Soner Menbers Club No43

Since May 2014

オリ・ムストネンの印象

2018 FEB 11 17:17:18 pm by 吉田 康子

 
オリ・ムストネン ピアノリサイタル  
2018.2.10(土)14時開演 
すみだトリフォニーホール

■シューマン:子供の情景 op.15
■プロコフィエフ:ピアノソナタ 第8番 変ロ長調「戦争ソナタ」op.84
■ベートーヴェン:ヴラニツキーのバレエ「森のおとめ」のロシア舞曲の主題による12の変奏曲 イ長調 WoO.71
■ベートーヴェン:ピアノソナタ 第23番 へ短調「熱情」op.57

オリ・ムストネンのピアノリサイタルに行ってきました。彼の名前はピアニスト・作曲家として知っていました。また友人であるチェリスト、スティーヴン・イッサーリスの共演者という存在でもありましたが、演奏を聴くのは初めて。
彼の写真はいつも口を一文字に結んで何か言いたげにこちらを見ているものばかりでしたが、実際にステージに現れた様子は笑みを浮かべて穏やかな表情。

最初の曲、シューマンの子供の情景のは、私も弾いたことのある曲でしたが、美しい旋律を期待していた気持ちは冒頭部分から裏切られました。出だしの音が聞こえないくらい微かなものだったのに比べて3つ目の裏拍がアクセントごとく強打されてビックリ。わずか1ページの短い曲に本来知っていた旋律が違うフレーズと色合いを持っての演奏。腕を大きく回したり、手首をヒラヒラさせながら中に浮かせる様子に客席は戸惑いの空気が漂い、それとは対照的に彼はどの音も確信を持って弾き13曲から成るこの曲集を全く違ったものに聞かせました。

「聴き慣れた作品に新たな光を与えるもの。即興性と刺激に満ち、鋭敏な完成が隅々まで息づき、作品が今生まれたようなみずみずしさを放つ」という評論家の言葉がチラシに添えられていましたが、なるほど上手い事を言ったものだと感心。

続くプロコフィエフは、彼のアプローチがピッタリとハマる感じで鋭利なリズムや複雑な和声が説得力を持って迫ってきました。強靭なタッチと繊細なフレージングは十分な技巧と沢山の音のパレットを持っているのが伺われ、それを存分に駆使しての構築に圧倒されました。

後半のベートーヴェンの変奏曲と熱情ソナタは、もはやベートーヴェンに聞こえない、という印象。これが試験やコンクールだったら?と考えるのは野暮な話なのでしょうか?天才鬼才としての定評があれば、何でもアリで許される?結局のところ彼にとってこれらの作品は、作曲家の意図を汲んで表すものではなくて、自分の表現に置き換える素材でしかないのでは?と思い当りました。そういえばイッサーリスも「彼はいつも新鮮なアイデアを提供してくれる」とは言うものの、ベートーヴェンやショパンを一緒に演奏することは無さそうです。

演奏に際しては、楽譜持参で譜面台に楽譜を置き、しかも脇には譜めくりの人までずっと座っていました。アンコールのバッハも知らない曲に聞こえて不思議な感じがしました。先に読んだ本のランランとは全く違った世界を歩む人として特異な存在であることを強く印象付けられました。

ライヴ・イマジン39のご案内

2018 JAN 29 0:00:42 am by 吉田 康子

ご無沙汰しているうちに年が明け、いよいよ2月の本番が迫ってきました。大曲ばかりを並べた渾身のプログラム。弾きごたえ、聴きごたえたっぷりです。

また私にとっては昨年夏の骨折からの復帰公演でもあります。手術の痕は随分と目立たなくなりましたが、まだ左手首には骨折の際のプレートが入ったままです。チタン製で7本のボルトで固定してあります。「金属が入っていたら重厚な音がするかも・・」と冗談を言う人もいましたが、そういう恩恵があるかどうか・・・いずれにせよ今は手首が硬いものの弾く時には支障ありません。演奏については今迄の公演と同様、私の努力と練習次第ということになります。この公演の3日後にプレート除去の手術を予定しています。2週間後の抜糸から2週間あとに生徒の発表会があるので、とてもタイトなスケジュールです。

先週事前検査で病院に行ってきました。時間が経つにつれて目先の事に紛れていた入院時のことがフラッシュバックしてきました。それと同時にここまで回復出来た今に感謝する気持ちも。しかもバッハの協奏曲でカムバック出来るなんて幸せなことです。精一杯の準備をして本番に臨むつもりです。皆様、どうぞお越し下さい。

ライヴ・イマジン39
2018年2月17日(土)13:30開場 14:00開演
江東区深川江戸資料館 小劇場

バッハ ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052
ショスタコーヴィチ 室内交響曲 ハ短調 Op.110a
メンデルスゾーン 弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20

ヴァイオリン 前田 秀 玉城 晃子 亀井 葉子 小川 敦生
ヴィオラ   内田 吉彦 吉水 宏太郎
チェロ    西村 淳 金田 千畝 
コントラバス 櫻澤 有紀子
ピアノ    吉田 康子

入場無料(要整理券) 未就学児童の入場はご遠慮下さい。

入場整理券をご希望の方は、下記の問合せ先アドレスに
お名前 ご住所 電話番号 年齢 職業 コメントを添えて
「ソナーブログを見て整理券希望」とご記入下さい。
折り返し上記の葉書(入場整理券)をお送りします。
お問い合わせ  liveimagine@yahoo.co.jp

バッハを弾くということ

2017 DEC 25 18:18:49 pm by 吉田 康子

なんて偉そうな事は何も書けないのですが、とにかく今は2月本番のバッハのピアノ協奏曲第1番に没頭しています。
バッハの演奏ということで私の中で振り返ると、2013年1月のライヴ・イマジン23でのバッハ特集での室内楽曲が思い出されます。協奏曲については、ブランデンブルグ協奏曲第5番第1楽章の長いソロに憧れて10年ほど前に仲間内の発表会で弾いたことがあるくらい。今回プログラムの構成上、バッハの協奏曲のいずれか、という提案をされた時に6曲全部を聴いて検討した結果、一番立派で完成された感のある第1番に決めるのには迷いはありませんでした。自分の実力を顧みず、やはりその時に一番良いと思われるものを選ぶという「ショートケーキはイチゴから」のポリシーは変わりません。大変ですが、得るものも大きいかと。

とまぁ前置きが長くなりましたが、このバッハで夏の骨折からの復帰を目指しています。それだけに並々ならぬ意欲で取り組んでいますが、譜読みからして音符が多いこと!しかも殆ど休み無し。とにかく音符を音にするだけでも精一杯の状態で弦楽器と合奏の日を迎えましたが、解らない事だらけ。「バッハの作法」とでも言うのでしょうか。自分の無知を痛感しました。年内最後の合奏練習の前に何とかしたい、何らかのアドバイスをお願いしたいとピアノの先生と田崎先生にレッスンをお願いしました。

ピアノの先生は初見でオケパートを弾きながらのご指導。現役で演奏活動をなさっている方だけあって、ご自身が弾き振りをした経験についても具体的に教えて下さいました。音の出し方、音色、指使い、手や腕の使いかたなど、それぞれが強い説得力を持っていました。

そして、それを自分のものにする間もない数日後に田崎先生のレッスン。開口一番の「この曲をどんなふうに弾きたいのか?」という想定外の問いにしばし言葉を失いました。バッハに限らず、音楽で大切なのはフレージング。それを決めるのは和声。バッハの和声は明確でわかりやすい。和声を理解した上で、それをどう表現するのか。様々な方法を駆使して伝える自由を奏者に(特にこの曲の場合は独奏者に)委ねている。

とここまで言われると、おバカな私に弾けるのだろうか?と茫然自失。やはり賢くないと音楽は出来ないと改めて痛感。数学、天文学に並び称された音楽。あまりに崇高なところにあって、私にも手が届くのだろうか?とさえ思えてきました。

見かねた田崎先生が手を差し伸べるかのように、第1楽章の冒頭部分を題材にして具体的なアドバイスをして下さいました。それはピアノの先生の指導内容とも同じ方向を向いていて、やはりこれが正しい方向だと確信できるものでした。

演奏者がフレーズを理解した上で演奏しなければ、切れ目も抑揚も無いものになってしまう。そうなるとお客さんは聴いていて訳がわからなくなって、退屈して寝てしまう、のだそうです。そうそう、と妙に納得出来ます。それにしても、全曲をきちんと見直さなきゃ、と膨大な宿題に眩暈がしそうな気分でした。

で、昨日がメンバーとの合奏練習日でした。レッスンの内容を皆に伝えて、弾きながらアイデアを出し合っていきました。皆で共有することで骨格がしっかりしてきたように感じました。そして最後に田崎先生のアドバイス通りの配置で、立って演奏してみました。ピアノの周りに弦楽器奏者が取り囲むように立って弾くと、各自が弾いている音が明確に伝わり、音楽に包み込まれるような感じがしました。この心地良さは病みつきになりそうです。立って弾くだけでこんなに違うなんて!目からウロコ状態でした。

また各奏者の立場からも私の様子がよく見えること、良い姿勢で良く響く音が出ること、ピアノ自体に弦楽器の音が共鳴して深い響きになること、などなど良いことづくめでした。「立って弾くのは子供の時の発表会以来だ」とか「しっかり立っていられるように足腰を鍛えなきゃ!」と誰かが言い出して「筋トレでもするか?!」みたいなご意見も。和やかなうちに練習を締めくくりました。

ようやく大きく一歩前に踏み出しました。本番の2/17までもう2ヶ月を切りました。まだまだ課題山積ですが、また新たな気持ちで取り組んでいきます。

代官山コンサートシリーズ 第6回 ラインハルト・オッペル作品の試演と後期ロマン派様式

2017 DEC 5 23:23:10 pm by 吉田 康子

ライヴ・イマジンの演奏会で度々ご一緒して頂いているヴァイオリンの前田 秀さん、薫さんご夫妻が年末に行う演奏会のご案内です。
 ■平成29年12月29日(金)19:00開演  
  代官山教会 東京都渋谷区代官山町14-3  (詳細はチラシをご覧ください。)

前田秀さんは、2015年10月ライヴ・イマジン32でR.シュトラウス「メタモルフォーゼン」を演奏するにあたり、資料を調べていて北テキサス大学のジャクソン卓越教授とお知り合いになりました。そのご縁がきっかけでオッペルの弦楽四重奏曲第4番に取り組むようになったと伺っています。以下、前田さんの文章を引用させて頂きます。

北テキサス大学のジャクソン卓越教授からのご依頼により、ラインハルト・オッペルの弦楽四重奏曲第4番の蘇演に取り組んで参りましたが、この度、雁部一浩先生のご尽力によりコンサートを開催することになりましたので、ご案内させていただきます。
 オッペルは、19〜20世紀のドイツの作曲家であり、フルトヴェングラーも強い影響を受けたハインリヒ・シェンカーの弟子です。ナチスに批判的だったせいか、その作品は日の目を見ないまま現在に至っております。今回、おそらく日本初演となると思われます作品群は、いずれも後期ロマン派の第一級のものであることは間違いありません。また、今回主催されておられます雁部先生の作品や、ほぼ同時代であるR.シュトラウスやM.レーガーの作品を併せて演奏することにより、オッペルの作品の特徴が分かりやすくなるのではないかと思われ、皆様に貴重な機会をご提供できますことを大変嬉しく思います。

この会についてのお問い合わせ先は、 concertoppel@gmail.com です。
ソナーメンバーズのブログをご覧になった旨お書き込み下さい。ご招待させていただきます。

前田 秀

■チラシの上でクリックすると拡大画像がご覧いただけます。

発表会の選曲

2017 NOV 29 13:13:32 pm by 吉田 康子

来年3月に生徒の発表会を予定しています。私はいわゆる「街のピアノの先生」で、近所の子供たちにピアノを教えています。
今は、幼稚園の年中組(5歳)から大学2年生(20歳)までの生徒10数名。毎年友人のピアノの先生と一緒に発表会をして、次回が18回目。その前に別の場所でも2回おさらい会をしているので、はや20年になります。会場は近くの300名定員のホールでベヒシュタインのセミコンサートグランドがあります。

地域によってはコンクールやグレードなどの格付けに熱心で、その成績がそのまま先生の評価になるという所もあるようですが、私は興味がありません。楽器を演奏するにあたっての基本的な技術や知識の習得をした上で音楽の楽しみを伝えられたらと思っています。音楽がそれぞれの子にとって長くお付き合いできる友達になれたらいいなと。日本ならではのお墨付き願望でしょうか、昔のソロバンから始まって習字やスイミングに至るまで○○級というようなランク分けが幅を利かせているように思います。何かの競技会で勝てるタイムとか受験の為の偏差値獲得など、明確な数字と目標のもとに評価できるものであれば、客観的な指針となると思います。音楽の場合もプロとしてやっていくならコンクール優勝みたいな「勲章」が必要でしょうけれど、楽しみで続けている生徒を他人の評価に委ねる気持ちはありません。

そろそろ発表会の曲決めの時期になり、大変な手間暇がかかるものの楽しみでもあります。それぞれが独奏と連弾を弾くので結構な数を選び出さなければなりません。年々増えていく楽譜の整理を兼ねて目を通していると、自然と「この曲はあの子に」みたいに顔が思い浮かびます。
私が子供の頃に習っていた先生は、先生自身の数少ないレパートリーの中から順列組み合わせ的に生徒達に与えていたので、毎年似たような曲ばかりだったのが不満でした。
発表会は公の場での生徒の勉強成果を披露する場ですが、それは同時に指導者の勉強の成果の発表でもあると思います。私の「先生」としての名刺代わりみたいなつもりで、毎年総入れ替えで前回とは違う曲を選ぶようにしています。

そして最後に先生の演奏、ということでもう一人の方との連弾が恒例です。20回もやっていると主だった連弾曲には挑戦済みですが、前回はなんとメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲を作曲者がピアノ連弾用に書き直したものを見つけ、終楽章のプレストを弾きました。こちらもまだまだ楽しみが沢山ありそうです。

切手の世界

2017 NOV 17 22:22:28 pm by 吉田 康子

目白にある切手の博物館に行ってきました。実家から古い切手帳を預かり、処分を頼まれたのがきっかけでした。一体どうしよう?と思いましたが、知人から郵趣協会に訊いてみたら?というアドバイスを戴きました。
http://yushu.or.jp/index.html
早速電話をして相談すると2か月に一度のオークションに出品してくれるとのこと。お値打ちものは無いですが折角集めたものを捨てるには忍びない、そんな状況を一気に解決してもらった感じでした。HPを見ると、ブラームスについての展示をやっているとのこと、折角の機会ですから足を運んでみた、という次第です。

博物館は目白駅から学習院大学に沿って徒歩5分ほどのところ。入口にはストライプのポスト、中に入ると切手を販売しているコーナー。それが外国と国内のものだけでなく年代、図柄の種類によって分類されて展示されていました。もちろんコレクター向けの雑誌、切手帳やピンセット、ファイルまで。
催し物の掲示板には「昆虫切手の研究会」とか「世界のキノコ切手展示会」のお知らせや、押印技能講習会、各地での切手交換会など、切手にまつわる催し物がこんなにあるのかと驚きました。


お目当てのブラームスの展示の部屋では、音楽関連の切手を所有する各コレクターのご自慢の切手やスタンプ、現地撮った写真などが初日カードに添えられて、パネルに沢山展示されていました。ブラームスだけでなく、ベートーヴェン、ワーグナーなど一つのテーマに沿って多岐にわたる音楽切手の世界が展開されて、なんだか思いがけずディープな世界を垣間見た気がしました。そういえば1963年の映画「シャレード」にも切手が出てきたっけ、と思い出しました。

久しぶりに

2017 NOV 15 16:16:07 pm by 吉田 康子

ブログ記事を書きました。[忘れていたわけではない」というのは言い訳ですが、日々「何か書かなきゃ」と思いつつも他の方の記事を読んでは、圧倒されて気後れしていました。一つの物事に対しての知識、経験の足りなさを痛感し、また何かを表現出来る言い回しや語彙、気持ちの表し方の絶対量が少ないなと。
まぁそこまで気負わなくても私なりに身の周りの出来事や思った事を書けばいいかなと自分を励ましています。やはり勉強不足というのが一番の反省点ですが。

11月に入って、次回のライヴイマジン39の練習が始まりました。弦楽器の方々は大半が3曲全部に参加なので、準備だけでも大変そうです。イマジン以外にも他のオケや室内楽の団体にも所属している方ばかり。私はバッハのピアノ協奏曲第1番のみの参加でも大変なのに一体どうやって時間を工夫しているのだろう?と感心してしまいます。

「バッハの協奏曲をピアノで弾く」ということ自体に一つのハードルがありましたが、私はチェンバロが弾けないし巷でもピアノで弾く場合が多いことを踏まえて「ピアノでの」協奏曲という形に落ち着きました。ブランデンブルグ協奏曲第5番を弾いたことはあるものの、今回は更に大きな役割を担う立場になります。

ロシアもののような分厚い和音やショパンのような大きな跳躍は無いので、そういう点での左手の負荷は少ないですが、和声の移り変わり、拍節感やリズム、主題の展開やフレーズには独特の難しさがあります。やはりバッハの音楽の深さに改めて姿勢を糺す思いです。

まだまだ駆け出したばかりですが、26日の初顔合わせに向けて万全の体勢で臨むべく全力で取り組んでいる、といったところです。色々な参考文献や音源などをアドバイスして下さる方、レッスンをお願いしたい先生方が身近にいて、とても心強いです。これからが私自身の勉強です。

私のリハビリ報告

2017 SEP 26 13:13:24 pm by 吉田 康子

前の「骨折報告」から約1ヶ月。「リハビリは、最初の2週間が勝負!」と書いてあったサイトを見つけましたが、やはり最初が肝心ということでしょうね。今は一週間のうち平日3回は病院に行き、毎週末には電気治療に通っています。病院が家から5分という近距離であるのも助かりました。そして実を言えば、私の担当の理学療法士が27歳で爽やかなイケメンなのもささやかな励みになっています♪

先週医師の診察があり、レントゲンで骨がきちんと正しい位置に戻っていることを確認。骨に釘が刺さっていた穴も、プレートが6本のボルトで固定してあるのもハッキリ見えました。今回はその画像をプリントアウトして貰ってきました。なかなかリアルなもので、閲覧注意かもしれませんね。

手首の動きも順調に回復しているとのこと。手のひら側に手首を曲げる掌屈、手の甲側に曲げる背屈、回転、上下動など、以前は当たり前に動いた手首が抜釘直後は石のように固まっていました。それを少しずつ丁寧にストレッチしたり、マイクロカレントで癒着を外していきました。可動域としてはまだ7割くらい。一般的には「固定していた期間の倍の時間が回復に必要」とか。あと2ヶ月ほどかかりそうです。

握力も右手30kgに対して1か月前の左手はたったの5kgで歯ブラシも持てなかったのが、現在では17kgになりました。日常の動作には殆ど支障が無いくらいになり、見た目にも浮腫んでいた手首のあたりが徐々にスッキリとしてきました。釘の痕や手首のプレート装着の手術痕はまだ生々しく残っています。

ピアノは以前の8割くらいのペースで弾いています。右手も左手に伴って筋力が落ちているので徐々に取り戻さないと。10月公演を見送り、次回来年2月のバッハのピアノ協奏曲第1番で復帰予定です。練習予定や場所そして当日の調律まで全て段取りを随分前に済ませてあり、メンバーも着々と準備を重ねている便りが届いています。その合奏練習が11月に迫っています。骨折を言い訳には出来ません。これを励みにこれからペースを上げて練習していきます。

やっとここまで取り戻しました。前の「骨折報告」はなるべく客観的に描いたつもりでしたが、読み返してみると私にとって大きな試練だった悲壮感が伝わってきました。我ながらよく乗り切ったものだと思います。私からの説明代わりに読んで下さった方々からは「思いのほか大きな出来事だったことに驚いた」という感想と同時にその後どうしているのだろう?と気掛かりであることも聞きました。

あれから1ヶ月たってようやく気持ちにも余裕が出てきました。大丈夫、おかげ様で一歩ずつ確実に回復しています。心配して下さった方々に感謝の気持ちと共に今の様子をお知らせしたくてこの文章を書きました。まだまだ時間がかかりますが、これからもしっかりと対峙していきます。いずれプレート除去をして「完治報告」で一連の「報告」を締めくくれるように頑張っていきたいと考えています。

来年2月17日、私の復帰記念のバッハを楽しみにしていて下さい。

ライヴ・イマジン38公演ご案内

2017 SEP 14 2:02:43 am by 吉田 康子


次回のライヴ・イマジン38の公演の葉書が出来上がりましたので、ここでご案内させて下さい。前回5/7公演の数週間後から合奏練習を始めて準備を進めてきましたが、私の手首骨折での出演見送りにより曲目変更をお願いしました。今まで15年間活動を続けてきて初めての「不測の事態」でしたが、メンバー皆さんのお力により新たな曲目で公演を行える運びとなりました。皆様のご来場をお待ちしております。

ライヴ・イマジン38
2017年10月8日(日)13:30開場 14:00開演
江東区豊洲シビックセンターホール

ハイドン 弦楽四重奏曲 ト長調 Op.64-4
モーツァルト オーボエ四重奏曲 K370
モーツァルト コールアングレと弦楽の為のアダージョ K580a
ブラームス 弦楽五重奏曲第2番ト長調 Op.111

野原 国弘(オーボエ・コールアングレ)
柳生 峰人(ヴァイオリン) 井ノ口 上杖(ヴァイオリン)
畑 修一(ヴィオラ) 吉水 宏太郎(ヴィオラ) 西村 淳(チェロ) 

詳しくはこちらをご覧ください。http://liveimaginemusic.blog91.fc2.com/

草炎

2017 SEP 5 21:21:19 pm by 吉田 康子

週末に竹橋にある国立近代美術館に行ってきました。
ここは学生時代に独りで静かな時間を過ごしたい時によく足を運んだ場所です。その後は行った記憶が無いので、本当に何十年ぶり。美術館の周辺は毎日新聞社の建物と皇居、そしてその間に車が行き交う片側3車線の広い道路だけ。皇居を周回してジョギングする人達以外には歩いている人も少ない風景は、都会にありながらそこだけ特別な空間のように感じられます。

先週8/29の日経の日曜版に川端龍子の「草炎」(1930年絹本着色、六曲一双、各176.8×369.5cm)という作品が紹介されていました。これを一目見て気に入り、是非本物を見たいと思ったのがきっかけです。恥ずかしいことに私はこの作品について知識が無く、この画家を知りませんでした。

9月最初の週末、秋の気配がする小雨の午前中。にわか雨を表す「驟雨(しゅうう)」という言葉がぴったりくるような空模様。あいにくの天気のせいか開館直後の会場は訪れる人も少なくて静まりかえっていました。この絵は6枚2組の屏風(六曲一双というそうです)に仕立てられていて、全体の幅7mを越える大作。濃紺の絹の生地の上に濃淡のある金色で描いてあるのは、観賞用に栽培した草花でなく、そのへんの草むらで見かけるような雑草。そういえば見たことのある草ばかり。もわっと草いきれが伝わってきそうな力強さを感じました。
 
夏の夜の闇を思わせるような濃い背景に浮かび上がる金色の草たち。ほぼ単色に見えるのに遠近が感じられるのは何故?と近づいたり離れてみたりしてどんな風に描いているのか目を凝らしてみました。微妙な色彩の差や筆のタッチの違いも計算した上でのことなのでしょうか。奥行を感じさせる画面の一番奥の方から手前にかけて明るく色鮮やかに輝いているのは、強い太陽光の残像?それとも夏の月光?
この絵を見ていると、バルトークの「戸外にて」の「Out of Doors 戸外にて」 (BB 89/Sz. 81、1926年)第4曲”The Night Music”の息が詰まるような熱気が聞こえてくるような気がしました。この絵の背景に同調するかのような薄暗い展示室に浮かび上がる様は、「草炎」という名が相応しいと実感しました。
https://youtu.be/cZT6-ifNqiY


薄暗い展示室は4階から下の階に降りる順路となっていて、途中には「眺めのいい部屋」という名前が付いたガラス張りの部屋もありました。目の前の皇居の緑がとても美しく、無造作に並べられた椅子に座って一息するにはちょうどいい場所でレイアウトの巧みさを感じました。

一通り展示を見終わって外に出ると、雨上がりの空に流れが早い雲、そしてその隙間から明るい陽射しが差し込んできました。久しぶりの美術館、絵を見るだけの余裕が出て来た私自身が嬉しく、心にも栄養をたっぷり貰ったような豊かな気分になりました。

追記1
■きっかけになった記事を以下に添えておきます。


また、これは犬好きとして知られた川端龍子です。草炎の豪奢な厳しさからは予想がつかない、そばに寄り添っている犬との様子が何とも微笑ましいです。

追記2
■以下は印象に残った作品をいくつか。私の備忘録でもあります。

川合玉堂《二日月》絹本墨画淡彩、1907年

いわゆる墨絵と言われるものでしょうか。掛け軸に仕立てられていて、白黒の濃淡だけで奥行を表し、水や木々、石、山の稜線など様々な質感を出しているところに惹かれました。

藤田嗣治《武漢進撃》、油彩、1938-40年

ターナーの絵を思わせる構図で軍艦を描いたフジタの戦争画分類に入る作品だと思います。立ち上る煙、水面のさざ波、水平線と空との境に向かって進む軍艦の動きが伝わってくるような構図が見事。

パウル・クレー「破壊された町」

クレーの作品は暖かい色彩の楽しそうなものというイメージだったのに、これは題名通りの不気味な空気。

アンリ・マティス (1869-1954)「ルネ、緑のハーモニー」

緑と灰色を主調に、肘掛椅子に座る女性。「近年のマティス研究で重視される描き直しや掻き落としのさまが顕著に見られる、国内でも数少ない作例。」 と解説にありました。
画家にとって絵というものはいつが完成なんだろう?と解説を読んで考えました。画家が伝えたい事を全て描ききった時点がその作品の完成となるのだろうか?作品自体が後世まで残り、独り歩きをして売買の対象となる商品にもなり得るものだし、このあたりが音楽を演奏するという事と違うのかな?と。

そしてこの美術館をよく訪れた当時の記憶をたどってみると、入り口を入ってすぐに大きな桜の日本画がありました。検索してみると、たぶんこれだったような。
菊池芳文《小雨ふる吉野》(左隻) 1914年だそうです。懐かしい友人に再会したような温かい気持ちになりました。

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