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「夢」のかけら

2025 OCT 11 17:17:19 pm by 西村 淳

ブラームスの弦楽六重奏曲第2番にはよく知られたアガーテ・フォン・シーボルトとの恋愛エピソードがある。東さんのブログに詳しい。

ブラームスの “青春の蹉跌”

これを演奏するにあたり、頭の中が多くの??マークでいっぱいになってしまった。

第一楽章、主題の提示が一通り終わった後、それは突然やって来る。アガーテ、アガーテ、アガーテ!!と3回も叫ぶのである。最初これを目(耳)にしたときには、何という未練がましい男だ!と思ったものである。それもそのはず、自分から「自由がほしい」などと発言しておいて、アガーテからきっぱりと婚約解消を言われ別れたのに、6年も経ってから彼女の住むゲッティンゲンにのこのこと向かった。当然よりを戻そうとしていたに違いないがすでに彼女は別の男に走っており、失意のうちにその想いを託したのが弦楽六重奏曲第2番だ。
ブラームスははっきりものを言わない性格である。なのにどうして3度も?実際音楽的にはそれが2回であっても何一つ不自然さはない。

この印象深いa-g-a-h(b)-e(アガーテ)のモチーフが、突然第1ヴァイオリンの高音域に3回連続して現れ、同時にこの動機に内声にdが挿入され「adé」となることで、このメロディーの断片は「アガーテ、アデ」(アガーテ、さようなら)となる。(「アデ」は別れを意味するドイツ語の「Adé」)ここがポイントでこの点を抑えてないと私のように頓珍漢な受け止めをしてしまう。
つまり、ブラームスにとって、「アガーテ、カムバック!」ではなく「アガーテ、さようなら。」ということ。そしてその3回連呼は「3」という数字、つまりキリスト教文明の、神聖さや完全先生の象徴的な意味に繋がる。つまり三位一体、東方の三博士、ペテロの三回の否認、そしてイエスの死後三日目の復活だ。いやもっとあるのかもしれない。覚醒し、完全な、屹然とした彼女との別れがこの曲のテーマだったと理解した。

この曲に取り組まなければ、こんなことも考えなかっただろうし、正しく曲を理解することもなかったかもしれない。
ライヴ・イマジン57は11月8日。是非会場に足を運んで、ブラームスの叫びをご自身の耳で確かめてほしい。
http://liveimaginemusic.blog91.fc2.com/blog-entry-616.html

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