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蛙鳴蝉噪(海運編)

2012 OCT 5 12:12:39 pm by mtsuzaka

ローラーコースターが苦手な私は、飛行機に乗りシートベルトを締めると憂鬱になる。しかし、ゲートを離れ、見送ってくれる整備士の方々を見るとほんの少し憂鬱な気持ちが和らぐ。飛行機のタクシングがたおやかに出帆する船を見送る気持ちと重なるからだ。

航空機の交通ルールは、古くからあった海上交通を基にしている。船舶は、通常左舷で接岸する。航空機のゲートも通常は左舷。整備士の方々に手を振って応えたければ、進行方向に向かって左の窓側に席をとれば良い。左舷をPort side と言う。右舷はStar-boardだ。”Star-boad”は、星が見える舷側の意味ではない。舵を意味するsteerがなまっただけだ。船の真ん中にはマストがあるから、どちらかにずれなければ前がみえない。ジャック・スパロー船長のブラック・パール号も右側に操舵輪が付いている。Port-sideも昔からの呼称ではない。荷積みの舷側を意味する”lar-board”の発音が”star-board”と紛らわしいので、port-sideに変更されたのだ。右舷が赤ランプ、左舷に緑ランプをともすのも共通だ。日本船主協会のホームページに詳しい。

日本は海に囲まれた島国だ。日本列島には、海岸線の長さが100m以上の島が6、852ある。人が住んでいる島は400程度。日本は多くの島と陸地面積の10倍の水域で成り立っている。しかし、最近オセロの四隅とも言える島が、他国色にひっくり返されそうだ。色が変わると水域を失う。オセロ盤右隅の沖の鳥島も危うい。自然消滅の危険もさることながら、「島」ではないと主張する国もある。島でなければ、排他的経済水域を失う。たかがキングサイズのベッド一台分の広さにすぎない島の色が裏返るだけで、我が国の水域面積の約9%を失う。水域を失うと魚だけでなく、海底の蟹や、地中に眠るエネルギー資源も失う。日本の、エネルギーの自給率は1%にもみたない。多くの食物も自給率が低い。日本の輸出入の99%以上が海上輸送だ。海上輸送がストップすると日本はエネルギーのみならず、冷奴も食べられなくなるかも知れない。豆腐用大豆は75%を輸入に頼っているからだ。

海運は、「島国日本」の安全保障の重要な担い手なのだ。東日本大震災時の話を持ち出すまでもない。友人によると、放射能が漏洩したとき、被害を恐れた外国船は、京浜港に寄り付かなかった。国交省の報告では、震災から6月26日までの間に京浜寄港を取り止めた外国船は44隻。京浜で揚げる予定のコンテナは他港で揚げられ、内航船で京浜に輸送された。1000万人以上が暮らす地域への放射能被害妄想でこの状態だ。万が一周辺他国と日本が有事の際、どこの国の船が、エネルギーや食料を日本に届けるのだ。

国は、「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針について」で、必要な外航日本船舶を450隻、外航日本人船員は5500人とした。災害や有事の際に、国内輸送を確保するために必要であれば、国は、日本の主権が及ぶ日本船に対して海上運送法上の航海命令や、国民保護法に基づく従事命令などを出すことが出来る。日本国籍の外航船舶は1980年には1176隻、日本人船員は3万8千人だった。しかし、2010年には船舶は123隻、船員は2256人まで減少した。国はこの事態を重く受けとめ、9月衆議院本会議にて日本籍船や船員を確保するための制度を拡充し、関連法案などを成立させた。

残念だが、船舶による輸送は航空貨物でも陸上輸送でも代替できない。

1982年のフォークランド紛争時、クィーンエリザベスII号はイギリス海軍に徴用され、人員、物資を輸送したのだ。

船の絵は商船三井(株)のHP「暮らしを支えるいろいろな船」からお借りしました】

 

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