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ライナー指揮「悲愴交響曲」

2013 JAN 28 6:06:03 am by

東さんに貸していただきましたCDへの感想、第2弾は、フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団演奏の、チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」についてです。

ライナーの演奏に接するのは、おそらく約35年振りとなりますが、全体として私が抱いていたライナー像とピッタリ合致しておりました。明快で、やや骨太の骨格、抑制の効いたやや禁欲的な表現、主旋律中心で副旋律はそれほど強調せず、そして人事権発動型専制君主的な指揮棒の元、緊張感漂う引き締まった音色、等々がこの曲にプラスに作用していると感じました。

勿論、個人的な感じ方ですが、最も良かったのが第4楽章。この曲の初演後、わずか4、5日で忽然と世を去ったチャイコフスキー、その死の原因については昔から色々と憶測が乱れ飛んでおり、最近では、当時、厳しく禁じられていた同性愛が国家当局の知るところとなり、国家により服毒させられたという説が最も有力ですが、このライナーの演奏は、この楽章を作曲中のチャイコフスキーの胸の内を表現しようなどとは一切考えていないようです。つまりひたすら純音楽的に均整のとれた美を追求していて、そこに好感が持てました。女々しいほどの未練や慟哭を全面に出したバーンスタインの演奏とは正に対極にあり、一つの立派な見識と思います。

同じくらいたいへん良かったのが第2楽章、かなり速めのテンポでスッキリと流していますが、それでいながら、長調で書かれている部分で何故か寂しさが漂っており、その点が特に見事です。

第1楽章は展開部金管楽器の抑制が効いた音楽美が見事ですが、第2主題の弦の歌わせ方だけは、好きになれません。盛り上がる部分で弦の音色が筋肉質となり、力づくで聴衆をねじ伏せようとしているが如き押しつけがましさを感じてしまいます。

第3楽章は、第1楽章の展開部のように禁欲的にアプローチしてくれれば良かったと感じます。おそらくは、シカゴ交響楽団の実力を表に出したかったのでしょうか? テンポが速すぎて、生理的に受け入れられません。敢えて言えば、トスカニーニの調子が悪い時の演奏のように、杓子定規で堅苦しく、聴いている側は音楽を味わう余裕さえ無くなってしまいます。しかし、この野外音楽的な演奏、きっとアメリカの聴衆には受けるだろうなあとも思いました。

以上、勝手なことも書きまして、申し訳ございません。前回のジュリーニのブラームス4番と同じく、大きな刺激を与えてくれ、いろいろと考えさせられる名演奏と思います。CDを貸していただきました東さんに、心より御礼申し上げます。花崎洋

 

 

 

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