Soner Menbers Club No43

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調律師 髙木 裕さんのレクチャーコンサート 「フォルテピアノの魅力4」

2026 MAY 11 18:18:21 pm by 吉田 康子

2026年5月9日(土)14:00開講 三鷹市芸術文化センター 風のホール
お話 髙木 裕(ピアノ調律師、タカギクラヴィア株式会社 代表取締役社長)
ゲスト 飯島 聡史(フォルテピアノ演奏)

2018年に第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位受賞により一躍時の人となったピアニスト川口成彦さんのリサイタルに先立つ関連企画としての催しでした。

髙木 裕さんといえば「スタインウェイ戦争」や「今のピアノでショパンは弾けない」の著者として、とんがった姿勢の方だという印象でしたが、「調律師、至高の音をつくる: 知られざるピアノの世界」を読んで真摯な姿勢に認識を新たにしました。

会場のホール舞台には翌日の川口さんのリサイタルで使う2台のピアノがあり、それを囲むようにして舞台上に椅子が30脚ほど。ホール客席は使わず少人数での会のようです。

Screenshot

髙木さんのご挨拶、ピアニストの飯島さんのご紹介。早速に舞台上の2台の楽器の来歴や構造、特徴についての説明、そして飯島さんの演奏でショパンと同時期の作曲家A.グートマンやM.シマノフスカの作品も。演奏者の立場から楽器によって異なる特徴に沿ったタッチやペダル使いがあるようで、聴き比べは説得力がありました。

私はヨハン・クレーマーの方がスッキリとした音の立ち上がりと早い減衰、綺麗な響きが魅力でした。飯島さんが、これでモーツァルトを弾いたら合うかもという話に同感。プレイエルは大きな音量ではあるけれど、こもった響きのコントロールが難しいのと反応が鈍い印象でした。会の後半にはミニコンサートということで、ショパンのノクターンやワルツが演奏され、飯島さんの繊細な演奏で楽器の音色を聴かせてもらいました。近年大きなホールでスタインウェイのフルコンからの輝かしいパワフルな音の対極にあるように思えました。やはり歴史を踏まえてこその今だと感じました。

最後に余談ですが、と髙木さんが前置き。日本では同じスタインウェイであっても、ハンブルク製がクラシックの王道、ニューヨーク製はジャズやポップス向きと軽んじる空気がある。単にアジアに位置する日本はハンブルグ製という便宜上の販売網の仕分けであり、ハンブルグはニューヨークで作った部品の組み立て工場に過ぎなかった。ジャズはその100年後くらいに興隆を極めたのだから、それまではクラシックが主流ではなかったのか?と。単なる印象操作に載せられただけ?しかもホロヴィッツ全盛期には少しでもあやかろうと日本人ピアニストが大挙してニューヨーク製を買うべく渡米した話も滑稽に思えます。

ハンブルグで創業したスタインウェイ一族が老舗揃いの伝統が残るヨーロッパを見限った。全てを投げ打って新天地を求めてアメリカに渡りニューヨークで勝負をかけた。音楽の大衆化に伴いより大きな会場で聴こえるような構造、量産しやすい部品など数々の特許を取得し、有名なピアニストを専属として広告塔に据える。各有名ホールにスタインウェイを置く、その営業戦略は見事なものだと感心。職人気質の髙木さんが狭い業界での軋轢を生んだスタインウェイ戦争は、馴れ合いの閉ざされた業界に盾突く最たるものでしょう。出る杭は打たれる、誹謗中傷と戦って来た一端を垣間見た気がしました。

それにしてもニッチな世界のレクチャーゆえ30名にも満たない来場客でしたが、色々な点において、なんて贅沢なひと時だったのかと今更ながらに思いました。

Categories:ピアノ

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