Soner Menbers Club No43

Since May 2014

ピアノの蓋は全開で

2020 SEP 18 20:20:01 pm by 吉田 康子

今日は久しぶりのピアノ調律の日。本番やコロナ禍で伸び伸びになって半年くらい遅くなっていました。調律師の齋藤さんは、お変わりなく穏やかな雰囲気と共に登場。

コロナ暗雲と共に仕事が減り、緊急事態宣言中はコンサートが全く無かったので調律の仕事が途絶えたそうです。社員のお給料をどうしようかという気苦労はあったけれど、時間があった分だけ普段出来ないYou Tubeで海外の演奏会を聴いたりしながらじっくりと考える機会を持てたとのこと。そして緊急事態宣言解除後の6月から堰を切ったように調律依頼が殺到して、また以前のように忙しくなってきたようです。

開口一番に「ピアノは普段から蓋を全開にして弾きましょう」と再認識なさったことを伝えて下さいました。今迄は部屋の広さとか響き方の具合など様々な理由で半開や蓋を閉めた状態で練習している方が多く、そのために楽器の音を閉じ込めてしまって無駄な力を使ったり、細かな共鳴や雑音にとらわれがちな傾向でしたが、本来全開にして弾く楽器なので、自宅での練習やレッスンの時点から、そうあるべきだと。最初は以前と違う響きに戸惑うが、耳がよければ次第にその開放された響きに慣れて十分なニュアンスをつけられる。そして本番ホールでの楽器の鳴り方にも順応し易いとのこと。

調律の終わったピアノを弾いてみて、綺麗に揃ったタッチと澄んだ深い響きの見違えるような仕上がりに感激しました。この驚きはこのピアノを最初に調律して頂いた時と同じくらいの大きな変化でした。忙しさに追われていた仕事についても改めて見直すことが出来たとのことですが、それによって更なる進化であり深化された成果だと感じました。今日の仕上がりにご自身も満足の様子でした。

You tubeでヴェルヴィエ音楽祭を見て、そこで使われている楽器が特別のものであったとのこと。世界の超一流の演奏者が使うだけあって、横にVerVieの文字が入った特別なスタインウェイであることは、私も以前から気になっていました。またミュンヘンで無観客で行われたテノールのヨナス・カウフマンとピアニストのヘルムート・ドイチェのシューマンの詩人の恋が素晴らしく、出だしの前奏がピアノから匂い立つようにホール全体に広がった様子に感動したそうです。もうひとつ、カフェのテーブルに座ってコーヒーを前に軽いウィーンの歌を歌い、口笛を吹く動画も素敵でした。後ろにはドイチェが弾くベーゼンドルファーから流れる柔らかな響き、音楽はこうでなくちゃ。
ヘルムート・ドイチェさん来日の際には仕事でご一緒したこともあったようで、調律が終わったピアノの蓋を当たり前のように全開にしてさっとソリスティックに弾いていたことを話して下さいました。歌の伴奏や他の楽器とのアンサンブルだと音量を気にして蓋を半開などにしがちだけれど、全開にして演奏でバランスをとってこそピアニストだと実感したようです。

そして演奏の姿についても。
腰がしっかり安定して上半身は脱力した良い姿勢で軽々と弾いていることを改めて感じたそうです。これは私も大いに頷けることで、昔からホロヴィッツやルビンシュタインなど歴史に名前を残すような名ピアニストは皆背筋の伸びた美しい姿勢で弾いています。

日本では女性ピアニストというと芸能人と区別が出来ないような外観重視の傾向が何とも貧しい発想。ピアノの前でのたうち回るように弾くのが熱い演奏だと思い込んでいる人が多いですが、あれはみっともないだけだと思います。やはりアルゲリッチもきちんとした良い姿勢で弾いているし、ユジャ・ワンのハイヒールも小柄な彼女が良い姿勢でペダルを踏むためのものではないかと。そりゃあピアノの方を自分に引き寄せる巨漢ギーゼキングのような訳にはいかないですね。初来日公演で見た彼女は本当に小柄でどこにそんなタッチが?と思いました。他にも若手人気ピアニストでいえばカティア・ブニアティシビリも良い姿勢で弾くし、歌伴奏しても素晴らしいと話して大いに盛り上がりました。

他にも近所に見つけた個人のホールのピアノの様子など話は尽きません。こうやって色々とお喋りする中で教えて頂くことが沢山あって・・という言葉と共に齋藤さんはお帰りになりました。

その後に練習しながらも、そういえば私の師匠のレッスンに伺った時にも、ご自身のスタインウェイのフルコンは蓋を閉めたままでしたが、生徒用のヤマハC3の蓋を全開にしてくれたことを思い出しました。

我が家の場合は、レッスンに来た子供達が中のダンパーを触ってみたり、フレームのふちにぶら下がろうとしたり、蓋を支える棒に触ってみたりとヒヤヒヤするのが煩わしくてレッスン中は蓋を閉めがちでした。でもこんな素晴らしい音色になったピアノを是非とも味わって欲しい、面倒を避けるより、やはり楽器の扱いをしっかり教えてこそだと考えを改めた次第です。

「リトルイマジン」無事終了!

2020 AUG 19 21:21:52 pm by 吉田 康子


(写真の上でクリックして頂くと少し大きい画像がご覧になれます。)

3度目の正直、とはいえ前日まで「本当に大丈夫?」と半信半疑の思いでした。でも心配は危惧に終わり、予定通り無事に発表会を行うことが出来ました。
当初は午後枠だけのホール使用でしたが、今回が初めての発表会という生徒が過半数であったことを考慮して午前中から十分な時間を取ってリハーサルを行うように変更。講師演奏でピアノトリオを共演して下さるお2人に演奏だけでなくステマネとしてお手伝い頂くようお願いました。

子供の発表会は初めてのお二人でしたが、会が滞りなく進行出来るように細部にわたり段取りを考えて下さいました。各生徒の使用椅子は何番目の目盛りの高さにセットするか、高中低3種類に設定した足台のどれを使うかを一人ずつリハーサルで記録して本番で生徒が入れ替わる度にそれぞれの子に合ったものを設置。そしてアナウンスは誰、椅子を並べるのは誰、など担当を決めて同じような作業を人数分だけ繰り返して、皆が同じ条件で演奏出来るように配慮。それぞれの曲が短いだけに、何度も同じ作業を殆ど休む間もなく続けて下さったことには頭が下がる思いでした。

講師演奏についてもどういう順序で行うかを事細かに決めてリハーサルで実際にやってみました。これは、頭の中で解っていても、なかなか本番では実行できないからです。配置換えをする人、お話をする人、お辞儀はいつ?どういう順序で誰が?ということです。これはライヴ・イマジンからのノウハウでもあります。「発表会ということで保護者から費用を収めて頂いている以上は、それ相応の対応を提供するべき。それが信用につながる」という言葉は重みがあります。

万全の準備をして迎えた本番でした。女の子は皆、華やかなドレス、煌めくアクセサリーや靴、そしてきちんとセットした髪など発表会という場に華を添えるような素敵な装いで登場。男の子もそれに釣り合うようなきちんとしたフォーマルな服装と靴でした。最近は「TPO」や「ドレスコード」などという言葉が死語に感じられるほどの風潮ですが、やはりその場に相応しい装いを知るというのは大切な事です。これは保護者の皆さんの意識の高さの表れでもあると大変嬉しく思いました。

演奏については、全員が十分な練習を重ねた上での出来でした。やはり「人前での演奏」という点を重視したことが良い形で成果を出しているようです。発表会という公の場で弾く以上は、お客様の存在ありきです。聴いて頂けるレベルまで仕上げるのが必須であり、最低限の礼儀でもあると考えています。

ドキドキしながら出番を待ち、アナウンスのあとに舞台に一人で出て行って弾くのは、心臓が飛び出しそうなくらいの気分でしょう。リハーサルで弾いたとはいえ、本番での様子を舞台袖から見ていて緊張が伝わってきました。でもしっかりと練習を重ねてきただけあって、ピアノに向かえばレッスンの時のように落ち着いて弾いていたように思います。演奏を終えて戻ってくる顔は皆とても晴れやかに輝いていて、私も嬉しくなりました。

そして独奏を終えてホッとしたのか、連弾はリラックスして皆楽しそう。とは言っても本番は何が起きるかわかりません。一緒に弾いている私は出だしの音を確認し、拍を数え、合図を出し、ちゃんと繰り返し出来るかなと子供達の手元を横目で見ながら弾いていました。

最後の講師演奏の前に配置換え、そして楽器紹介と曲目解説。子供達にも解るように、「小さなヴァイオリンは高い音。大きなチェロは低い音。そしてピアノは沢山の音が弾ける」と易しい言葉で説明すると、なるほど、という感じでこちらを見ている顔が客席のあちこちに。

会場のピアノ「ベヒシュタイン」は少し小さ目のセミコンサートグランド。朝一番で音出しした時にはペンペンと乾いた薄っぺらな音だったのが、時間が経つにつれて鳴りが良くなりました。一般的な普及品の楽器は奏者の近くでは大きな音にきこえる「そば鳴り」ですが、そこはさすがにリストが愛したと言われるベヒシュタイン、持っているパワーが違います。ホールの隅々まで音が方向性を持って飛んでいきました。可動席216の3分の1にも満たない来場客だったため、弦楽器の音も妨げられることなく響き渡りました。

演奏が始まると、初めて聴くヴァイオリン、チェロの生の音に加えてアンサンブルの中で縦横無尽に走り回るピアノは、日頃聴く機会の無いものであったと思います。それまではザワザワとしていた客席が皆シーンとして演奏に集中している空気が伝わってきました。皆が耳を傾けてくれている雰囲気の中で弾くのは本当に嬉しいものです。それぞれが歌い、掛け合い、響き合うアンサンブルを誰よりも先ず演奏している私達が存分に満喫しました。僅か10分ほどでしたが、本当に楽しく幸せな時間でした。

「このようなご時勢になると自然淘汰されて本当に大事なものだけが残るように思います。私にとって大切な音楽は、やはり変わることなく存在し喜びと励ましを与えてくれています。生徒の皆さんにも音楽が宝物の一つになって欲しいと願っています」と挨拶で話しました。大変な状況の中であっても目標を持って前向きに取り組んできた生徒達を家庭で支えて下さった保護者の皆さんにもお礼を伝えました。

おかげ様で沢山の方々のお力添えを戴いて素晴らしい会になりました。短い夏休みに特別な「夏休みの思い出」をプレゼント出来たと思います。

リトル・イマジン ピアノ発表会

2020 AUG 13 22:22:20 pm by 吉田 康子

毎年生徒の発表会をしています。同窓の先輩と合同で、今年は20回目です。近所にある300名定員の公共の小ホール(ピアノはベヒシュタイン!)を使っていました。今年は3月末の開催予定でしたが、コロナのあおりで前日まで使用可だったものが、翌日には市からの要請であえなく閉館となりました。まぁ公共ホールなので、おカミには逆らえないですね。

即座に近隣の私営ホールを検索、翌日には会場見学をして100名定員でベーゼンドルファーのセミコンがあるホールに代替え会場として予約しました。日を追うごとに不穏な空気を感じて前倒しにして早め開催をしたかったのですが、不本意ながら当初の本番予定の2週間後に。結局のところ今度は緊急事態宣言発令により、本番4日前になって中止。私営だから独自の指針で経営だと思っていましたが、何のことは無い風評を気にする右へ倣えの運営でオーナーの判断にガッカリしました。

そして、また懲りもせずに8/16(日)に生徒の発表会を予定しています。会場は先の公共ホール。今回は合同ではなく私の生徒のみの縮小開催ですが、二度あることは三度ある・・かもで当日まで油断なりません。

2回目の中止の時点でそれまでに練習を重ねて来た子供達に何とか本番を経験させてあげたいという強い思いがあり、希望者のみの企画。まだピアノを始めて1年以内という初心者が多いですが、本番への意欲を持ち続けて来た生徒ばかりです。皆、僅か数分の曲であっても、やはり目標を持つと取り組みが違ってくるのを目の当りにして、とても楽しみです。

私も講師演奏としてメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番の第1楽章を演奏予定です。今までも企画はありましたが、なかなか実現に至らなかったものです。室内楽はおろか弦楽器の生の音さえ聴いたことが無い子供達に、音楽を別の側面から見ることで、違った楽しさを味わってほしいところ。たぶん保護者の方々もそういう経験は少ないでしょう。

ピアノというと独奏ありきで自己完結してしまいがちです。学校の合唱伴奏が唯一のハレの場という認識がまかり通っている現状は貧しすぎます。生徒たちにも独奏と連弾を演奏してもらいますが、同じ音色の楽器では味わえない和声や響きの美しさ、アンサンブルの妙を味わえる別の体験をして欲しいという気持ちが企画につながりました。今の私が出来る贈り物だと思っています。

実際のところ合奏練習をしてみて、最初はピアノ五重奏曲とピアノ三重奏曲の違いに戸惑いました。頭では解っていたつもりでしたが、各奏者の自由度が違う。ピアノ対弦楽四重奏のピアノ五重奏曲と違って、ピアノ三重奏曲はソリスト3人が互角に渡り合う醍醐味があります。それと同時にアンサンブルのエッセンスがあって、たちまち夢中になりました。最初はお互い遠慮がちであったものが、だんだんと回数を重ねるごとに思い切りよく主張出来るようになり、丁々発止のやりとりに面白味があります。曲へのアプローチは同じ方を向いているので、色々なアイデアも浮かびます。やはり気心知れた仲間ならではの信頼感は大きいですね。わずか10分の曲の練習であっても3時間はあっという間に過ぎ、勢い余って2楽章までトライしてみる場面も。何物にも代えがたい幸せの時間でした。私達が音楽の喜びを存分に味わって弾くのであれば、聴いている人にも必ず伝わるものがあると思います。

本番まであと数日、万全のスタッフで臨みます。「ライヴ・イマジン」の運営ノウハウを活かした企画ということで、「リトル・イマジン」と名付けました。今度こそ無事開催出来ますように!

ベートーヴェンのピアノ協奏曲 第1番 について

2020 JUL 16 21:21:10 pm by 吉田 康子

7/24(金祝)ライヴ・イマジン45でベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番Op.15を弾きます。ラハナー編曲の弦楽五重奏伴奏版で、ピアノはファッツィオリです。
この曲はベートーヴェンにとって0番と呼ばれる13歳の時の未完の作(補筆版が後に出版)、第2番Op.19に次ぐ3曲目ですが、出版順で1801年に第1番となりました。作曲家・ピアニストとしてウィーンデビューの勝負をかけた堂々たる自信作です。

以前から溌剌とした曲想に惹かれて弾いてみたいと思っていましたが、難所があるためにブレーキがかかっていました。それは第1楽章再現部前です。

この楽譜から当然右手だけの高速オクターヴを弾くものと思っていました。「う~ん、どう考えても弾けない」と。一番の見せ所をトロトロ弾くわけにもいかないし・・Wikiをみるとやはり「再現部の前のピアノの独奏移行部は非常に演奏が困難であるが、演奏の際には多くの場合、右手のみのグリッサンドで演奏される。」との記述。「な~んだ、やっぱり私だけじゃない」我が意を得たり!という気分でした。

ベートーヴェンの弟子だったカール・チェルニーもその著書“Uber den richtigen Vortrag der samtlichen Beethoven’schen Klavierwerke” (カール・ツェルニー著、パウル・バドゥラ=スコダ編・注釈、古荘隆保訳、全音楽譜出版社、148頁)に、「オクターブは犠牲にして単音のグリッサンドで弾きなさい」と指示しています。オクターブが弾けない場合は上部の音列だけをグリッサンドで処理し[筆者注:あるいは普通の音階として弾き]、バスは省略しないよう注意してください。と書いてありました。

早速You tube の動画で確認。バレンボイムが弾き振りしながら楽勝でオクターヴをキメていました。ブレンデルはグリッサンドで、ルビンシュタインは両手のスケールで。結局のところ弾き手の任意でしょうか。「それならいける!」とGOサインをもらって背中を押された気持ちになりました。「これを逃したら、もう弾けるチャンスは無い」といつもの一期一会ポリシーでチャレンジを決めました。

そして「私のお気に入り」は第3楽章の中間部にありました。ラグタイムのようなゴキゲンな2ビートが出てきます。初めて聴いた時には「え?」と思うような新鮮な驚きでした。「この時代に?」とビックリ。しかも手を変え品を変えてご丁寧に3回も出て来るのは余程気に入ったのでしょうか?有名な肖像画にある苦虫を噛み潰したような気難しい表情からこんな愉快な一面は想像もつきませんでした。以前弾いたショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番の終楽章にも速いテンポで似たようなリズムが出てきますが、なんせ時代が違うのに何という先見の明でしょう!9度がやっと届く私の手では左手10度の低音の跳躍はとても難しいですが、これを外さずにしっかり弾きたいところです。弦楽器の皆さんもノリノリでスイングしている楽しい部分です。

自筆譜より第3楽章中間部分(本当に書いてる!と思いました。)


オイレンブルクのスコアより第3楽章中間部分

また最近になって気づいたのは、3楽章の冒頭、ピアノソロでひとくさりある緊張の部分です。ゆっくりから少しずつテンポを上げて練習していると、どこかで聞き覚えのあるような・・何だったっけ・・?そう!トルコ行進曲でした。ラッパや太鼓でブンチャカ賑やかに打ち鳴らすあの雰囲気です。この曲の場合は中途半端な6小節まとまりですが、弾いてみるほどに似ている気がしてきました。

検索すると、トルコ行進曲Op.113は戯曲「アテネの廃墟」の付随音楽として、この協奏曲の11年後の1812年に作曲されています。トルコ風の趣味はオスマン帝国の1683年第2次ウィーン包囲の軍楽隊の影響だとか。色々な世界が広がります。

終わりの部分には主題がズレて出てくるスリリングなところも。

他にも第2楽章の始めの間奏に一瞬暗い和声が出てきてハッとします。変イ長調で書かれた穏やかな流れるような旋律にピリッとしたエッセンス。はじめは「音を間違えた?」と思ったくらいでした。

再現部前にはペダルを踏み変えずに混沌とした響きをきかせる部分があり新しい効果を試しているのが伺われます。これは他の楽章にも散見されます。ピアニストのパウル・バドゥラ=スコダ氏のレクチャー記録にもペダルについての例に付随し取り上げられていました。パウル・バドゥラ=スコダ氏のレクチャー記録

1楽章冒頭から独奏ピアノ登場前の105小節にも及ぶオケの長い前奏もショパンの1番やモーツァルトの25番の協奏曲を連想させました。レッドカーペットを敷いてもらって、いよいよ登場という感じが何とも言えない高揚感があります。

知れば知るほどにあちこちに仕掛けが用意されていて興味は尽きません。「意気軒高たる」という言葉が自然と浮かぶような意欲的なこの曲の魅力を是非ともお伝えしたいという思いを新たにしています。

「ライヴ・イマジン45」やります!

2020 JUL 2 18:18:31 pm by 吉田 康子


2020年7月24日(金祝)13:00開場 14:00開演
豊洲シビックセンターホール

モーツァルト  レクイエム ニ短調(弦楽四重奏版)抜粋
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 Op.15 (弦楽五重奏伴奏版)
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127

内田 明美子、山田 洋子(ヴァイオリン)内田 吉彦(ヴィオラ)
西村 淳(チェロ)北村 隆男(コントラバス) 吉田 康子(ピアノ)

この日は、本来であれば東京オリンピックの開会式の筈でした。オリンピックに全く興味が無い私は1年前の抽選で当選したのを単に「ラッキー」だとしか思っていませんでした。後になってビックリ!どうりで倍率が低かった訳だと納得。しかも会場は選手村の近くの豊洲。交通規制がかかるかも、なんて心配を先送りにしているうちにオリンピック自体が延期という想定外の事態に。

振り返ってみれば前回の「ライヴ・イマジン44」も2/8でしたから、コロナ禍前のギリギリでした。その後の急転直下ともいうべき状況の悪化は現実の事とは思えないほどです。タイミングも運のうち、かもしれません。

緊急事態宣言中は練習場が閉鎖され、楽器を持って出かけられない重苦しい空気でした。「開催出来るのだろうか?」それさえ不確かな中、最終決断は6月末と決めました。とにかく「やる方向で準備をしよう」と個人練習を重ね解除を待ちわびていました。今回は特にイケイケの前向きメンバーであったことも良い方向に作用しました。またリモートワークに移行した人は通勤時間が無い分だけ練習時間を確保出来たという思わぬご利益も。

そんな折の5/2にヤフーニュースに掲載された作家 平野啓一郎さんの文章に背中を押して貰ったような気分になりました。
作家・平野啓一郎が見通す「新型コロナの2020年代」
音楽や演劇など、芸術・文化への深刻な影響も懸念されています。
「芸術とは何のためにあるのか?」「大して役に立たない」と言う人もいますが、いまほど、多くの人々が熱烈に「コンサートに行きたい」と言っている瞬間もないでしょう。芸術・文化が社会に不可欠だと骨身に染みている。守らなければいけないし、そのための補償を、政府は責任を持ってするべきです。
僕は、コロナ明けに行く生のコンサートは、どんな音楽でも泣く自信があります。1曲目から最後まで泣き続けているかもしれない。演奏家も泣いていると思う。いま想像しただけで涙ぐんでしまう。

これは、早いもの勝ち、やったもの勝ちでしょう。やはり新鮮に感じて頂けるうちに皆さんに聴いて欲しいと思いました。2011年東日本大震災の1ヶ月後のライヴ・イマジン14を彷彿とさせるような今ならではの特別な付加価値を感じます。

今回は、演奏以外にも緊急事態宣言明けという特別な時期ならではの対応に迫られました。ようやくステップ3に移行したところなので、会場の定員300名の半分150名しか入場出来ません。いつもなら出来るだけ多くのお客さんにいらして頂きたいのですが、今度は事情が違います。150名を絶対に超えられないだけに、いかに人数を調整するかが大きな課題でした。

先ずは出演者の知人を最小に抑えて前回公演に来場してアンケートに住所氏名を書いて下さった方を最優先に。その後ブログと演奏会情報掲示板「コンサートスクエア」に公演案内を掲載。

やはり待っていた方々がいました。掲載して2日で次々と応募があり、あっという間に予定数に達して締め切りにせざるを得ません。既にご案内を出したお客さんの中には都合で来られない人もいるでしょう。その分だけ是非聴きたいという方をと思いましたが、予想が出来ないだけに苦渋の決断を迫られました。応募締め切りと書いている最中にも滑り込みでの申し込みがあり、待ったなしの状況でした。

応募された方々からは「難しい時勢にあって、コンサートを実施される志、素晴らしいと思います。音楽ファンとして素直にうれしいし、心強く思います。」「ずーっと中止で、火が消え失せたような毎日でした。再開本当に嬉しいです。楽しみにしています。」「久しぶりに生の音楽を聴くことができれば、こんなに嬉しいことはありません」こんなコメントを添えて頂き、大いに励まされました。

ホールスタッフとの打ち合わせも早めに済ませました。感染拡大防止策として何を要求されるんだろう?と戦々恐々として身構えて行きましたが、拍子抜けするほどの緩めの雰囲気。江東区文化コミュニティ財団の施設利用に関する要請はステップ2から更新されていないままでした。仰々しい文章に、検温、マスク着用、手指の消毒、換気、ソーシャルディスタンスなどに加えて、来場者の記帳も義務付けられていたために開演時間を早めましたが、ステップ3になったので記帳不要とのこと。「消毒液も在庫が無いので」を言い訳に「必要ならそちらで用意して」と言い出す有様。何とも責任回避で利用者に丸投げ状態に「こんなんで大丈夫か?」と逆に心配になってしまう程でした。今の公の機関の実情を象徴するような気がしています。

7月に入り、感染者が日々増加しています。都知事選までは政治的にこのままで行くでしょうが、その後が気がかりです。無事に本番を行いたいという祈るような気持で日々練習を重ねています。

フランク:ピアノ五重奏曲の再演

2020 MAR 18 12:12:49 pm by 吉田 康子

2/8本番から1ヶ月が過ぎました。この間に世の中はコロナ旋風が吹き荒れて想定外の事態になっています。今から振り返ってみれば本当にいいタイミングで本番が出来たと実感しています。

私は本番後から3週間以上不調でした。コロナでなく、肺炎、インフル、花粉症、喘息でもないのに微熱と咳が続き、なかなか全快に至らず苛立ちや焦燥感が募りました。3つの病院をハシゴしましたが、結局かかりつけ医の見立て通り気管支炎でした。今までになく長かったです。

本番の打ち上げの時にアンサンブルでご指導頂いた田崎先生から「フランクのピアノ五重奏曲再演」の提案がありました。

別に今までも弾き散らかしたつもりは無く、それぞれの本番の時点で精一杯の努力をした結果として納得して区切りをつけてきました。これから自分の先を考えた場合に残り時間が少なくなっているように感じていて、バケットリストを意識する年齢になった自覚もあります。「振り返っている暇など無い」という心境でしょうか。それでも名曲大曲を連発している状況は傍から見れば自己満足に映ったのかもしれません。

「もうひとつ上を目指すなら、今本番をやった段階から再度スタートしてはどうか」ということでした。先ずは再演を考えた時点で意識として違うものになっているとのこと。初めての試みですが「そこまで言われちゃ受けて立つしかない」とメンバー全員が即決で再演決定でした。

そうは言っても具体的にはいつ?どこで?について5人で顔を合わせて考える場を設定したものの、私の不調で延期。そうこうしているうちにコロナで自粛やテレワークの空気に。緊急事態宣言の発令も予想される中「それでも話をしなくちゃ始まらない」と先週末にようやく5人が揃いました。

会場は神楽坂の「ラビチュード」https://www.at-ml.jp/68166/というカジュアルな雰囲気のフレンチレストラン。メンバーの一人の行きつけのお店でしたが、偶然にも2005年ライヴ・イマジンを近くで行い、この店で食事をしたことがありました。今は2代目の鈴木シェフのもと「鴨のコンフィー」をイチオシに前菜からデザートまで美味しい料理を気軽に味わえるお店として人気があります。しかもこのあたりは私が小3から中3までを過ごした懐かしい街でもあります。

この日だけ雪という悪天候にも関わらずようやくメンバーとの再会を果たすことが出来ました。本番から約一ヶ月ですが、状況が大きく変わったせいもあって半年くらい時間が経ったような気がしていました。それぞれの仕事を取り巻く状況が一変しただけでなくオケの練習や本番が次々と中止になったことなどお互いの近況報告をするうちにワインも食事もすすみます。そのうちにお客さんが続々と来店して満席になりました。店内は先の見えない閉塞感のある日々から一時的に解放されたような温かい穏やかな雰囲気に。最近は閑古鳥が鳴いていたのでSOSを出したら、常連さんが沢山来店してくれたと食後にシェフから事情を聞きました。

私達も早速に本題に移ります。会場の候補を考えていたり、検討項目を書類にしてあったり、候補曲の楽譜配布もあったりで皆それぞれに事前準備をしてありました。そうなれば話はどんどん進みます。再演は今年の年末12月27日(日)ライヴ・イマジン公演用に確保しておいた豊洲シビックセンターホールに決まりました。「年内に決着を付けたい」という意識もあります。今はフランク以外の曲目を検討中です。実際にプログラムが決まって練習に入ればシビアですから、色々と考えているうちが楽しいものです。音楽を共有できる気のおけない仲間と久しぶりに日常を取り戻したような感じがしました。美味しい食事やお酒と共に沢山笑い、前向きな話が出来て本当に楽しいひとときでした。帰りは真冬並みの寒さでしたが、暖まった気持ちで元気に解散。今はお互いに候補曲をあれこれ出し合っているところです。これからどんな展開になるか、乞うご期待!

ライヴ・イマジン44のご案内

2020 JAN 15 1:01:00 am by 吉田 康子


ライヴ・イマジン44
「トリスタンに魅せられたフランス近代作曲家たち」

2020年2月8日(土)13:00開場 13:30開演
旧東京音楽学校奏楽堂

入場料 ¥1,000(税込 全席自由)
未就学児童の入場はご遠慮下さい。

■フランク 「前奏曲、フーガと変奏曲」 、
  「天使のパン」 、ピアノ五重奏曲 ヘ短調
■ショーソン&ドビュッシーの歌曲
■ドビュッシー 「牧神の午後への前奏曲」(室内楽版)

木村 俊道 、木村 有紀子(ヴァイオリン)
廣木 知之(ヴィオラ) 西村 淳(チェロ) 北村 隆男(コントラバス)
大門 一夫(フルート) 駒込 雅史(オーボエ) 佐藤 健(クラリネット) 
吉田 康子(ピアノ)  玉城 晃子(オルガン) 
岩崎 りえ(パーカッション) 髙山 美帆 (ソプラノ)

久しぶりの上野・旧奏楽堂での公演です。この建物は重要文化財で、保存活用工事のため5年間休館後の昨年秋にリニューアルオープンしました。ライヴ・イマジンでは休館前に数回ここで公演を行ったことがあります。その中でも2011年3月の東日本大震災の約2か月後に余震の中で演奏したのが特別な記憶として残っています。

今回は舞台にある日本最古級のパイプオルガンの活用を考えてオルガンの入ったフランクの作品を2曲配しました。「牧神の午後への前奏曲」室内楽版(シェーンベルク一派編曲)ではハルモニウムとして使用します。

またフランクのピアノ五重奏曲はドラマチックな出だしが魅力的で以前から気になる存在でしたが、ピアノが難しくてなかなか踏み切れずにいました。今回は私自身にとって大きな挑戦になります。

そしてフランクからドビュッシーに橋渡しをしたのが、ショーソン。自身のサロンは多くの芸術家たちが集う場でもありました。ショーソンとドビュッシーの美しい歌曲とピアノ五重奏伴奏版での歌曲「果てしなき歌」をお聴き頂き、「牧神の午後への前奏曲」へと誘います。

どの曲も地味ながら味わいの深い曲ばかり。真冬の上野の森にどうぞお越し下さい。

チケットプレゼントは、こちらからご応募下さい。
https://www.concertsquare.jp/blog/2020/202001147.html

手書きの楽しみ

2019 DEC 17 15:15:48 pm by 吉田 康子

ご無沙汰しているうちにもう師走も半ばを過ぎました。次回2月ライヴ・イマジン44公演のご案内を前回来場して下さったお客様や常連の方々などに発送する作業をしています。今度はフランスものなので、チラシにエッフェル塔のモチーフを使いました。チラシとチケットのデザインは私が行い印刷は外注ですが、原稿が手元にあるので封筒にも同じ柄を自宅で宛名書きと共にパソコンで印刷。このまま送れば簡単なのですが、単なるDMではないので自作の一筆箋を作りました。200件近くあるので大変な作業ですが、たとえ一文でも手書きを添えるとこちらの気持ちが伝わるように思います。
 
加えて私は万年筆が好きなので、お気に入りのペンが活躍できる場としての楽しみがあります。万年筆も凝り出すとキリがないですね。楽譜と同じで古いもの、ヴィンテージと言われるものが好きです。どこかにウンチクが入るものは一般的に男性の方々が好む傾向があるように思います。時計、カメラ、オーディオにも通じるものがあるのかもしれません。万年筆も現行品よりモンブランの二桁とか、パーカー51やコンウェイスチュアートとか、それなりの世界があります。

今回の一筆箋用の紙には、以前に「世界の万年筆展」で購入した万年筆専用の紙を使いました。さすがの書き味です。インクジェットでは滲んでしまうので使えません。年賀状や通常のイマジンのご案内葉書にも手書きを考えて上質紙を使います。そして万年筆は、イタリア、ヴィスコンティのハニーアーモンドという名前の付いた軸色の美しい柄のもの。インクはペリカンのエーデルシュタイン2018年限定のオリーブです。ここまで書くとオタクっぽくなりますね。ソナーメンバーの方々のなかにも隠れ万年筆オタクがいらっしゃるかも?と思います。

パソコンでベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番をBGMで流しながら、せっせと書いています。これはいずれ弾きたい曲のひとつです。今練習している曲だと聞き流せずに手が止まってしまうので。普段は弦楽四重奏曲をBGMに。もうすこし手書き文字も上手だと映えるのですが、そこは私のピアノと似たようなもの、背伸びしても無理がでてしまうので、先ずは気持ちをお伝えすることを優先にしておきます。

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