の時代となるでしょう。この段階では文字によって体現する必要がなくなり、音楽・絵画による表現が主流になるのではないでしょうか。
  ザッと過去・現在・未来を俯瞰しましたが、これは私の話しが長い歴史に基づき、未来も見据えていることを理解していただくためです。これから徐々に鬼谷子の解釈に入っていきますが、特に八つの原理(また八です)は記憶の隅に留めておいて下さい。それぞれ表裏の関係になる概念です。
  天・地・陰・陽・開・合・閉・蔵
の八つです。今日はここまでにします。

 

 

Categories:鬼谷子の帝王学

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