Sonar Members Club No.22

since November 2012

ポルトガルに行ってきました

2013 SEP 24 15:15:34 pm by 中村 順一

ちょっと遅い夏休みをとってポルトガルへ行ってきた。ツアー会社最大手のJ社の「ポルトガル8日間」ツアーに参加したのである。旅行は自分でアレンジすることが多いので、J社のツアーへの参加は初めてだったが、なかなか良かった。行き帰りともパリ経由、エール・フランスのビジネスクラス、エール・フランスの食事のレベルの高さを再認識した。リスボンに夜に到着、次の日からバスにて北へ向かい、オビドス、ナザレ、ブサコ、コインブラ経由にてポルトへ、ギマランイスとポルトをじっくり観光した後、汽車でリスボンに戻り、リスボン観光の後、帰国という6泊8日のスケジュールであった。ホテルや食事の水準も高く満足できた。自分で旅行アレンジすると自分の好きなところに自由に行けるメリットはあるのだが、やはり全部自分でセットするのは面倒である。あまりツアーが行かない秘境や、ロンドン、パリ、ニューヨーク等の大都市への旅行は自分でアレンジする方がいいが、パッケージツアーもなかなかいいな、と今回再認識した次第。

 

さてポルトガルは日本人が初めて接したヨーロッパの国である。1543年に種子島に漂着して鉄砲を伝えたのはポルトガル人だし、その後も宣教師フランシスコ・ザビエルの来日、日本からの天正遣欧少年使節の派遣と続いた。日本人にとって馴染みやすい面を数多く持っている国といえよう。

 

僕は学生時代も行っており、今回は約35年ぶりの訪問である。ヨーロッパの国は最近の観光ブームで、ずいぶん変貌してきているが、この国は昔のイメージのままだった。ポルトガルは、金融の中心ロンドン、花の都パリ、情熱のフラメンコの国スペイン、と比較すると、寂しさの漂う哀愁の国である。15~16世紀に大航海時代を築き、アフリカ、アジア、南米に数多くの植民地を保有、第二次大戦後もイギリスやフランスが植民地を独立させた後も、最後までアンゴラ、モザンビーク等の植民地保持にこだわった。ポルトガルは「近代の最初にして最後の植民地帝国」なのである。本国が小さすぎ、植民地が広大過ぎたために、植民地の維持費用がかさみ過ぎ、本国の経済は発展せず、19世紀以降は完全にヨーロッパの田舎に甘んじている国、そんなポルトガルには、人生の悲しみや郷愁の想いを奏でる民俗歌謡の「ファド」が似合うのである。

 

でも日本人には向いている国だと思う。魚介類を多く使う食事は日本人の口に合うし、ワイン(ポルトワイン、マデイラワイン等)も美味しい。全般的に清潔な国で、きれい好きの日本人に合っている。イタリアみたいにゴミゴミしていないし、フランスみたいにプライドで突っ張ってもいない。日本人がのんびりできる雰囲気が満ち満ちているのである。リスボンで会った日本人の女性は、もう20年もポルトガルに住んでいるとのことだったが、彼女曰く、「ポルトガルでは何もしないのが、お勧めなんです。この国に来た初めのころは、毎日のんびりして12時間くらい寝ていましたよ。何故か寝れるんです。」とのこと。

 

昨今、経済危機が言われており、ギリシャの次に破綻するのはポルトガルだ、などと騒がれているが、街の繁華街からは、そんな悲壮感はあまり感じられなかった。ただ財政難で、リスボンの新空港やテージョ川に掛ける新しい橋の建設は断念したそうであるが。

 

この国で僕が興味を持つ歴史上の人物は独裁者のサラザールである。サラザールは1930年代に権力を確立し、1968年に引退するまで、独裁者として君臨した。サラザールは1930年代にヒトラー・ユーゲントを模して「ポルトガル青年団」を組織しており、第2次大戦中は中立を保ちながらも、少なくとも当初はドイツ・イタリア陣営に好意的だった。しかしサラザールをファシストとして定義するのには無理がある。サラザールにはファシズムの必要条件である、革新性、反ブルジョア性、指導者への熱狂的支持、大衆動員等の要素が欠けているのである。最近、ポルトガルのテレビ局が企画し、多くの国民が参加した「あなたはポルトガルの歴史上の人物で誰が一番好きか」という投票で、サラザールは建国時代や大航海時代の英雄を抑えて圧倒的な大差で1位だったそうである。30年以上も権力を保持した圧政遂行独裁者がどうして今でも人気があるのか?サラザールは神、祖国、家族、といった農村的な伝統的価値を擁護し、民族主義の高揚は掲げても、ヒトラーやムッソリーニのような領土拡張主義はとらず、むしろ多民族国家を建前とした植民地維持のための防御的な姿勢によって、ポルトガルを破滅から救ったことが評価されているのだろう。日本の第2次大戦前の指導者にもサラザール的に立ち回って欲しかったものである。

 

今回はいくつかの街へ行ったが、街の雰囲気ならポルトガル誕生の地であるギマランイス、景色ならドウロ川の橋が印象的なポルト、ゆっくりしたり、食事、買い物はやはり首都のリスボン、がそれぞれお勧めである。ゆっくりできた旅行だったが、奮発してビジネス・クラスにしたからかも知れない。ビジネス・クラスのツアーも昔よりは安くなっている。

 

 

 

 

 

 

Categories:未分類

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊