バッハを弾くということ
2017 DEC 25 18:18:49 pm by 吉田 康子
なんて偉そうな事は何も書けないのですが、とにかく今は2月本番のバッハのピアノ協奏曲第1番に没頭しています。
バッハの演奏ということで私の中で振り返ると、2013年1月のライヴ・イマジン23でのバッハ特集での室内楽曲が思い出されます。協奏曲については、ブランデンブルグ協奏曲第5番第1楽章の長いソロに憧れて10年ほど前に仲間内の発表会で弾いたことがあるくらい。今回プログラムの構成上、バッハの協奏曲のいずれか、という提案をされた時に6曲全部を聴いて検討した結果、一番立派で完成された感のある第1番に決めるのには迷いはありませんでした。自分の実力を顧みず、やはりその時に一番良いと思われるものを選ぶという「ショートケーキはイチゴから」のポリシーは変わりません。大変ですが、得るものも大きいかと。
とまぁ前置きが長くなりましたが、このバッハで夏の骨折からの復帰を目指しています。それだけに並々ならぬ意欲で取り組んでいますが、譜読みからして音符が多いこと!しかも殆ど休み無し。とにかく音符を音にするだけでも精一杯の状態で弦楽器と合奏の日を迎えましたが、解らない事だらけ。「バッハの作法」とでも言うのでしょうか。自分の無知を痛感しました。年内最後の合奏練習の前に何とかしたい、何らかのアドバイスをお願いしたいとピアノの先生と田崎先生にレッスンをお願いしました。
ピアノの先生は初見でオケパートを弾きながらのご指導。現役で演奏活動をなさっている方だけあって、ご自身が弾き振りをした経験についても具体的に教えて下さいました。音の出し方、音色、指使い、手や腕の使いかたなど、それぞれが強い説得力を持っていました。
そして、それを自分のものにする間もない数日後に田崎先生のレッスン。開口一番の「この曲をどんなふうに弾きたいのか?」という想定外の問いにしばし言葉を失いました。バッハに限らず、音楽で大切なのはフレージング。それを決めるのは和声。バッハの和声は明確でわかりやすい。和声を理解した上で、それをどう表現するのか。様々な方法を駆使して伝える自由を奏者に(特にこの曲の場合は独奏者に)委ねている。
とここまで言われると、おバカな私に弾けるのだろうか?と茫然自失。やはり賢くないと音楽は出来ないと改めて痛感。数学、天文学に並び称された音楽。あまりに崇高なところにあって、私にも手が届くのだろうか?とさえ思えてきました。
見かねた田崎先生が手を差し伸べるかのように、第1楽章の冒頭部分を題材にして具体的なアドバイスをして下さいました。それはピアノの先生の指導内容とも同じ方向を向いていて、やはりこれが正しい方向だと確信できるものでした。
演奏者がフレーズを理解した上で演奏しなければ、切れ目も抑揚も無いものになってしまう。そうなるとお客さんは聴いていて訳がわからなくなって、退屈して寝てしまう、のだそうです。そうそう、と妙に納得出来ます。それにしても、全曲をきちんと見直さなきゃ、と膨大な宿題に眩暈がしそうな気分でした。
で、昨日がメンバーとの合奏練習日でした。レッスンの内容を皆に伝えて、弾きながらアイデアを出し合っていきました。皆で共有することで骨格がしっかりしてきたように感じました。そして最後に田崎先生のアドバイス通りの配置で、立って演奏してみました。ピアノの周りに弦楽器奏者が取り囲むように立って弾くと、各自が弾いている音が明確に伝わり、音楽に包み込まれるような感じがしました。この心地良さは病みつきになりそうです。立って弾くだけでこんなに違うなんて!目からウロコ状態でした。
また各奏者の立場からも私の様子がよく見えること、良い姿勢で良く響く音が出ること、ピアノ自体に弦楽器の音が共鳴して深い響きになること、などなど良いことづくめでした。「立って弾くのは子供の時の発表会以来だ」とか「しっかり立っていられるように足腰を鍛えなきゃ!」と誰かが言い出して「筋トレでもするか?!」みたいなご意見も。和やかなうちに練習を締めくくりました。
ようやく大きく一歩前に踏み出しました。本番の2/17までもう2ヶ月を切りました。まだまだ課題山積ですが、また新たな気持ちで取り組んでいきます。
Categories:雑感
maeda
12/26/2017 | 12:09 PM Permalink
怪我からのご回復も順調なようで何よりです。バッハは、基本的なことの積み上げが大事ですね。しっかり積み上げて演奏効果を高めていきたいです。私が参加している千駄木親子オーケストラ(弦楽合奏)では、本番はいつも立って演奏しますが、慣れると普通になりますね。
吉田 康子
12/26/2017 | 9:33 PM Permalink
その折は、ご心配をおかけしました。おかげ様でこの通り、音楽にしっかり向き合えるまでになりました。
バッハは特に演奏者の知性が問われるようで、私自身が充分に勉強して取り組むよう心しています。立って弾くのは無駄な力が抜けて自然と良い姿勢になれるのかもしれませんね。
西村 淳
12/26/2017 | 9:38 PM Permalink
立って弾くということは実はチェロを除き普通のことですね。上手なヴァイオリニストは立ち姿もとても美しいものです。見通しもいいし、音のつたわりかたもいい、となれば満点です。
ところでバッハをピアノで弾くという伝統は昔からロシアのピアニストにはありますね。ニコラエーワ、フェインベルクをはじめ、ガヴリーロフ、すさまじいゴルトベルク変奏曲をきかせるソコロフ、みんな横綱級です。
吉田 康子
12/26/2017 | 9:54 PM Permalink
ロシア勢の芯のしっかりとした音色でのバッハは、とても立派な味わいの音楽になると思います。リヒテルや若い時のアシュケナージも見事なものでした。一方師匠コルトーの影響が感じられるリパッティの瑞々しさの溢れるこの協奏曲やミケランジェリのイタリア協奏曲も演奏も華やぎが感じられてとても好きです。
maeda
12/28/2017 | 5:31 PM Permalink
リパッティが入れていましたか。EMIの全集には入っていなかったなぁ。ありがとうございます。聴いてみたいですね。
吉田 康子
12/30/2017 | 1:55 AM Permalink
You tube にありました。
https://www.youtube.com/watch?v=Xby0P4YVYaQ