中川さんのストアライブ
2026 APR 20 15:15:01 pm by 西村 淳
「みなさんと音楽を楽しむ時間を共有したい。私が感動したものを是非共有してほしい。あなたたちとの出会いは素晴らしいものでした。」
よく利用させてもらっているディスク・ユニオン新宿クラシック館の名物スタッフの中川さんが今月限りでさようならとのこと。購入に迷ったときにお世話になったり、ライヴ・イマジンのプログラムをお渡ししたりで音楽を通じての交流はお店を訪れるモチベーションにもなっていた。

食べ物についてはあそこの店が美味い、今までで一番!この感動を誰かと一緒に味わいたい。ネット上にはそんな声が溢れかえる。それは音楽も一緒で、私聴く人、食べる人。シェフの苦労なんかどうでもいいわけだが、もし気に入ったならちょっとだけ厨房を覗いてみたくなるのも人情。シェフとお喋りできたりしたら最高だ。
中川さんはその厨房の様子を「聴いて楽しむおしゃべりクラシック」と名付けてストア内ライブの形で語り、昨日が第15回目。そしてこれがFinだった。ご自身の経験を基に絶妙の関西弁でやってくれた。副題が「一期一会」。何やら意味深なものだ。覗き見が大好き人間にとって面白いエピソードが満載だった。
1時間半にわたるこの会のトリは中川さん絶賛のお勧め、カラヤンとベルリン・フィルによるエロイカのDVD。この最高の楽曲を会の、そして新宿からのフェアウェルにした見識も素晴らしい。私にとっても何しろ中学生の時に初めて買ったLPレコードがこの曲だ。この映像は他のカラヤンの映像のような演出のない1982年のベルリン・フィル創立100周年記念演奏会の記録だそうで、聴衆にはシュミット首相やVIP達も名を連ねる。音だけからもすごい集中力が伝わりそれが音楽となって直接心を鷲づかみに。カラヤンがカーテンコールでコンマスのシュワルベには手を差し伸べたのに、ブランディスはスルーみたいなお話があった。うわー、そうだったんだ、人間関係が垣間見られそう。この場面はどうしても見たいので(私の場所からでは映像はみえなかった)中古がHMVにあったので早速発注を。
完璧なショルティの「展覧会の絵」では凄腕シカゴ交響楽団の全盛期の映像。でもベルリンが出てくると、シカゴの影が薄くなるのはどうしてだろう?この点は他の人たちも頷いていたし意見が一致。
私はアマチュアのチェロ弾き。つまりシェフでもあるが、一流のシェフの技もないし、必要な知識も少しは身に着けても再現性においては街中華の親父に劣るだろう。であれば食通(音楽通)になって楽しむのも悪くはないな。美味いか不味いかくらいはわかるんだ。たまには腕を奮ってライヴ・イマジン。そう、冒頭の言葉はそのまま私たちの演奏姿勢に繋がっている。
岡本太郎の言葉を思い出した。素晴らしい芸術とは、きれいで心地よいものではなく、見る人の心に「爆発」のような衝撃を与えるものだと。絵画はただの「物質」に過ぎず、それを見て「感動した」「何かを感じた」と感じる、あなた自身の生きる姿勢や感性こそが、価値がある。そしてお前自身が主役として生きろと。
大阪にもディスク・ユニオンクラシック館があるらしい。中川さんの地元でのご活躍を祈念したい。
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5 comments already | Leave your own comment
西村 淳
4/21/2026 | 6:32 AM Permalink
フルトヴェングラーの有名なバイロイトの第九の話もあった。EMIに入っている拍手はどうやらウォルター・レッグが編集したらしい。ここで聴かせてくれたのは全編未編集でBISがリリース(BISSA9060)したもので、スウェーデン放送局のアーカイヴ。最後の音が終わってから数秒間の静寂があり、そのあとの大喝采へとつながる。EMIはこの静寂をカットして突然の大拍手。こういった歴史的ドキュメントを平気でいじるのはお金大好きなブラボーおじさんレッグらしいけれど。
成宮裕喜
4/25/2026 | 2:39 PM Permalink
コメント失礼します。
いつもブログを楽しみに読ませていただいている者です。中川さんの投稿で驚きました。私も20歳代のころ、京都の店舗でとてもお世話になりました。その店舗を退店されてから15年ほどのブランクを経て東京で活動されている事を知った時は上京して会いに行ったほど、私にとってもカリスマ店員さんです!!とても嬉しい気持ちになり、投稿させていただきました。
西村 淳
4/25/2026 | 8:31 PM Permalink
成宮さま
そうでしたか。中川さん、とても人気がありますね。お客様との出会いが何よりの宝物とおっしゃっていました。6月くらいには落ち着いて大阪クラシック館にご出勤でしょう。きっと東京の事、勿論音楽のことで話が尽きないのではと、ちょっと羨ましい感じもします。今度は私が大阪詣をしなければ。(笑)
成宮裕喜
4/25/2026 | 9:45 PM Permalink
お返事いただきありがとうございます。私にとって20代のクラシック音楽の先生が中川さん、30代〜がこちらのブログなので、まさしく夢の共演だったのです!!笑
これからも毎日楽しみに皆様の記事を拝見させて頂きます!!
西村 淳
4/25/2026 | 8:38 PM Permalink
早速カラヤンのDVDをゲット!
何をかいわんや、50分がこれほど短く感じられることも稀でした。筋肉質のひきしまった響。いささかの弛緩もなく、たとえて言うならミケランジェロのピエタか。
名曲は各人の心の中に理想が出来るもの。それに照らしてどうだこうだとなるけれど、私の「エロイカ」の理想はまさにこれでした。63年のレコードよりもより深い洞察と何より今や完全に把握したベルリンの響きに、揺るがない確信を感じました。