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佐世保の思い出

2014 JUL 31 14:14:49 pm by 中村 順一

10年前の事件のあった佐世保市内の小学校

10年前の事件のあった佐世保市内の小学校

佐世保北高等学校

佐世保北高等学校

 

10年前の2004年の夏になるが、前職の仕事で佐世保に出張したことがある。当地の地銀である、親和銀行を往訪したのだ。長崎県北部の中心都市、戦前には日本海軍の基地があり、現在でも海上自衛隊と米軍が駐在する基地の町だ。長崎県にあるが、県の南にある長崎市とはかなり離れており文化圏は異なる。むしろ佐賀県の方が近い印象だった。

佐世保に着くと、町はその年の6月に起こった小6女児の同級生殺害事件のショックがありありと残っていた。被害者の死因は首をカッターナイフで切られたことによる多量出血であり、小学校の女子児童による殺人事件でかつ学校が舞台だったことから、佐世保市内に大きな衝撃と波紋を広げていたのである。

筆者は、面談の合間の時間を使ってタクシーをチャーターした。目的は市内にある展望台から、「針生の電波塔」を眺めることだった。針生の電波塔は大正時代に海軍が作った巨大な施設であり、太平洋戦争勃発時に真珠湾攻撃の暗号「ニイタカヤマノボレ一二〇八」を発信したことで知られている。佐世保市内から少し離れており、現地に行くには時間がない、せめて遠くから眺めたかったのだ。

ところがタクシーの運転手は、筆者が乗車して少し時間が経つと、いかに佐世保市民がこの殺人事件にショックを受けているかを語りだした。「殺された女の子の首はほとんど首の皮一枚になるほど深く切られていたのです。父親は毎日新聞の佐世保駐在員で本当に女の子を可愛がっていました。当時父親には、娘さんが怪我をした、と連絡が入ったのですが、怪我どころではなく、即死だったのです。事件後の父親の姿を見ましたが、本当に気の毒でした。展望台に行かれるなら、途中で殺人を犯した女の子の実家の前を通りますよ。山の中に親戚連中だけで離れて住んでいる家族なんです。」

殺人を犯した女の子の実家の前に行ってみた。数軒の家が建っていたが、凄く寂しいところだったのを覚えている。また殺人現場の小学校にも行ってみた。市の中心にある普通の小学校だった。こんな町の中心の小学校で惨劇が起これば、それは市民にとってショックだろうなあ、と思った。

銀行の役員に面談すると、この話になり、「市民にとって大変なショックでした。こんなことを2度と起こしてはいけません。市では”命を大切にする教育”を徹底する方針のようです。」とのことだった。

ところが、今回また類似の事件が佐世保市で起こってしまった。市内の高校に通う女子生徒がクラスメイトを絞殺し、頭部と左手首を切断するという考えられない殺人事件が発生したのである。10年前の事件とあまりにも似ている。今、佐世保市内は再び暗澹たる雰囲気に包まれているだろう。命を大切にする教育は功を奏さなかったのか。佐世保市では2度と同様の事件が起きないように子供たちに対し、授業や集会を行ってきた筈なのに。

今回の被害者と殺人を犯した少女が通っていた高校は、県立の佐世保北高等学校である。市内一、長崎県北部一の名門進学校である。筆者の前職時代には、この高校の出身の女性が部下だったことがある。聡明なワーキングマザーで、高い専門性を持った前向きな女性だった。地方都市にとって、その町一の歴史のある名門高校は極めて重要な存在である。町のほとんどの重鎮がその高校の卒業生だからだ。今回の事件はその点からも、長く佐世保市民に重くのしかかる事件になるだろう。

この事件は恐ろしい。日本のどこでも二度と起こってほしくない。佐世保市民だけではない。筆者も含めて日本じゅうが大きなショックを受けている。

 

 

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