新版 モーツァルト 演奏法と解釈
2019 MAR 26 22:22:13 pm by 吉田 康子
新版 モーツァルト 演奏法と解釈
エファ・バドゥーラ=スコダ、パウル・バドゥーラ=スコダ 著
今井顕 監訳/堀朋平、西田紘子 訳
音楽の友社刊
私は、来月のライヴイマジン42公演で第6番協奏曲を弾きます。
http://liveimaginemusic.blog91.fc2.com/
先日レッスンの折に師匠からこの本を勧められました。600ページを越す辞書のような厚みと迫力です。
出版社のHPには
「ウィーンの名ピアニストパウル・バドゥーラ=スコダと、その妻で音楽学者として名高いエファ・バドゥーラ=スコダによる大著『モーツァルト 演奏法と解釈』(原著は1957年、日本語版は1963年刊行)の新版。旧著の出版から50年以上が経ち、資料状況の変化やモーツァルトの生涯と創作等の再考証によって得られた新しい情報をもとに、大幅に加筆校訂が施された。良いモーツァルト演奏のためには、モーツァルトの様式―デュナーミク、テンポ、アーティキュレーション、装飾音、カデンツァ等―を知ることが欠かせない。本書では長年の研究によって得られた知見が惜しみなく語られる。また、参考音源で耳でも確かめることが可能。ピアノ奏者はもちろん、モーツァルトを演奏するすべての人にとってバイブルとなる一冊。」という紹介文と参考音源まで添えられていました。
早速に買おうと探してみると無い!出版社や楽譜店には絶版で扱っていない。通販では希少本とかで、本体価格プラス送料¥3200などと足元を見たようなボッタクリ価格。さすがに焦りました。図書館には旧版しかないし、出来れば自分の手元に置きたい。
四方八方を探してふと思いつきました。近所のショッピングモールの中にある楽器店。郊外型だけあって店舗面積が広くピアノ10台以上が余裕をもって並んでいて、楽譜棚がその周りを囲んでいます。都心の楽譜店が次々と店じまいする中、ゆとりあるスペースの店内には都内の輸入楽譜専門店の商品が並んでいたりします。先日も探していたヘンレ版の連弾楽譜がこの店で見つかりました。土地柄の需要と供給が釣り合っていない感がありますが、ここならこのテの本を買う人は少ないだろうと思いました。問い合わせたらビンゴ!1冊だけ在庫がありました。
ようやく昨日手にしたこの本は、やはり予想通りの素晴らしい内容。
例えば「モーツァルトの楽譜にフレージング記号として使われたスラーはひとつもありません。」との記述。耳では聞き覚えがあっても、こうやって書かれたものでの説得力は絶大です。
アインガング〈導入部分〉についても、「6番には例外的な和声で終止している箇所がある」とのこと。自作のアインガングを考えている私には大きな後押しとなりました。
様々な作品番号から検索出来て、具体的な譜例も添えられていて目からウロコ状態。
自分の楽譜とスコアを並べてしばし没頭して「おお、いけない!先ずは練習しなきゃ!」と我に返りました。ここで得た知識を音に反映出来なければ伝わらないですね。本番まであと3週間弱、少しでも良い演奏となるよう練習します。
Categories:本
東 賢太郎
3/27/2019 | 3:15 PM Permalink
モーツァルトのピアノの入りは自分を意識してるからか格別のアピールがありますね、20番なんかシンプルの極致ですが何て耳に残るんだろう。スコダの本はご入手できてよかったですね。
吉田 康子
3/27/2019 | 6:19 PM Permalink
ピアノといえど、発音にはとても神経を使います。そのまま音色に反映されるので、自分のスキルを試されている感じさえしてきます。
スコダの本は定価¥7884なのに、通販では最高額¥ 19,383 というのもありました。当初は中古書を探しましたが、「そんなこと言っている場合じゃない」気持ちになって、定価で入手出来た時はホッとしました。
西村 淳
3/27/2019 | 8:31 PM Permalink
スコダに限らず、本がとても入手しにくくなってきていますね。
本来、作家がいて、編集者がいて、校正が入ってというしかるべき手順を踏み責任を持った著作物がリリースされるものなのに、最近では無責任なネット記事ばかりで、これを追いかけて何かがわかったような気になっている、自戒を込めて原点に還るべきと思いました。
スコダは新版なんですね。旧版が出たころに比べるとフォルテピアノの登場を始め楽譜も原典版が当たり前になり、ということで内容も大きく変わっているはずです。ウィーン原典版の校訂者としても名を連ねた人だし、含蓄は相当の物でしょう。
自作アインガングに大いに期待しています。
吉田 康子
3/28/2019 | 1:36 AM Permalink
本や楽譜に代わって電子書籍やipadの画面の楽譜をしばしば見かける昨今、形あるものがどんどん片隅に追いやられると同時に責任の存在も薄らいできた感じがします。この本の原著は1957年、日本語版は1963年刊行のようですから、音楽界の風潮や環境も大きく様変わりしています。スコダの奥様も音楽学者とのこと、夫妻での共著ですから、まさに「バイブル」に相応しいものだと思います。