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蛙鳴蝉噪(地図)

2013 FEB 8 16:16:07 pm by mtsuzaka

学生が青山の大学の開門を待っていた。まともに大学に通わなかった私にとって驚嘆すべき光景だが、学部生ではなかった。受験生だ。寒い中、参考書を見ながら待っていた。私も人並みに受験勉強をしたはずだが、ほとんど覚えていない。新聞に掲載されたセンター試験の問題も眺めた。世界史の問題も英語のクロスワードパズルも一緒だ。正確には覚えていない。自分が住まない国の何百年も前の王の名前まで覚えなきゃいけない受験生も大変だ。イギリスに住んでいるほとんどの日本人は、ヘンリー八世の全員の妃の名前を知らなくとも、全く不便を感じなかっただろう。だからアフリカの古代文明を知らなくとも、私の残りの人生で不便を感じることはないはずだ。

もちろん、知識に無駄なものがあるはずもない。イギリスに住むなら少しはイギリスの歴史を知っておきたい。フィッシュ&チップスを食べるときは、たっぷりビネガーをかける事を覚えておく事だって必要だ。英語だって、算数だって必要だ。覚えておけば良かったと後悔する知識も人それぞれあるだろう。 私の場合は、地理だ。国の名前を聞いて場所が思い浮かばなければ、ソロモン諸島の地震で起こる津波を警戒したり、北京のスモッグに注意なんかできやしない。若い時の仕事の影響も大きい。港の場所や地域、港間の距離感を必要とされた。紛争やハリケーンなどにも影響されたからだ。

アフリカの内陸国などほとんど知らなかった。                          東京の真東を、ロサンゼルスと言ってかなり恥をかいた。                    セネガル(西アフリカ)とブラジルの距離が「すごく」近いことを知らなかった。                    だから、「地球オンチ」と言われた。ホッピーを飲みながら、大型外航船の一等航海士(当時)の先輩が「いろは」から、教えてくれた(現在は島原湾の船舶水先人のはず)。

私の地理のセンスが極端に乏しかった理由は、勉強不足と好奇心不足が主因であることは間違いないが、もうひとつの理由は地図だ。中学校、高校で使用する世界地図は大体がメルカトル図法だ。日本で使われるから「世界の中心」は日本だ。その為地図の両端にある大西洋が「切れて」しまう。大西洋の狭さや、アフリカ大陸と南アメリカが近いなど分からない。地図では、東京の真東は(大体)ロサンゼルスだ。「札幌ーミュンヘンーミルウォーキー」(同緯度だ)といったビールのCMもあったから、疑いもしなかった。でも、違う。

アフリカ内陸部の地名など読めなかった。アフリカだけじゃない、欧州や中南米も読めない地名が多かった。今ならGoogleで地名を入れると地図や詳しい説明が出てくる。 ナスカの地上絵の航空写真だって見ることができる。当時は引き出しから、地図を引っ張り出して、「xx頁のN5」 とかの升目の中の名前を探しだした。大分詳しくなった。 そのせいか、今では、地図を見ることが好きだ。変なやつと思われなければ、趣味は「地図を見ること」と答えても良い。地図を見ると思い出すこともあれば、想像できることもある。

アメリカの副大統領候補だった女性のように、アフリカを国と言うのは、ご愛嬌ではすまない。だから、小学校に入った息子へのプレゼントは、地球儀だった。彼らが地球儀をくるくる回す遊び道具にしたことは創造力のなせる業だ。しかし、それ以上に発展しなかったのは、私から遺伝した知的好奇心の欠如のせいなのだ。

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