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私の好きなヨーロッパの町、(1)観光にお勧めの町、その1:サンクト・ペテルブルク

2013 JUL 7 17:17:43 pm by 中村 順一

宮殿広場

宮殿広場

ネフスキー大通り

ネフスキー大通り

それでは ”私の好きなヨーロッパの町のご紹介シリーズ”で、まずサンクト・ペテルブルクから始めます。よろしくお願いします。

サンクト・ぺテルブルク(以下単にペテルブルク)は帝政ロシアの首都、ロシア革命勃発の地で、現在のロシアでは首都のモスクワに次ぐ第二の都市です。モスクワとは全く異なる趣きがあり、私は喧噪と大渋滞のモスクワよりも、この町の方が気に入っています。

歴史的には1703年にピヨートル大帝が西欧への窓口としてこの地に都市の建設を開始したのが始まりで、その後比較的短期間で街の輪郭や建造物が建設されました。現在でも、その時代の歴史的建物は数多く残っています。西欧に倣って人工的に建設されたことからか、街の雰囲気は西欧的、キリスト教的で、広大なロシアを象徴する土着の都であるモスクワとは好対照です。ペテルブルクは第二次大戦中、約900日にわたるドイツ軍の包囲を受け、外部との連絡を遮断されました。市民には餓死者も続出しましたが、ソ連軍は凍結していた近郊のラドガ湖の氷の上から市民への物資を輸送しました。結局市民は耐え抜き、その功績からスターリンはペテルブルクに英雄都市の称号を与えています。

街の中心は旧海軍省からアレクサンドル・ネフスキー修道院にいたるネフスキー大通りです。直線的な大通りであるこの通りは帝政時代から街の中心であり、18世紀や19世紀の建物が数多く残っています。18世紀の前半にはすでに舗装された美しい並木道であったといいますが、ペテルブルク市建設の最盛期である19世紀建設の、カザン寺院、海軍省、ロシア博物館等があり、ドストエフスキーやレーニンを育てた19世紀末の街の雰囲気を感じることができます。

私が特に素晴らしいと思うのは、エルミタージュ美術館の前に広がる円形の宮殿広場です。この広場は1905年の血の日曜日事件、1917年の10月革命の際のボルシェビキの武装兵のケレンスキー臨時政府の閣僚逮捕等、さまざまな歴史的事件の舞台となったところです。広場を囲んでいる旧参謀本部のクリーム色の建物(イタリアの建築家ロッシの1829年の建造)が素晴らしく、私のお気に入りです。建物中央にはローマの凱旋門を模したアーチの上に、ナポレオン戦争の勝利を記念した6頭の馬車と騎士の像が見られます。

ペテルブルク観光にはエルミタージュ美術館とロシア美術館が欠かせません。エルミタージュは世界屈指の美術館でしょう。ロシア帝政時代に皇居として使われていた冬宮と3つの離宮、および劇場の5つの建物から成っています。19世紀前半に完成したセルリアンブルーの建物自体が素晴らしく、どの展示品にも目を奪われますが、広すぎて壮大すぎて忙しい旅人にはちょっと無理かも、ポイントを絞る必要があります。その点、ロシア絵画を集めるロシア美術館はじっくり鑑賞できますね。特に19世紀のロシア人の絵で、アイヴァゾフスキー(アルメニア系)の”第9の波”、レービンの”ヴォルガの舟曳き”等は必見です。私のペテルベルク育ちのロシア人の友人は、幼少の時からこのロシア美術館は好きで何回来たか数えられないほどだ、と言っていました。

私はペテルブルクにはソ連時代も最近も行きましたが、やはりホテル等は比べられない程良くなっています。活気も全然違いますね。最近行った際ははロシア人の友人と一緒だったのですが、そのロシア人のお兄さんがペテルブルクに住んでいて、宮殿広場の傍のアパートに招待されて夕食をご馳走になりました。すごく親切な一家で大いに盛り上がりました。その奥さんは朝鮮系ロシア人で、かつてスターリンの強制移住で、一家は故郷を捨てざるを得なくなったと言っていました。彼女はロシア語しか話せません。お兄さんは医者でエリートですが、プーチンの強権政治をかなり批判していました。ロシアへ行くと結構質問を受けるのが、北方領土問題です。お兄さんから聞かれましたが、私が、”国後も択捉もペテルブルクからすごく離れているではないか、日本人としては北海道の目の前にある北方領土はなかなかあきらめられない。” と答えました。お兄さんは ”そうだ。もともとは日本の領土だ。しかし戦争があった。歴史の例から見ても、戦争は国境も変えてしまうのだ。”と言いました。ロシア人は結構歴史を勉強しているのです。日本人もしっかり勉強しておかないと、絶対ダメですね。

ペテルブルクは現大統領のプーチンが生まれ、40数年間も生活した街です。ペテルベルクに住んでいる人を”ピーテルツイ”といいますが、プーチンはピーテルツイです。ロシア革命以降で国家の頂点に上り詰めたピーテルツイはプーチンが初めてです。ピーテルツイは矛盾する2つの側面があると一般に言われております。すなわちかつての首都としての伝統重視の保守主義、反面西欧に近いとする進取の気性、及びモスクワに対する優越感と反面の劣等感です。私にはシニカルに見えるプーチンの態度や言動はピーテルツイのイメージに重なってみえます。ペテルブルクとモスクワの関係は、何か京都と東京の関係に似ているように思えます。

皆様是非ペテルベルクへの観光をお勧めします。行き方は、私としてはモスクワからの特急列車がいいように思います。夕方にモスクワを出ると夜にはペテルブルクのネフスキー通りに面したモスクワ駅に到着しますよ。

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