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外国人が買いたい米国不動産

2012 SEP 13 14:14:01 pm by 西 牟呂雄

米国不動産に対して外国人が買い意欲を強めている様子が最近のウォールストリートジャーナル(WSJ)に出ておりましたので、その記事を基にご報告させてさせて頂きます。
今の円高を利用して米国に不動産を購入しようとしている外国人の中には日本人もいますが、最近では日本企業も積極的に購入し始めているようです。他の外国人と比べますと、現金で何億もする不動産を購入する日本人は少ない為、ニュースにはあまりなりませんが、他の国の超富裕層の方々は下記の様にかなり派手に購入している様です。
過去6年連続して米国不動産価格は低下していますが、その下落とドルの下落が一部の外国人から見れば魅力的に見える様で実際にかなりの額で買って来ているようです。
買い手は主に、アジア、カナダ、欧州、そしてラテンアメリカの人達が多いようで、2011年4月から2012年3月末の期間に外国人が買った米国不動産の額は約825億ドル相当でこれは米国全体の購入額約9280億ドルの8.9%にあたり、昨年は664億ドルだった事から前年同期比+24%の増加になりました。
これらの外国人の内約55%の買い手は、カナダ、中国、メキシコ、インド、英国になります。 そして、買う不動産の55%がフロリダ、カリフォルニア、テキサス、アリゾナ、NYの五ヶ所に集中しています。また、これらの外国人の約62%が現金で不動産を取得しています。
NYマンハッタンの高級ホテル、「Mark」は一部をマンションに改築して9件の物件とし売りに出したところ、直ぐにスペインから問い合わせがありました。当顧客は寝室が3部屋から4部屋の物件を探しており、予算は約1000万ドルから2000万ドルだそうです。 スペインはあれだけ問題を抱えていても、お金を持っている人は持っているのだと言う事でしょう。 ユーロは価値が下がったとは言え、対円等と比べれば対ドルでは比較的値下がりは少なく、今後もユーロの信任がぐらつく中では自分のアセットの一部を米国に持つと言うのも頷けます。 又、同じ財政問題を抱えているスペインと米国のどちらが治安等が良いかと言えば、勿論米国だと思っているのはスペイン人だけでは無いと思います。
マンハッタンを嗜好する外国人の中では、特にロシア人とウクライナ人の名前を挙げられ、値段を吊り上げています。 最近、マンハッタンの最高級マンションを購入したのはロシアの実業家で、娘の為に買ったと言う事で話題になりました。因みに彼女の為にプライベートジェットもあてがい、いつでもロシアに飛んで来れるようにしていると言うおまけ付です。
一方、マイアミはベネズエラとブラジルからの買い手がかなりの数の高級高層マンションを買い上げ、アリゾナではカナダからの買い手が主に差し押さえになった物件に食指を伸ばして安値で購入し、賃貸に回して高い利回りを狙っている様です。 シカゴのある不動産屋の話では、今年に入り102件売った物件の内、約20%が海外からの買い手、主にカナダとオーストラリアからだそうです。 彼らも主に差し押さえ物件を安値で買い、賃貸に回して利回りを狙う投資家群だとの事です。

この様な海外の買い手の動機はどの様なところにあるのかと言う事を、あるエコノミストはこの様に解説しています。 カナダ、ブラジル、中国の人達は本国での不動産高騰を目の当たりにして、本国での不動産を売却してその資金を不動産価格が下がり続け、且つドル安になっている米国不動産にシフトしている。 実際に米国不動産の利回りがかなり高い事からインカムゲインを狙う投資家も出て来ている事、そして数年後には不動産価格が上昇し、その時に売ってキャピタルゲインを狙っている動きがあるとの事です。 本国が政治的に不安定な国の、ロシア、ベネズエラ、メキシコからの投資家の嗜好は、米国の所謂トロフィー型物件と呼ばれるその地域での最高級物件を狙う買い手が多い様で、彼らは超富裕層か法人で、自分たちの資産の保全の為に安定した米国での大型物件に投資をする傾向があるようです。

外国人の買い手の約半分は自国に住んでいて、投資やバケーション用に米国の不動産を購入するそうですが、残りの半分は米国に移民したかビザを保有して滞在している人達です。
先程から、カナダからの買い手の話が何回か出てきましたが、カナダドルを保有している人からすれば数年前と比べ約30%もカナダドルが上昇し、米国ドルが下落した上に不動産価格が高値から半分以下になっているような差し押さえ物件はもの凄く安く見え、良い動機になります。

上記のマイアミにラテンの国からの投資が増えた事で、一時25000件以上の高級マンションの在庫が膨らんでいたのが今では殆んど掃けてしまい、2006年から約半値になった不動産価格もこの3月には前年同期比2.5%上昇したとの事です。

この記事に出ていませんが、富裕層の方々が米国不動産に投資をする目的のもう一つの理由として、物件の償却費を本国の会社の経費に組み込み節税をするベネフィットも目的の一つです。
例えば、下がったとは言え、日本の不動産の価格は普通土地が70%以上、上物が30%の内訳だと思われますが、米国では土地と上物の構成が約50・50です。
従って上物の比率が高い為、その減価償却の額は日本のそれよりも大きく取れる事になり、この辺に目を付けた投資家、事業家が活用していると言う部分も十分あります。
又、米国の不動産物件は通常の償却耐用年数が過ぎても価値としてはかなり高く維持する事が出来、日本の様に償却耐用年数まで持たないケースの家が多い事情と大分差があります。
以上の理由により、古い不動産物件でも十分価値がある為に、米国不動産の中古市場は年間500万件から600万件の売買件数があり、新築の住宅件数の40万戸程度と比べて非常に大きな市場を形成しています。

これらの事情もよく理解している外国人は、かなり安心して米国不動産市場に投資を始めており、まだまだ外国からの投資は続くであろうと思われます。
冒頭述べました日本の法人も米国の不動産を購入し始めた理由には、上記の理由もあるとは思いますが、もっと根本的に自社のビジネスを米国で大きく展開する為の拠点作りをし始めている動きも見られます。人口動態や地震、放射能、電力供給問題等を鑑みますと、日本国内の経済の見通しはかなり厳しい環境が予想され、国内産業の企業であればあるほど危機感を持っており、そこで思い切って海外に資産を分散させ、そこから将来の収益機会を創ろうとしている動きが見て取れます。

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